[Home]
スポンサード リンク 投げ銭コ-ナ-
  
妊娠とくすりTop / 2.妊娠とくすり概説 / (1) 薬の危険要因


(1) 薬の危険要因

妊婦中の薬の危険度は、薬そのものの「薬危険度」だけでは決まりません。いくつかの要因が関連してきます。もっとも重要なのが「使用時期」です。そのほか「使用期間」、「使用量」、「使用経路(内服、注射、外用)」、「併用薬」なども関係してきます。これらを総合的に評価して、妊娠や胎児への影響度を判定することになります。言いかえれば、妊娠中に薬を使用する場合は、これらの危険要因を減らすことで、より安全性が高まるわけです。まずはじめに、これらの危険要因について簡単に触れておくことにします。「薬危険度」と「使用時期」については次項でも詳しく述べます。


薬危険度

薬危険度は、薬そのものがもつ催奇形性作用、胎児毒性、あるいは妊婦に対する副作用などを意味します。どのような危険性がどの程度あるかは、動物実験、症例報告、臨床試験、疫学調査などから評価されます。

危険度が高いと評価されるのは、ごく一部の薬だけです。その一方で、妊娠中でも絶対に安全といえる薬も少ないです。大部分の薬は、安全性が証明されているわけではないのですが、危険性は少ないと考えられています。

具体的な評価基準としては、薬の添付文書(関係者向け説明書)がまずあげられます。これには「妊婦、産婦、授乳婦への投与」の項にその要点が記載されます。さらに、妊娠中に使用できない薬は「禁忌」の項にも明記されます。添付文書は公的なものでもあり、基本的にはこれを遵守するようにします。そのほか、アメリカのFDAやオーストラリア医薬品評価委員会による危険度分類基準があります。これらの評価基準については、別項でも詳しく説明します。

※処方ポイント → できるだけ、危険度の高い薬は避ける(安全性の高い薬を用いる)


使用時期

薬がおなかの赤ちゃんにおよぼす影響は、使用時期によって違います。催奇形のうえでもっとも心配なのは、赤ちゃんの形がつくられる妊娠初期です。妊娠後期では奇形の心配はなくなりますが、赤ちゃんの発育や機能に悪い影響をする胎児毒性が問題となってきます。

したがって、催奇性のある薬は妊娠初期において危険性が高く、後半期では低くなります。逆に、胎児毒性のある薬では妊娠後期から末期にかけてむしろ危険性が高まります。鎮痛薬のなかには、妊娠後期だけ禁止されるものがあります。これは、妊娠後期の胎児毒性が問題だからです。胎児の血管を収縮させたり、腎臓の働きを悪くする作用が知られています。

※処方ポイント → できたら、その薬の影響しやすい時期は避ける。


使用期間

使用期間は、当然、短期間のほうが影響が少ないです。かぜ薬や鎮痛薬など急性疾患における対症療法薬は、症状がなくなった段階で早めに止めたほうがよいでしょう(医師の指示どおりに)。睡眠薬も長期に連用するより、頓服のような飲み方をしたほうがずっと安全です。ただ、喘息など慢性的な病気では、妊娠全期間をとおして治療を続けなければならないことがあります。

※処方ポイント → できるだけ、短期間にとどめる。


使用量

薬の危険度は使用量にも大きく依存します。一般的には使用量が多いほど危険度が高まります。その典型的な例としてビタミンAやホルモン剤があげられます。ビタミンAは妊娠中にも必要なビタミンなのですが、薬として過剰に服用するとかえって奇形の発現率が高くなることが知られています。

ですから、妊娠中に薬が必要な場合は安全性を考慮し必要最少量(最小有効量)とします。必要最少量とは効かない量のことではありません。期待する効果を十分発揮させるのに必要な最少量という意味です。たとえば、喘息の薬のテオフイリンは、妊娠後期の赤ちゃんに負担をかけないよう、血中濃度を必要最少量の8〜12μg/mLに厳重にコントロールするようにします。

鎮痛薬のアスピリンも妊娠後期の服用は控えるべきですが、抗血小板薬として必要最少量を用いるのであれば比較的安全と考えられています。虎の門病院の基準でもでも、少量のアスピリンについては危険度の低い"1"と評価しています。

※処方ポイント → 必要最少量(最小有効量)とする。


使用経路

薬は使用経路によって、口から飲む「内用薬」、注射器で体内に注入する「注射薬」、皮膚や粘膜に直接使用する「外用薬」に分かれます。内用薬と注射薬は、全身作用があるので妊娠中は慎重に用いるようにします。痛み止めの坐薬など一部の外用薬は全身作用があるので同様に注意が必要です。一方、かゆみ止めの塗り薬、痔の坐薬、目薬、点鼻薬、喘息の吸入薬など局所だけに作用する外用薬については、通常の範囲であれば妊娠中でも安全です。

※処方ポイント → できたら、局所作用の外用薬だけですませる。


併用薬

てんかんの薬では、薬の種類が多くなると奇形の発現率が高くなることが知られています。このため、できたなら1種類の抗てんかん薬だけでコントロールするほうがよいとされます。てんかんに限らず、妊娠中はできるだけ薬の種類を少なくすることが基本です。

※処方ポイント → できるだけ、薬の種類を少なくする。できたら1種類にする。


    
スポンサード リンク 投げ銭してネ !
Good luck & Good by !
おくすり110番