造血薬・その他
▼鉄剤
※フェロミア、フェルム、フェロ・グラデュメット、テツクール
鉄分を補給するお薬です。鉄欠乏性貧血に用います。鉄は赤血球の原料です。不足すると鉄欠乏性貧血を起こします。鉄分の多い食事をすることも大切ですが、一度、体内の鉄の備蓄が枯渇すると、食事だけではなかなか回復できません。このような場合に、鉄剤を使います。なお、貧血については「めまいと貧血/貧血の薬」の項も参照ください。
▼ビタミン剤
※ビタミンB12(メチコバール)、葉酸(フォリアミン)、ビタミンB6(ピドキサール)
ビタミンB12と葉酸は、赤血球を作るのに必要です。欠乏すると「巨赤芽球性貧血」という特殊な貧血をおこします。そのほか、ビタミンB6の欠乏による「鉄芽球性貧血(ピリドキシン反応性貧血)」という貧血もあります。ただし、ふつうに食事がとれていれば、このような貧血になることはありません。おもに胃腸の切除後などで、吸収障害があるときに問題となります。このような場合、ビタミンB12の補給は注射でおこないます。
▼造血刺激薬
※レボレード
世界初の飲み薬の造血刺激薬です。造血にかかわるトロンボポエチン受容体に働きかけ、赤血球、白血球、血小板など血球を増産します。適応症は、難病に指定される特発性血小板減少性紫斑病と再生不良性貧血です。特発性血小板減少性紫斑病に対しては、血小板数や臨床症状から出血リスクが高く、また他の治療で十分な効果が得られない場合に用います。再生不良性貧血においては、治療効果を高めるため、免疫抑制薬(サイモグロブリン/ネオーラル)との併用療法が試みられます。
▼免疫抑制薬
サイモグロブリン(注射)、ネオーラル
サイモグロブリンは、抗胸腺細胞免疫グロブリンを有効成分とする点滴用注射薬です。各種移植の拒絶反応に適用するほか、再生不良性貧血に対する標準薬としても使われます。再生不良性貧血の重症例では骨髄移植が第一選択されますが、年齢制限などで困難な場合に、サイモグロブリンとネオーラルの併用療法がおこなわれます。
▼EPO(注射)
※エスポー、エポジン、ネスプ
EPO(エリスロポエチン)は腎臓で造られる造血因子で、骨髄に働きかけ赤血球を増やします。腎臓が悪くなると、このEPOが不足し、「腎性貧血」になることがあります。このようなときに、エスポーやエポジンでEPOを補うようにします。赤血球の増加とともに、貧血症状が改善され体が楽になります。ほかに「未熟児貧血」の適応もあります。副作用で血圧が上がることがあるので、血圧に注意しながら用います。
▼G-CSF(注射)
※グラン、ノイトロジン、ノイアップ
G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)は、好中球を増やす造血因子です。好中球は白血球の1種で、細菌を駆除する役目をしています。減ってしまうと、感染症にかかりやすくなり、重症化するおそれがあるのです。このため、好中球減少時には、G-CSF製剤により好中球の増加促進をはかり、感染症を予防するようにします。具体的な症例として、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、HIV感染症、抗がん薬投与時などにおいて適用可能です。
▼その他
※ステロイド薬(プレドニン、プレドニゾロン、メドロールなど)、免疫抑制薬(サンディミュン、ネオーラルなど)、蛋白同化ホルモン(プリモボランなど)、ボンゾール、輸血
再生不良性貧血や溶血性貧血、あるいは特発性血小板減少性紫斑病に用いることがあります。飲み薬のほか、注射薬もあります。症状や重症度に応じて使い分けます。副作用のでやすい薬ですので、専門医により慎重に処方されます。
<メモ>
●血液中のすべての血球は、骨髄の造血幹細胞から作られます。血球のもとになる造血幹細胞が増殖し、いくつかの段階を経て、赤血球や白血球に分化していくのです。この一連の造血機能に何らかのトラブルを生じると、貧血をはじめさまざまな血液疾患のおそれがでてきます。
●血球は、大きく、赤血球、白血球、血小板の3種類に分かれます。赤血球は、血管を通じ全身に酸素を送る役目をしています。白血球にはいろいろなタイプがありますが、おもに免疫系にかかわり感染防御などを担っています。血小板のはたらきは、出血時に血液を固め止血することです。いずれの役割も生体維持に欠かせません。したがって、血球の病的増減あるいは機能異常があるのなら、それを補正するための治療が必要です。
●貧血は、赤血球の減少や形態異常により起こります。ひどくなると顔色が悪くなり、息切れ、疲れ、動悸、めまい、頭が重い感じ・・といった症状がでてきます。いろいろなタイプの貧血がありますが、一番多いのは鉄分の不足による「鉄欠乏性貧血」です。鉄は、赤血球の産生になくてはならない原料です。
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