エイズの薬-3

▼配合剤(基礎薬)
コンビビル(AZT/3TC)、エプジコム(ABC/3TC)、ツルバダ(TDF/FTC)、

2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬の配合剤です。コンビビルはジドブジン(AZT)とラミブジン(3TC)、エプジコムはアバカビル(ABC)とラミブジン(3TC)、ツルバダはテノホビル(TDF)とエムトリシタビン(FTC)の組み合わせです。これを基礎薬(ベースドラッグ)とし、多剤併用療法における背景治療(バックボーン)にします。そして作用機序が異なる別系統の主要薬(キードラッグ)を加えることで強力な治療効果が得られるのです。

▼配合剤(主要薬+基礎薬)
コムプレラ(RPV+TDF/FTC)、オデフシィ(RPV+TAF/FTC)、トリーメク(DTG+ABC/3TC)、スタリビルド(EVG+COBI+TDF/FTC)、ゲンボイヤ(EVG+COBI+TAF/FTC)

主要薬(キードラッグ)と基礎薬(ベースドラッグ)が配合される配合剤です。併用薬を必要とせず、1日1回1錠の服用で済むので服薬管理がたいへん楽になります。ただし、すべての患者さんに使用できるわけではありません。治療歴、服用量の妥当性、薬剤耐性、薬物間相互作用、副作用、利便性などを考え合わせ、配合剤が適当と判断される場合に処方されます。初回治療に用いるほか、同一成分による併用療法からの切り替えも可能です。他剤からの切り替えは、耐性出現などのリスクを考慮のうえ、ベネフィットがリスクを上回るなど一定の条件を満たす場合に限られます。

コムプレラ配合錠は、3種類の抗ウイルス薬を含むエイズ治療薬です。主要薬として1種類の非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、基礎薬として2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬から成ります。この組み合わせは、標準的な併用療法として従来から推奨されています。エイズの薬としては比較的安全性が高く、副作用も少ないほうです。新薬のオデフシィ配合錠は、コムプレラ配合錠のテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)を、テノホビル アラフェナミド(TAF)に置き換えたもので、腎臓や骨への影響軽減が期待されます。どちらも、初回治療に用いるほか、他剤からの切り替えもできます。切り替えは、副作用のため継続が困難な場合、または煩雑な服薬管理を軽減するため、あるいは薬物間相互作用を回避するために行われます。

トリーメク配合錠には、主要薬としてインテグラーゼ阻害薬のドルテグラビル(DTG)が採用されます。基礎薬は2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬です。この組み合わせも、標準的な併用療法の一つになります。エイズの薬としては薬物間相互作用が少なく、食事とかかわりなく飲めるのもメリットです。初回治療に適用するほか、同じ3成分による併用療法からの切り替えも可能です。別成分からの切り替えは、ウイルス学的抑制が得られない場合に検討されます。単に、利便性の向上を目的とする切り替えは推奨されません。ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のアバカビル(ABC)による過敏症の発現に注意が必要です。

スタリビルド配合錠は、3種類の抗ウイルス薬と1種類の作用増強薬(ブースター)を含むエイズ治療薬です。主要薬として新規インテグラーゼ阻害薬のエルビテグラビル、基礎薬として2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬から成ります。ゲンボイヤ配合錠は、スタリビルドのテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)を、テノホビル アラフェナミド(TAF)に置き換えたもので、腎臓や骨への影響軽減が期待されます。初回治療に用いるほか、他剤からの切り替えも可能です。切り替えは、副作用の軽減のため、あるいは利便性の向上をはかるために行なわれます。ただし、治療歴など一定の要件を満たすことを条件とし、新たな副作用や耐性出現、薬物間相互作用などのリスクを考慮のうえ、適切であると判断される場合に限ります。難点を1つあげるなら、相互作用を起こしやすく併用薬の制限が多いことです。


<メモ>
●規則正しい服用は、薬の血中濃度を一定に保ち、ウイルスに増殖する"すき"を与えないために重要です。飲み忘れや、飲み間違いにも注意が必要です。服薬率が95%を割ると、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現が多くなるという報告があります。不用意な減量や中断は、薬の効き目を悪くし、治療を困難にするおそれがあるのです。このようなことがないよう、煩雑な用法はできるだけ避けたいところです。他剤と併用することなく1日1回1錠で服薬が完結する配合剤は、患者さんの服用利便性を改善し長期的な服薬遵守の向上につながるものと期待されます。

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