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(3) 使用時期について 妊婦中の薬の危険度には、いくつかの要因が関係してくることを最初に述べました。それらのうちで、とくに重要なのが「薬危険度」と「使用時期」です。同じ薬でも、時期によって危険度がまったく違ってくるのです。ここでは、妊娠時期に着目して薬の影響について考えてみることにします。 おおまかにいえば、要注意なのは妊娠初期です。赤ちゃんの体が作られる時期だからです。一部の薬の使用により奇形の発現率が少し高まるかもしれません。一方、妊娠後期に入れば催奇形性の心配はなくなります。ただ、薬によっては、赤ちゃんの発育や機能に悪い影響をすることがありますので、油断はできません。 なお、妊娠週数の数え方は「最終月経の始まった日を0週0日」とします。以下の表を参考にしてください。 |
区分 | 超初期 ※ | 初期 | 中期 | 後期〜末期 | ||||||||||||||||||
月数 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | ||||||||||||
週数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16〜27 | 28〜39 | ||||
最終月経初日 からの日数 |
0~ |
7~ |
14~ 受精 |
21~27 |
28〜55 | 56〜83 | 84〜111 | 112〜195 | 196〜279 | |||||||||||||
薬の影響度 (虎の門病院) |
無影響期 (0〜27) |
絶対過敏期 (28〜50) |
相対過敏期 (51〜84) |
比較過敏期 (85〜112) |
潜在過敏期 (113〜出産日まで) |
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胎児の発育 | 細胞の増殖 | 器官の形成 | 体の成長、機能的発達 | |||||||||||||||||||
備考 | 基本的に薬の影響を受けない。 | 赤ちゃんの外形や臓器が作られる時期。とくに2ヶ月目が重要。薬の服用は慎重に。 | 奇形の心配はほぼなくなる。ただし、薬によっては、赤ちゃんの成長に悪い影響をおよぼすことがある。とくに後期から末期は要注意。 |
※超初期等、この区分は説明上のもので正式ではありません。 |
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■妊娠前 | |
妊娠前に飲んでいた薬が、その後の妊娠や胎児に影響することはまずありません。ほとんどの薬は1〜2日で体から排泄され、体に残ることがないからです。市販されるカゼ薬や鎮痛薬も同様です。ただし、きわめて特殊な例として、角化症治療薬の「エトレチナート(チガソン)」、ニキビ治療薬の「イソトレチノイン(未承認)」、抗ウィルス薬の「リバビリン(レベトール)」、抗リウマチ薬の「レフルノミド(アラバ)」などは、薬の影響がかなり長く残ります。これらについては、医師から服用中止後一定期間の避妊を申し付けられることになります。
※妊娠初期に風しんにかかると、赤ちゃんの心臓などに異常を起こすおそれがあります(先天性風しん症候群)。そのため、出産適齢期になる前にワクチンの予防接種を受けておくことが推奨されています。もし、大人になってから受ける場合は、あらかじめ約1カ月間避妊したあとに接種し、その後約2カ月間は妊娠しないように注意します。ただし、不注意でこの期間に妊娠したとしても、中絶を考慮するほどの危険性はありません。本当の風しんと違って、風しんワクチンが胎児に影響することはまずないと考えられています。 |
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■超初期 (無影響期:妊娠1ヶ月) | |
この時期に飲んだ薬も、奇形という意味では、なんの問題もありません。受精後の2週間は単に細胞分裂するだけで、体の形はまだ作られないからです。市販のカゼ薬や鎮痛薬も同様に心配いりません。ただやはり、前記のような一部の残留性のある薬は、次の過敏期に影響が残るおそれがあります。チョコラA錠(1錠中ビタミンA:1万単位)も早めに中止します。 |
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■初期 (過敏期:妊娠2ヶ月〜4ヶ月) | |
奇形という意味で、もっとも薬の影響を受けやすいのは、妊娠初期のこの時期です。この間に、赤ちゃんの体形や大事な臓器が作られるためです。とくに2ヵ月目が重要。一部の薬の服用により奇形の発現率が少し高まるおそれがあります。ただし、ほとんどの薬は問題ありません。この時期に奇形を作る可能性の高い薬としては、チガソンなどビタミンA誘導体(レチノイド)、抗がん剤、特殊なホルモン系の薬、放射性医薬品など一部の医療用の薬です。このような危険度の高い薬は、事前に医師から妊娠しないように注意されるものです。もちろん、市販されていません。いずれにしても、妊娠中の薬の服用は、市販薬もふくめ医師の指示をあおぐようにしてください。
※妊娠に気づかないまま、市販のカゼ薬や鎮痛薬を飲んでしまうケースがとても多い時期です。飲まないに越したことはないのですが、あとから思い悩むほどのことではありません。市販薬の常識内の服用で、奇形が増えるようなことは、まず考えられません。虎の門病院の調査によると、この時期に代表的な解熱鎮痛薬のアスピリンを服用した23人、エテンザミドを服用した39人、アセトアミノフェンを服用していた6人、ともに健康な赤ちゃんを出産されています。 |
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■中期 (妊娠5ヶ月〜7ヶ月) | |
妊娠中期は、比較的安全な時期です。赤ちゃんの体や臓器の基本的な形はできあがっているので、いわゆる奇形の心配はもうありません。けれど、薬によっては、かえってこの頃から体の成長や機能に悪い影響をおよぼすことがあります。たとえば、高血圧の薬のACE阻害薬。この系統の薬は、胎児の腎臓の働きを悪くし尿量を減らします。その結果として羊水が減少し、重大な障害を残すおそれがあります。妊娠中の服用は禁忌となりますので、妊娠高血圧症にこの系統を使うことはありません。そのほか、中期以降にテトラサイクリン系抗生物質を長期服用すると、赤ちゃんの歯が黄色くなってしまうことがあります。妊娠中の感染症には、別系統のより安全性の高い抗生物質が使われるものです。 |
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■後期 (妊娠8ヶ月〜10ヶ月) | |
後期になると、薬が赤ちゃんに移り、直接的な作用を受けやすくなります。このとき、薬がもたらす悪い作用のことを「胎児毒性」といいます。その代表的な例が鎮痛薬です。鎮痛薬には血管を収縮させる作用があり、新生児肺高血圧症の要因となるおそれがあります。赤ちゃんの腎臓にもよくありませんし、分娩・出産の遅延をまねくこともあります。1、2回頓服する程度でしたら、それほど心配いりませんが、強力な鎮痛薬の長期連用は避けなければなりません。そのほか、妊娠末期の安定剤や睡眠薬の連用は、生まれてくる赤ちゃんの筋力や呼吸を弱らせ元気をなくしてしまうおそれがあります。 |
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おくすり110番 |