概説 |
ニューモシスチスという真菌をおさえるお薬です。ニューモシスチス肺炎の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- ニューモシスチス・イロベチーは特殊な真菌(カビ)の仲間です。健康な人は心配ないのですが、エイズの患者さんや、免疫抑制療法などで抵抗力が落ちている人が感染すると たいへんやっかいです。治療が困難で、命にかかわることも少なくありません。
このお薬は、そのようなニューモシスチス・イロベチーに有効です。ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)の治療薬とするほか、発症抑制薬として予防的に用いることも可能です。通常、第一選択薬のサルファ薬(ST合剤:バクタ)が副作用などで使用できないときに処方されます。

- 【薬理】

- 酵母様真菌のニューモシスチス・イロベチーのミトコンドリア呼吸鎖に作用し電子伝達系を選択的に阻害します。すると、真菌の核酸およびATP合成が阻害され、ニューモシスチスの活性が抑制されます。なお、ニューモシスチス以外の真菌には無効です。

- 【臨床試験】

- この薬と、標準薬のサルファ薬の効果および安全性を比較する臨床試験が海外でおこなわれています。参加したのは、軽症から中等症のニューモシスチス肺炎に感染したエイズの患者さん322人。服用期間は21日間です。効果判定の第一の評価項目は生存率、第二は有効率になります。
その結果、この薬を飲んでいた人達の生存率は93%(148/160人)、サルファ薬の人達で99%(160/162人)でした。また、有効率はこの薬で62%(99/160人)、サルファ薬で64%(103/162人)でした。生存率はサルファ薬より劣りましたが、有効率はそれほど変わらず一定の有効性があることが示されました。
一方、重い副作用を起こした人の割合は、この薬を飲んでいた人達で11%、サルファ薬で22%でした。さらに重い副作用で服用中止に至った例は、この薬では9%ほどでしたが、サルファ薬においては25%に達しました。重い副作用の発現率は、この薬のほうが明らかに少なく、サルファ薬に比べ安全性および忍容性が高いことが確認できたわけです。
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特徴 |
- ユビキノン類似体のニューモシスチス肺炎治療・発症抑制薬です。第一選択薬のサルファ薬(ST合剤:バクタ)やペンタミジン(ベナンバックス)に次ぐ第二もしくは第三選択肢として用いられることになります。
- 治療効果ではサルファ薬に劣るものの、副作用が少なく長期服用も比較的容易です。このため、サルファ薬やペンタミジンが副作用で使用できない場合の代替治療薬として推奨されます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えてください。
- 妊娠中、またその予定のある人は医師に話しておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 重い肝臓病や腎臓病のある人は慎重に用いるようにします。また、下痢をしている場合は、他の代替治療を検討する必要があります。下痢があると血中濃度が十分上がらず、よい効果が期待できないためです。
- 注意が必要なケース..重い肝臓病、重い腎臓病のある人、下痢をしている人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 結核やMAC症の治療に用いるリファンピシン(リファジン)またはリファブチン(ミコブティン)と飲み合わせると、この薬の血中濃度が低下し効果が減弱するおそれがあります。このため、それらとは併用しないことが望ましいです。
- ほかにも、抗生物質のテトラサイクリン、吐き気止めのメトクロプラミド(プリンペラン)、抗エイズウイルス薬のジドブジン(レトロビル)やインジナビル(クリキシバン)など注意が必要な薬剤がいくつかあります。服用中の薬は、忘れずに報告しておきましょう。
 【使用にあたり】
- 必ず食後に飲んでください。空腹時ですと吸収がよくありません。
- 指示された期間続けることが大事です。通常、治療においては21日間、予防目的ではさらに長期となります。

- 【備考】

- ニューモシスチス肺炎が心配されるのは、エイズをはじめ、大量のステロイド薬や免疫抑制薬あるいは抗リウマチ薬などによる免疫抑制療法をおこなっている場合などです。そのような免疫不全状態において、発症リスクが高まるのです。
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効能 |

- 【適応菌種】

- ニューモシスチス・イロベチー

- 【適応症】

- ニューモシスチス肺炎、ニューモシスチス肺炎の発症抑制
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用法 |

- 【ニューモシスチス肺炎の治療】

- 通常、成人は1回5mL(アトバコンとして750mg)を1日2回21日間、食後に経口服用する。

- 【ニューモシスチス肺炎の発症抑制】

- 通常、成人は1回10mL(アトバコンとして1500mg)を1日1回、食後に経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは、吐き気や嘔吐、下痢や腹痛などの消化器症状です。そのほか、頭痛、発熱、発疹、肝機能値異常などもみられます。下痢が続くときや発疹がひどくなるようでしたら、早めに受診し医師とよく相談してください。
重い副作用はほとんどありませんが、きわめてまれなケースとして重度の皮膚障害や肝機能障害が報告されています。ひどい発疹、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、皮膚や白目が黄色くなる といった症状に念のため注意してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 無顆粒球症、白血球減少..発熱、のどの痛み、口内炎、咳、痰、だるい。
 【その他】
- 気持ちが悪い、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
- 頭痛、発熱、発疹、肝機能値異常
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