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成分(一般名) エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミド
製品例 ゲンボイヤ配合錠 ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 抗ウイルス剤/抗HIV配合剤/抗ウイルス化学療法剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 エイズウイルスの増殖を抑えるお薬です。エイズの治療に用います。
作用

【働き】

エイズは、エイズウイルスの感染により起こる病気です。エイズウイルスは血液や精液を介してうつります。体に入ったエイズウイルスは、免疫系の細胞(白血球の一種のCD4リンパ球)を破壊しながら、徐々に増殖していきます。そして、体の免疫力がしだいに低下し、数年から十数年後に発症します。重い感染症にかかったり、リンパ腫などの悪性腫瘍に侵されやすくなり命にかかわることもあるのです。

このお薬は、エイズウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬です。効果を上げるため、4つの成分が配合されています。1つは主要薬(キードラッグ)となるインテグラーゼ阻害薬のエルビテグラビル(EVG)、もう1つはエルビテグラビルの血中濃度を維持するためのコビシスタット(COBI)です。あと2つは基礎薬(ベースドラッグ)となるヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のテノホビル アラフェナミド(TAF)とエムトリシタビン(FTC)になります。

この4薬による強力な抗ウイルス作用により、エイズウイルスを検出限界レベルまで減少させることが可能です。ウイルスが減るとともに、免疫力が回復し、病状が改善します。また、エイズの発症や進行を遅らせ、長生きにもつながるのです。ただし、エイズウイルスを完全に死滅させることは困難です。したがって、生涯にわたり治療を続けなければなりません。

  • ※エイズ:後天性免疫不全症候群
  • ※エイズウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

【薬理】

主要薬のエルビテグラビルは、インテグラーゼ阻害薬の部類です。エイズウイルスの遺伝子DNAが人のDNAに組み込まれる際に必要な酵素‘インテグラーゼ’を阻害します。これにより、ウイルスの複製を阻止し、新たな細胞への感染をくい止めるのです。

基礎薬のテノホビルとエムトリシタビンは、エイズウイルスの遺伝子RNAをDNAに逆転写する酵素‘逆転写酵素’の働きを阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制します。このような作用から逆転写酵素阻害薬と呼ばれ、さらに化学的構造や薬剤特性からクレオシド系逆転写酵素阻害薬または核酸系逆転写酵素阻害薬に分類されます。

コビシスタットは脇役です。主薬のエルビテグラビルを分解する酵素‘CYP3A’を選択的に阻害することで、エルビテグラビルの血中濃度を維持する役目をします。服用回数が1日1回で済むのも、このおかげです。専門的に薬物動態学的増強因子(ブースター)と呼ばれています。

【臨床試験-1】

類似薬のスタリビルド配合錠(EVG+COBI+FTC/TDF)との比較試験が行われています。参加したのは治療歴のない患者さん約1700人。効果判定の主要評価項目は1年後のウイルス量が検出限界レベル(50コピー/mL未満)まで低下した人の割合です。

その結果、この薬を飲んでいた人達で検出限界以下になった人の割合は92.5%(801/866人)、スタリビルド配合錠の人達で90.8%(787/867人)でした。両剤に大きな差はなく、既存のスタリビルド配合錠と同様の優れた有効性が確認できたわけです。

【臨床試験-2】

別の治療薬からの切り替えについても検証されています。参加したのはエムトリシタビンとテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む併用療法(FTC/TDF+α)によりウイルスが抑えられている患者さん約1400人です。そして、そのまま同じ薬を続ける人と、この薬に切り替える人に分かれ、1年後、ウイルスが抑制(50コピー/mL未満)されている人の割合を調べるのです。

その結果、同じ薬を続けていた人達でウイルスが抑制されていた人の割合は93.1%(444/477人)、この薬に切り替えた人達では97.2%(932/959人)でした。この薬に変更しても効果が落ちることなく、同等ないしそれ以上の有効性が期待できるわけです。
特徴
  • 3種類の抗ウイルス薬と1種類の増強薬(ブースター)を含むエイズ治療薬です。主要薬(キードラッグ)として1種類のインテグラーゼ阻害薬、基礎薬(ベースドラッグ)として2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬から成ります。この組み合わせは、標準的な併用療法の一つとして推奨されます。多剤併用療法が1日1回1錠の服用で済むので服薬管理が楽です。難点を一つあげるなら、併用薬の制限が多くやっかいなことです。
  • 主要薬はインテグラーゼ阻害薬のエルビテグラビル(EVG)です。以前から標準的に用いられている非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のエファビレンツ(EFV)と同等の治療効果が得られます。なお、エルビテグラビルの単剤は販売されていません。同系の単剤としては、ラルテグラビル(アイセントレス)とドルテグラビル(テビケイ)が発売済みです。
  • 基礎薬として配合されるのが、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のテノホビル(TAF→TFV-DP)とエムトリシタビン(FTC)です。作用増強のための最も基本的な組み合わせになります。なお、類似薬のスタリビルド配合錠との相違点は、配合されるテノホビルのプロドラッグ(前駆物質)の違いです。この薬はテノホビル アラフェナミド(TAF)、スタリビルド配合錠はテノホビル ジソプロキシル(TDF)になります。この薬に採用されるテノホビル アラフェナミドは、ウイルス感染標的細胞内(末梢血単核細胞中)で活性体のテノホビル二リン酸(TFV-DP)に代謝されるため、血漿中テノホビル濃度をより低く抑えることが可能です。このため、テノホビル製剤で心配される腎臓や骨への影響軽減が期待されるのです。
  • 初回治療に用いるほか、他剤からの切り替えも可能です。切り替えは、副作用の軽減のため、あるいは利便性の向上をはかるために行われます。ただし、治療歴など一定の要件を満たすことを条件とし、新たな副作用や耐性出現、薬物間相互作用などのリスクを考慮のうえ、ベネフィットがリスクを上回る場合に限り切り替えるようにします。
注意
【診察で】
  • 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
  • 別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師に報告しておきましょう。
  • 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
  • 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告してください。

【注意する人】
  • 腎臓や肝臓に重い障害がある人は慎重に用います。薬の代謝や排泄が遅れ、血中濃度が上昇しやすいためです。用法・用量の調節が必要な場合は、この薬ではなく、個別の製剤を用いるようにします。
  • 病的骨折の既往のある人または骨粗しょう症など慢性骨疾患のある人は、長期服用にさいし骨密度の低下に注意が必要です。
  • 配合成分のひとつテノホビルはB型肝炎ウイルスにも有効です。見かたを変えれば、B型慢性肝炎を合併している人では、この薬の中断により肝炎が悪化するおそれがあるのです。中止する場合はその点に十分留意する必要があります。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、この薬の効果が減弱し、治療の失敗につながります。また、併用薬の作用増強にも注意が必要です。

  • 1剤で治療する4成分配合剤ですから、他の抗エイズ薬とは併用しません。なお、いずれかを含む製品として、エムトリバ、デシコビ、スタリビルド、コムプレラ、スタリビルド、プレジコビックス、ベムリディ、テノゼットなどがあります。また、類似薬のリトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)およびラミブジン(ゼフィックス、エピビル、コンビビル、エプジコム、トリーメク)との併用も避けなければなりません。一部は、肝炎の治療に用いられますから注意してください。
  • 効果減弱により禁止されるのは、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、肝炎治療薬のテラプレビル(テラビック)、それと健康食品のセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)です。MAC症に用いる抗酸菌症治療薬のリファブチン(ミコブティン)とステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)は禁止ではありませんが、同様の理由で注意が必要です。
  • 併用薬の副作用増強のために禁止されるのは、降圧薬のアゼルニジピン(カルブロック、レザルタス)、頭痛薬のエルゴタミン(クリアミン)やジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット)、子宮収縮薬のメチルエルゴメトリン(メテルギン)、C型慢性肝炎治療薬のアスナプレビル(スンベプラ)とバニプレビル(バニヘップ)、コレステロール低下薬のシンバスタチン(リポバス)、ロミタピド(ジャクスタピッド)、睡眠薬のトリアゾラム(ハルシオン)、安定薬のピモジド(オーラップ)やブロナンセリン(ロナセン)、勃起不全治療薬のバルデナフィル(レビトラ)、肺高血圧症治療薬のシルデナフィル(レバチオ)やタダラフィル(アドシルカ)、抗血栓薬のリバーロキサバン(イグザレルト)などです。
  • 痛風やベーチェト病の治療に用いるコルヒチンの血中濃度を上昇させ中毒をまねくおそれがあります。とくに肝臓病や腎臓病のある人は、併用を避けなければなりません。ほかにも、併用薬の血中濃度が上昇する飲み合わせがたくさんあります。使用中の薬を必ず医師に報告し、別の病気で受診のさいも この薬を飲んでいることを必ず伝えてください。

【使用にあたり】
  • 決められた飲み方を守ってください。規則正しい服用は、薬の血中濃度を一定に保ち、ウイルスに増殖する“すき”を与えないために重要です。飲み忘れにも十分注意しましょう。服薬率が95%を割ると、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現が多くなるという報告があります。
  • 通常、1日1回、1回に1錠を食後に飲みます。空腹時ですと吸収が悪くなるおそれがあります。
  • 飲み忘れた場合は、気付いたときに直ちに服用し、翌日はいつも通りに服用してください。翌日に気付き、次の服用時間が近ければ、忘れた1回分は抜かし、次の通常の時間に1回分だけ服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。
  • 自分だけの判断で量を変えたり、飲むのをやめてはいけません。不用意な減量や中断は、薬の効き目を悪くし治療を困難にします。

【検査】

処方に先立ち、服薬に問題ないか調べます。とくに重要なのが腎臓の検査です。可能であれば、薬剤耐性検査も実施します。治療開始後も、定期的に副作用のチェックをおこない、また効果判定のためウイルス量の低下と免疫細胞(CD4リンパ球)の増加を調べます。長期服用時は必要に応じ骨密度検査を実施します。

【妊娠授乳】
  • 安全性が未確立なため、妊娠中は服用しないことが望ましいです。継続の可否や代替薬への変更について、医師とよく話し合ってください。なお、妊娠中に推奨されるのは、主要薬はプロテアーゼ阻害薬のロピナビル・リトナビル配合剤(カレトラ)、基礎薬としてヌクレオシド系のジドブジン・ラミブジン配合剤(コンビビル)の組み合わせです。
  • 授乳は避けてください。乳汁中に薬が移行すると考えられます。また、母乳中のエイズウイルスにより赤ちゃんが感染するおそれがあります。

【食生活】

エイズウイルスの感染力は非常に弱く、日常の社会的接触であれば感染することはありません。ただし、性的接触により感染の可能性があります。この薬を飲み始めても、その点には留意が必要です。

【備考】
  • エイズの薬は、大きく、逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬の3系統に分かれます。逆転写酵素阻害薬は、さらにヌクレオシド系と非ヌクレオシド系に分かれます。作用増強と耐性回避のため、これらを組み合わせる多剤併用療法が一般的です。現在、初回治療として推奨されるのは、2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬をベースドラッグとし、これにキードラッグの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬と低用量リトナビル、またはインテグラーゼ阻害薬のいずれかを加える3剤ないし4剤併用療法です。このような多剤併用療法によりエイズの予後はたいへん改善し、より長生きできるようになりました。
  • 免疫力が低下しエイズを発症すると、別のいろいろな感染症にかかりやすくなります。サイトメガロウイルス、カンジダ、ニューモシスチス(カリニ)・・ふつうなら感染しにくい微生物にまで侵されてしまうのです。このような2次感染症に対しては、抗菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬などで強力な治療をおこないます。
効能 HIV-1感染症
用法 通常、成人及び体重25kg以上の小児は、1回1錠(エルビテグラビルとして150mg、コビシスタットとして150mg、エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル アラフェナミドとして10mgを含有)を1日1回食後に経口服用する。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 比較的多いのは、吐き気や嘔吐、下痢や腹痛などの胃腸症状です。また、頭痛、めまい、不眠または傾眠など精神・神経系の副作用も報告されているようです。軽い副作用の場合、治療を優先しなければなりませんが、気になるときは医師とよく相談してください。

重い副作用として、腎不全など腎機能障害を起こすことがあります。とくに、もともと腎臓病のある人または既往のある人は、定期的に検査を行わなければなりません。ほかにも、乳酸アシドーシス、あるいは免疫機能の回復に伴う免疫再構築炎症反応症候群など さまざまな副作用が発現する可能性があります。いつもと違う症状があらわれたら、どのようなことでも医師に報告してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
  • 乳酸アシドーシス・肝腫大(脂肪肝)..吐き気、吐く、腹痛、下痢、けん怠感、息苦しい、息が荒い、筋肉痛、手足の震え・脱力、歩けない、動悸、急激な体重減少、意識の低下、右上腹部の張り・圧迫感。

【その他】
  • 吐き気、吐く、下痢、腹痛
  • 頭痛、めまい、疲労
  • 不眠、眠気、悪い夢を見る
  • 骨密度減少、骨粗鬆症
  • 発疹、皮膚変色

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。