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妊娠とくすりTop / 2.妊娠とくすり概説 /(6) 男性が使用した薬の影響


(6) 男性が使用した薬の影響

男性が使用した薬の妊娠への影響は基本的にはないとお考え下さい。症例報告もほとんどありません。一般的に使用される薬についてはまず心配いりません。

仮に男性側での薬の影響があるとするなら、2つの要因が考えられます。1つは直接的な精子への影響、もう1つは精液を介しての女性への薬の移行です。

1つめの要因については、実際には問題にならないという考えが大勢のようです。射精される精子の数は2〜3億個になりますが、そのうち20%くらいはもともと形態的に異常がみられるそうです。もし、薬の影響でそのような異常な精子が増えたとしても、おそらく卵子にたどり着くことはできません。受精できるのは、数億から選び抜かれた正常で健丈な精子のはずです。万一、薬の影響を受けた精子により受精したとしても、その受精卵は成長することなく消えてなくなる可能性が高いのです。

男性側での影響が指摘される薬で、わりとよく使われる薬にコルヒチンがあります。これらについても、上記のような理由から、現在では影響しないとする考え方が多いようです。ただ、疫学調査などで安全性が証明されているわけではありません。万全をきすという意味では、やはり男性の避妊を含め慎重に対応する必要があるのでしょう。

もう1つの要因、精液を介しての女性への薬物移行については、よほど強力な催奇性のある薬以外は問題になりません。この点について懸念されている薬は、抗悪性腫瘍薬のサリドマイド(サレド)とレナリドミド(レブラミド)、抗ウイルス薬(C型慢性肝炎治療薬)のリバビリン(レベトール)などです。パートナーが妊娠している場合、あるいはその可能性のある男性服用者は、精液が女性に入らないよう性交を控えるか、コンドームの使用が義務づけられます。

なお、男性の場合、受精の半年くらい前までさかのぼって考えなければなりません。薬の使用中に作られた精子が数ヶ月のあいだ蓄えられているからです。したがって、男性側は、薬の服用期間中だけでなく、服用中止後2〜6カ月間ほど避妊を続ける必要があります。

いずれにしても、きわめて特殊な例をのぞき、男性が使用した薬が妊娠や胎児に影響することはまずないと考えてよいでしょう。


<付録>男性側で注意を要する薬
分 類 薬 品(製品例) 添 付 文 書
白癬治療薬 グリセオフルビン
(製造販売中止)
その他の注意 高用量での動物実験(マウス)において、本剤が卵母細胞の減数分裂を遅延したとの報告、及び哺乳類の培養細胞を用いたin vitroの試験において、本剤が染色体の異常分離を誘発したとの報告がされているので、本剤投与中の患者には避妊をさせること。また、少なくとも投与中止後、婦人では1カ月間、男性では6カ月間は避妊をさせること。[グリソビンFP錠「フジサワ」]
高用量での動物試験(マウス)において、本剤が卵母細胞の減数分裂を遅延したとの報告、及び初代精母細胞において染色体の異常分離を誘発したとの報告がされているので、本剤投与中の患者には避妊をさせること。また、少なくとも投与中止後、婦人では1カ月間、男性では6カ月間は避妊をさせること。[ポンシルFP]
痛風治療薬
(ベーチェト病治療薬)
コルヒチン その他の注意 *父親が本剤を服用した場合、その配偶者より、ダウン症候群及びその他の先天異常児が出生する可能性があるとの報告がある。[吉田篤ほか:眼科, 27(11)、1359, 1985]
*ラットにおいて精巣毒性(精上皮細胞の脱落等)を引き起こすことが報告されている。
抗うつ薬
(SSRI)
フルボキサミン
(ルボックス、デプロメール)
パロキセチン
(パキシル)
セルトラリン
(ジェイゾロフト)
その他の注意 海外で実施された臨床試験において、本剤を含む選択的セロトニン再取り込み阻害剤が精子特性を変化させ、受精率に影響を与える可能性が報告されている。
角化症治療薬 エトレチナート
(チガソン)
重要な基本的注意 本剤はモルモットを用いた動物実験で、精子形成能に異常を起こすことが報告されているので男性に投与する場合には、投与中及び投与中止後少なくとも6カ月間は避妊させること。
抗悪性腫瘍薬 サリドマイド
(サレド)
警告 本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、投与開始から投与終了4週間後まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)させ、避妊を遵守していることを十分に確認すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないこと。
重要な基本的注意 本剤投与開始から投与終了4週間後までは、精子・精液の提供をさせないこと。
レナリドミド
(レブラミド)
警告 本剤は精液中へ移行することから投与終了4週間後まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性患者は必ずコンドームを着用)させ、避妊を遵守していることを十分に確認すること。また、この期間中は妊婦との性交渉は行わせないこと。
重要な基本的注意 本剤投与開始から投与中止4週間後までは、献血、精子・精液の提供をさせないこと。
タミバロテン
(アムノレイク)
重要な基本的注意 本剤はラット、イヌを用いた動物実験で、精子形成能に異常を起こすことが報告されているので男性に投与する場合には、投与中及び投与終了後6カ月間は避妊させること。
フルダラビン
(フルダラ)
重要な基本的注意 生殖可能な年齢の患者に投与する場合には、性腺に対する影響を考慮すること。
その他の注意 動物実験(ラット、イヌ)において精巣毒性が認められ、4週間の休薬期間では回復性が確認されていないので、不妊など性腺に対する影響を考慮すること。また、男性において、本剤による治療中、精子のDNA損傷が認められたという報告がある。
シクロホスファミド
(エンドキサン)
妊婦、産婦、授乳婦等への投与 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。また、妊娠する可能性のある婦人及びパートナーが妊娠する可能性のある男性には、適切な避妊をするよう指導すること。妊娠中に本剤を使用するか、本剤を使用中に妊娠した場合は、胎児に異常が生じる可能性があることを患者に説明すること。[催奇形性を疑う症例報告があり、動物試験では、本剤2.5 mg/kgを投与した雌ラットで胚・胎児の死亡及び催奇形作用が報告されている。本剤5.1 mg/kgを投与した雄ラットを、本剤を投与しない雌ラットと交配させたところ、胎児の死亡増加及び奇形を認めたとの報告がある。]
メルファラン
(アルケラン)
妊婦、産婦、授乳婦等への投与 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、妊娠する可能性のある婦人及びパートナーが妊娠する可能性のある男性には、適切な避妊をするよう指導すること。妊娠中に本剤を使用する場合、又は本剤を使用中に妊娠した場合は、胎児に異常が生じる可能性があることを患者に説明すること。[動物実験で大量(1.0mg/kg以上)をラットに投与した場合、胚・胎児の死亡及び催奇形性が報告されており、また他のアルキル化剤(シクロホスファミド)で催奇形性を疑う症例報告がある。5mg/kg以上を雄マウスに投与した実験で生殖細胞に対する遺伝毒性が報告されている。]
エトポシド
(ベプシド、ラステット)
妊婦、産婦、授乳婦等への投与 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、妊娠する可能性のある女性及びパートナーが妊娠する可能性のある男性には、適切な避妊をするよう指導すること。〔妊娠中に本剤を投与された患者で児の奇形が報告されており、動物実験(ラット、ウサギ)で催奇形性、胎児毒性が認められている。また、マウスに本剤10mg/kg以上を投与した結果、マウス精原細胞に染色体異常が認められたとの報告がある。〕
ヒドロキシカルバミド
(ハイドレア)
妊婦、産婦、授乳婦等への投与 パートナーが妊娠する可能性のある男性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊をするよう指導すること。〔細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及びマウス、ラットを用いた小核試験において、遺伝毒性が報告されている。〕
抗ウイルス薬

(C型慢性肝炎治療薬)
リバビリン
(レベトール)
警告 *本剤では催奇形性及び精巣・精子の形態変化等が報告されているので、妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合には、避妊をさせること。
*本剤では精液中への移行が否定できないことから、パートナーが妊婦の男性患者に投与する場合には、「使用上の注意」を厳守すること
重要な基本的注意 *妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者は投与中及び投与終了後6カ月間は信頼できる避妊法を用いるなどして妊娠を避けること。
*精液中への本剤の移行が否定できないことから、パートナーが妊娠している男性患者には、その危険性を患者に十分理解させ、投与中及び投与終了後6カ月間は本剤が子宮内へ移行しないようにコンドームを使用するよう指導すること。
抗ウイルス薬

(抗サイトメガロウイルス薬)
ガンシクロビル
(デノシン)
警告 動物実験の結果から、通常用量で不可逆的な精子形成機能障害を起こすことが、また、婦人の妊孕性低下が示唆されている。
重要な基本的注意 本剤は動物実験で催奇形性及び変異原性があることが報告されているので、妊娠の可能性のある女性は投与期間中、また、男性は投与期間中及び投与後90日間は有効な避妊を行わせること。
バルガンシクロビル
(バリキサ)
警告 本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物試験において、通常用量で不可逆的な精子形成機能障害を起こすこと、また、婦人の妊孕性低下が示唆されていること、及び男性では一時的又は不可逆性の精子形成能機能障害を起こすおそれがあるので、それらを患者に説明し慎重に投与すること。
重要な基本的注意 本剤の活性代謝物であるガンシクロビルを用いた動物試験において、催奇形性及び遺伝毒性があることが報告されているので、妊娠の可能性のある女性は投与期間中、男性は投与期間中及び投与後90日間は有効な避妊を行わせること。
抗リウマチ薬 メトトレキサート
(リウマトレックス)
重要な基本的注意 妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも1月経周期は妊娠を避けるよう注意を与えること。男性に投与する場合は、投与中及び投与終了後少なくとも3ヵ月間は配偶者が妊娠を避けるよう注意を与えること。
レフルノミド
(アラバ)
重要な基本的注意 男性に投与する場合には、投与期間中避妊するよう注意を与えること。
その他の注意(薬物除去法) 挙児を希望する男性:ラットにおける雄性生殖能試験において胎児に影響はみられなかったが、リスクを最小限にするために、挙児を希望する男性には、本剤の投与の中止及び薬物除去を考慮すること。
免疫抑制薬 アザチオプリン
(イムラン)
重要な基本的注意 本剤投与中の患者において、リンパ球に染色体異常を有する児が出生したとの症例報告がある。また、動物実験(ウサギ、ラット、マウス)で催奇形性作用が報告されているので、本剤投与中の患者には男女共に避妊を行わせること。
その他 ミグルスタット
(ブレーザベス)
重要な基本的注意 動物試験で、ミグルスタット投与により雄性生殖器重量及び精子形成の低下、並びに受胎率の低下が報告されているので、男性患者で受胎を希望する場合には、事前に本剤の投与を中止し、3ヵ月間は避妊するよう適切に指導すること。
【my切り抜きメモ】
※サリドマイド:男性患者に対しても、サリドマイドの使用期間中そして最後の使用から少なくとも1ヵ月間は性交を止めるかコンドームを使用することが要求されます。それはサリドマイドが精液中に存在するかどうかわからないからです。[石居昭夫:薬局, Vol. 49 No. 4 1998 ]・・・未承認時(2008年に、抗多発性骨髄腫薬として正式に承認され、厳重な安全管理手順が定められる)

  
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