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妊娠とくすり Top4.おもな薬の危険度 Sub / 副腎皮質ホルモン(ステロイド)・・


副腎皮質ホルモン(ステロイド)、免疫抑制薬、抗リウマチ薬、その他
区分 一般名 製 品 例 添付文書 米FDA オ4版 虎 '92
副腎皮質ホルモン
(ステロイド薬)
全般 C A 2
プレドニゾロン プレドニン
(セレスタミン)
(BC?) A 2
メチルプレドニゾロン メドロール C A  
ベタメタゾン リンデロン C A 2
コルチゾン コートン D A  
ヒドロコルチゾン コートリル C A  
トリアムシノロン レダコート C A  
免疫抑制薬 シクロスポリン サンディミュン
ネオーラル
禁忌 C C  
タクロリムス プログラフ 禁忌 C C  
タクロリムス(点眼液) タリムス点眼液 禁忌      
アザチオプリン イムラン 禁忌・重・避・男 D D  
ミゾリビン ブレディニン 禁忌 X    
モフェチル セルセプト 禁忌・重・避 D    
抗リウマチ薬 メトトレキサート リウマトレックス 禁忌・重・避・男 D D 5
金チオリンゴ酸(注射) シオゾール 禁忌 C? B2  
オーラノフィン リドーラ 禁忌 C B3  
ペニシラミン メタルカプターゼ 禁忌(◇) D D  
レフルノミド アラバ 禁忌・重・避・男      
イグラチモド コルベット、ケアラム 禁忌      
多発性硬化症治療薬 フィンゴリモド ジレニア、イムセラ 禁忌・重・避      
ニーマン・ピック病C型治療薬 ミグルスタット ブレーザベス 禁忌・重・男      
<添付文書> 添付文書の記載要領と解釈について
禁忌 〜投与しないこと(妊婦禁忌)
〜投与しないことが望ま しい
〜治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合にのみ投与すること
妊娠にかかわる「重要な基本的注意」あり
妊娠にかかわる「警告」あり
処方にさいしての事前の避妊指示(事後の対応ではありません)
処方にさいしての男性の避妊指示
<米FDA> FDA薬剤胎児危険度分類基準
<オ4版> オーストラリア基準 第4次改訂版(妊娠中の投薬とそのリスク, 医薬品・治療研究会より)
<虎 '92> 虎ノ門病院の基準(実践 妊娠と薬'92より)


【備考】

●ステロイド薬はとても効き目のよい薬です。膠原病など免疫系の病気では、妊娠中でも治療を優先して服用しなければならないことがあります。ステロイド薬の催奇形性についてはよく分かっていませんが、大量でなければ妊娠中でも比較的安全です。大きな奇形はまずなく、仮に小さな奇形が増えるとしても、その発生率は高くありません。過去の使用実績からみて、おそらく自然な奇形発生率と大差はないのでしょう。オーストラリア基準では、安全度の高い"A"と評価しています。一般的な量を妊娠に気づかずに服用していたとしても、まず心配することはありません。

●一方で、最近、ステロイド薬の妊娠初期の内服により口唇・口蓋裂の発現率が高まるという研究結果もでています。ステロイド薬にかぎりませんが、妊娠中においては治療上の有益性と胎児へのリスクを十分に評価したうえで使用されることが望まれます。

●ステロイドの外用薬、たとえば軟膏やクリーム、吸入薬、点眼薬はほとんど体内に吸収されません。したがって、通常の範囲であれば妊娠中でも問題なく使用できます。喘息では、吸入ステロイド薬をそのまま継続するのが一般的です。

●処方頻度は少ないですが、免疫抑制薬と抗リウマチ薬には催奇形性が強く疑われる薬が少なくありません。膠原病やリウマチをはじめ、ネフローゼや潰瘍性大腸炎、乾癬、重症筋無力症などに処方されることがありますから注意が必要です。免疫系の病気を治療されている方は、事前に医師と相談し計画的に妊娠なさるとよいでしょう。


【myメモ】
※Corticosteroids(ステロイド薬)
While most studies do not show a large teratogenic risk, the association with corticosteroid use and clefting cannot be excluded. Avoidance of such medication exposure during specific times may be important to discuss, particularly for indications in which the medication is not essential for maternal health. For maternal disease, derivatives of cortisone and prednisone are suggested since they are more readily inactivated by the placenta, as opposed to dexamethasone and betamethasone, which are more likely to reach the fetus in the active state. As with any medication, use of a corticosteroid must be weighed against the severity of maternal disease.[Illinois Teratogen Information Service/Corticosteroids and Pregnancy Vol. 8, No.1 May 2000]
ほとんどの研究において大奇形の危険性は示されないが、ステロイド薬と口唇裂との関連性を否定することはできない。・・・母体の治療には、胎児に容易に移行するデキサメタゾンやベタメタゾンよりも、胎盤で不活化されやすいコーチゾンもしくはプレドニゾンの誘導体がよいようである。・・・
※プレドニゾロン
*妊娠中にプレドニゾロンあるいはプレドニゾンを投与された報告が多数ある。しかし、これらの薬剤は胎児の発達にほとんど影響しない。これまでの知見からこれらの薬剤は妊婦の種々の疾病をコントロールするのに使用することが指示される。[佐藤孝道ら:実践 妊娠と薬'92(Briggs, G. G.: Drugs in Pregnancy and Lactation, 1990)]
*ウサギ、マウスの生殖試験では口蓋裂などの先天奇形が観察されているが、ヒトでは本剤服用と奇形発生の因果関係はないという報告が多い。本剤は胎児の発育にはほとんど影響を与えない。
*妊婦に副腎皮質ステロイドを投与する必要がある場合は、他の副腎皮質ホルモン剤よりも胎盤通過性が少ない本剤(プレドニゾロン)を勧める。[佐藤孝道ら:実践 妊娠と薬'92]
※Prednisone プレドニゾン
*The use of these drugs (corticosteroids) in pregnancy, nursing mothers or women of childbearing potential requires that the possible benefits of the drug be weighed against the potential hazards to the mother and embryo or fetus. [Perinatology.com/Drugs in Pregnancy and Lactation(Physicians' Desk Reference. 54th ed. Montvale, NJ: Medical Economics Company,2000)]
副腎皮質ホルモン(ステロイド)を妊婦、授乳婦、または妊娠の可能性のある女性に使用するさいには、その有用性とともに、母親と胎児への有害作用を十分に比較評価しなければならない。[(Physicians' Desk Reference. 54th ed. Montvale, NJ: Medical Economics Company,2000)]

*Many older studies including a surveillance study of Michigan Medicaid recipients do not support an association between prenatal prednisone exposure and congenital anomalies[*1]. However, more recent studies suggest a possible increased risk of oral cleft when prednisone is used during the first trimester in humans [*2,*3]. [Perinatology.com/Drugs in Pregnancy and Lactation]
以前の多くの研究は、プレドニゾンの催奇形性作用に否定的。けれど、最近の研究においては、妊娠初期のプレドニゾンの使用が、口蓋裂のリスクを増やす可能性を示唆する。
[*1].Briggs GG, Drugs in Pregnancy and Lactation 5th edition 1998
[*2].Carmichael SL; Shaw GM: Maternal corticosteroid use and risk of selected congenital anomalies. Am J Med Genet 1999;86:242-4. MEDLINE
[*3].Park-Wyllie L, Mazzotta P, Pastuszak A, Moretti ME, Beique L, Hunnisett L, Friesen MH, Jacobson S, Kasapinovic S, Chang D, Diav-Citrin O, Chitayat D, Nulman I, Einarson TR, Koren G. Birth defects after maternal exposure to corticosteroids: prospective cohort study and meta-analysis of epidemiological studies. Teratology. 2000 Dec;62(6):385-92. (CONCLUSIONS: Although prednisone does not represent a major teratogenic risk in humans at therapeutic doses, it does increase by an order of 3.4-fold the risk of oral cleft, which is consistent with the existing animal studies. プレドニゾンは治療用量において大奇形を起こすことはないが、口蓋裂のリスクが3.4倍となる。これは、動物実験の結果と一致する。)MEDLINE
※胎盤通過性
母体:胎児血濃度比はプレドニゾロンが10:1、デキサメタゾンが1:1。したがって、母体の治療にはプレドニゾロンを、胎児の治療にはデキサメタゾンを使用する。[JJSHP 30 1994]
※気管支喘患とステロイド
*プレドニゾロンとメチルプレドニゾロンは最も安全である。しかし、胎盤通過に乏しい。
*薬物療法としては、まず安全性の確立されていない新薬の使用を控える。妊娠が期待される、または予想される時期から安全な薬剤に切りかえる。妊婦にほぼ安全に使用できる薬剤を以下にあげる。吸入ステロイドのプロピオン酸ベクロメサゾン、吸入β2刺激薬は安全といえる。経口ステロイド薬のプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンは安全といえる。テオフイリン薬は血中濃度を測定し、通常よりやや低めの8〜12μg/mLを維持量とする。
*初期の報告では動物実験で催奇形、とくに兎唇との関係が指摘されていた。しかし、この使用量は臨床使用量よりはるかに大量であった。このほか胎盤の機能不全、新生児の副腎機能不全、胎児および新生児死亡の増加も報告されていたが、最近の研究では母体でのステロイドの全身投与あるいは吸入による投与は、先天性奇形率、胎児死亡率、死産率等を増加しないとされている。[新薬と治療No.424, 伊藤幸治:妊娠と疾患]
※膠原病とステロイド
プレドゾロンは胎盤の11βデヒドロゲナーゼにより不活性化されるため、胎盤通過性が他のステロイド剤より少ないことから、胎児への影響も小さいと考えられる。一方、デキサメタゾンは不活性化されないため、妊娠後はプレドニゾロンに変更するようがよい。一般にプレドニゾロン20mg/日以下であれば問題はないと思われる。プレドニンが15mg/日以上の場合は口蓋裂などの催奇形性、新生児の副腎機能低下などの説明が必要となる。[臨床と薬物治療 17 1998]
※早産におけるステロイド(プレドニゾロン、ベタメタゾン)
妊娠26〜34週の早産の場合、分娩前に本剤を投与すると新生児呼吸窮迫症の発生頻度が低下するので、妊婦に使用される。[佐藤孝道ら:実践 妊娠と薬'92]
※抗リン脂質抗体症候群(不育症)とステロイド
鈴木[*1]は子宮内胎児死亡の既往のある抗リン脂質抗体陽性の再妊娠例でアスピリン81mg/日とプレドニゾロン20〜30mgの併用による治療例を示す。[薬局, 1.50 1999([*1].鈴木淳一:治療学, 19 1955)]
※抗リン脂質抗体症候群(不育症)とステロイド
最初の抗リン脂質抗体の治療法はステロイドによる免疫抑制療法であった。大量のプレドニゾロンが必要であるが、有効性が報告されている。ある報告によると、ヘパリン療法に匹敵するプレドニゾロンの量は40mg/日である。しかしながら、プレドニゾロンはヘパリンに比べて副作用が多いので注意が必要である。・・・中略・・・ 抗リン脂質抗体だけでなく、抗核抗体などの病原性の確認されていない自己抗体が陽性というだけでアスピリンやプレドニゾロンを処方する臨床医を最近多く見かけるが、根拠のない治療をしてもなんの効果もないうえに、副作用も報告されたとなると、このような安易な治療は厳重に慎まなければならない。[杉 俊隆ら:産婦人科の世界]
※ペニシラミン(メタルカプターゼ)
この薬はヒト胎児に皮膚弛緩症をきたすことがある。[妊娠中の投薬とそのリスク(オーストラリア医薬品評価委員会 Medicines in Pregnancy)]
※アザチオプリン(イムラン)
この薬は児に対して、胎児奇形、新生児免疫抑制および骨髄抑制のリスクを少し増大させる。[妊娠中の投薬とそのリスク(オーストラリア医薬品評価委員会 Medicines in Pregnancy)]
※タクロリムス(プログラフ)
この薬は児に免疫抑制を起こす可能性がある。妊娠中にタクロリムスを使用したところ新生児に高カリウム血症や腎障害を併発した例がある。[妊娠中の投薬とそのリスク(オーストラリア医薬品評価委員会 Medicines in Pregnancy)]
※モフェチル(セルセプト)
◆FDA MedWatch
Roche 社とFDA は、臓器移植後の拒絶反応に用いる免疫抑制剤mycophenolate mofetil[‘CellCept’]の使用が、妊娠前期の流産のリスク増加、および先天異常(特に口唇口蓋裂を含む外耳と顔の異常、四肢遠位部、心臓、食道、腎臓の異常)のリスク増加と関連することについて、医療従事者に通知する。米国のNational Transplantation Pregnancy Registry(NTPR:妊娠中に[‘CellCept’]を服用した女性について、胎児の転帰をモニタリングする目的で設立された登録プログラム)が公表した市販後データ、およびその他の妊娠中にmycophenolate mofetil の全身投与を受けた女性の市販後報告にもとづき、[‘CellCept’]の薬剤胎児危険度分類をC(胎児リスクの可能性を除外できない)からD(胎児リスクに確かなエビデンスがある)に変更した。これに伴い添付文書を改訂したが、改訂項目には「枠組み警告、警告(妊婦への投与および妊娠の回避)、使用上の注意(患者向け情報)、副作用(市販後報告)」が含まれている。
妊娠する可能性がある女性は、[‘CellCept’]による治療開始前1 週間以内に、血清または尿の妊娠反応が陰性であることを確認すること。また、[‘CellCept’]を服用し妊娠する可能性がある女性(思春期および閉経前後を含む)は、避妊に関するカウンセリングを受け、効果的な避妊法を用いること。医療従事者および患者は、[‘CellCept’]により経口避妊薬の血中濃度が下がり、理論的には避妊効果が弱まる可能性があることに留意すること。
◆医療従事者向けドクターレター(抜粋)
National Transplantation Pregnancy Registry(NTPR)は、臓器移植を受けた女性患者24 人が報告したmycophenolate mofetil を服用中の妊娠33 件について、前向きに追跡したデータを2006 年12 月に公表した。33 件の妊娠のうち15 件(45%)は自然流産し、18 件は生産児を出産した。生産児18 人のうち4 人(22%)には形態的先天異常が認められた。
妊娠中にmycophenolate mofetil の全身投与を受けた女性77 人の市販後報告(1995〜2007 年)では、自然流産が25 件、生産児や胎児の先天異常が14 件報告されている。この14 件のうち、6件は耳の異常であった。これらの市販後報告は自発報告であるため、特定の副作用の頻度を必ずしも推定できるとは限らない。似たような形態的先天異常は、動物を用いた前臨床生殖毒性試験でも観察されている。
[‘CellCept’]開発中に、同薬による先天異常の可能性を評価するため、動物を用いた生殖毒性試験が実施された。その結果、母体に毒性がみられない用量で、胚吸収や胎仔の先天異常の頻度が増加した。雌のラットおよびウサギには、体表面積換算にもとづき、ヒト(腎臓または心臓移植患者)における推奨用量の0.02〜0.9 倍のmycophenolate mofetil が投与された。ラットの胎仔には無眼球症、無顎症、水頭症を含む先天異常がみられ、ウサギの胎仔には心臓転位、異所性腎、横隔膜ヘルニア、臍ヘルニアを含む先天異常が認められた。[FDA MedWatch /国立医薬品食品衛生研究所 Vol.5(2007) No.23(11/15)R09 2007/11/15]

    
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