‘うつ’の薬-4

▼非定型抗精神病薬
エビリファイジプレキサリスパダールなど

一般的な抗うつ薬で効果不十分な場合に、非定型抗精神病薬を補助的に用いることがあります。セロトニンやノルアドレナリン系神経に作用する抗うつ薬と、ドパミンおよびセロトニン系神経に働く非定型抗精神病薬を併用することで、互いの薬理作用が増強または補完できるわけです。なかでもドパミン部分作動薬のエビリファイは、実際の臨床試験でも抗うつ薬との併用効果が認められ、うつ病に対する効能を正式に取得しています。抗うつ薬にはドパミン神経伝達の低下を改善する作用がないので、エビリファイでその作用を補えるものと考えられます。

▼リチウム
リーマス

他の抗うつ薬が効かないときに、追加併用することがあります。血中濃度を測定しながら、慎重に使用する必要があります。手のふるえ、吐き気、めまい、下痢などが現れたら、すぐ医師に連絡してください。なお、本来の適応症は躁病(躁状態)です。[参:‘躁うつ’の薬]

▼抗不安薬(BZ作動薬)
デパスコンスタンソラナックスレキソタンメイラックスセルシンワイパックスリーゼ

不安や焦燥、緊張が強いときに用いる補助薬です。抗うつ薬ではありませんが、デパスやコンスタンは抗不安作用にくわえ弱い抗うつ作用も持ち合わせています。SSRIの服用初期に発現する一過性の不安感をおさえるのに併用することも多いです。眠れないときにも用います。別項の「心身症の薬」「不眠症の薬」も合わせて参照ください。

▼スルピリド
ドグマチールアビリット

比較的軽い抑うつ症状に使われています。食欲不振や吐き気があるときにも向いています。量を多めにしますと、気持ちを安定させたり妄想をおさえる作用もでてきます。逆に少量を胃腸薬として用いることがあります。副作用で多いのは、女性の生理が乱れたり、乳汁が出たりすることです。男性では乳房が張ってくることもあります。

▼精神刺激薬
ペモリンリタリン

気分を高める作用から、うつ病に応用することがあります。リタリンは安易な処方が社会問題となり、保険適応が削除されました(ナルコレプシーのみ適応)。副作用で多いのは、食欲不振、不眠、口の渇き、頭痛、動悸、便秘などです。むやみに増やしますと、薬に頼りがちになり、やめにくくなります。医師から指示される用量を守ってください。


<メモ>
●うつ病の第一選択薬として推奨されるのはSSRI、SNRIまたはNaSSAなどの新世代抗うつ薬です。重症の場合は旧来の三環系もしくは四環系抗うつ薬も処方候補です。6~7割くらいの人に効果がみられますが、それらを十分量かつ十分期間使用してもよい効果が得られない場合は、他の抗うつ薬への変更を検討します。単薬で改善が見込めなければ、非定型抗精神病薬またはリチウム薬との併用療法も試みられます。

●‘うつ’は、本来のうつ病(内因性うつ病 )のほかにもいろいろな原因で生じます。とても悲しい出来事、重い病気、老い、薬の副作用・・。それぞれのタイプで、治療法や使う薬も違います。薬物療法だけに頼るのではなく、生活や職場の環境調整、認知療法などの心理社会的治療を合わせておこなうことが大事です。

●薬の影響で、抑うつ症状を起こすことがあります。たとえば、降圧薬や狭心症治療薬(レセルピン、メチルドパ、β遮断薬、カルシウム拮抗薬)、抗パーキンソン薬、ステロイド、インターフェロン(注射)、子宮内膜症治療薬(GnRH薬)などが知られています。薬剤性の抑うつは、なにもやる気がしない、動くのがおっくうといった精神運動の抑制として現われることが多いようです。服用中の薬は医師に報告しておきましょう。

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