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成分(一般名) バロキサビル マルボキシル
製品例 ゾフルーザ錠10mg~20mg、ゾフルーザ顆粒2%分包 ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 抗ウイルス剤/キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬/抗インフルエンザウイルス剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 インフルエンザウイルスの増殖を抑えるお薬です。インフルエンザの治療や予防に用います。
作用

【働き】

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症です。発熱、頭痛、筋肉・関節痛などの症状が急激にあらわれ、喉の痛み、鼻水・鼻づまり、咳といった症状もでてきます。通常、3〜4日熱が続いたあと回復に向かいます。

このお薬は、抗インフルエンザウイルス薬です。インフルエンザウイルスの増殖をおさえる作用があり、感染初期に使用すれば、インフルエンザの諸症状が軽減し、治癒が1〜2日早くなります。また、高齢の人など重症化しやすい人に、予防薬としても使用可能です。A型とB型のインフルエンザに有効です。

【薬理】

キャップ依存性エンドヌクレアーゼは、インフルエンザウイルス特有の酵素です。その役目は、感染細胞内でキャップ構造をもつ人のmRNA前駆体を切断し、ウイルスのmRNA合成に必要なRNA断片を生成することです。

この薬は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害し、ウイルスのmRNAの合成を阻止します。これにより、ウイルスRNAの転写反応ができなくなり、インフルエンザウイルの増殖が抑制されるのです。このような作用から、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬と呼ばれています。

【臨床試験】

インフルエンザの患者さん約700人による国際共同試験が行われています。3つのグループに分かれ、第1のグループはこの薬を、第2のグループは同効薬のオセルタミビル(タミフル)を、第3のグループはプラセボ(にせ薬)を服用します。そして、患者日誌にもとづき、すべての症状(咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱、悪寒、筋肉・関節痛、疲労感)が軽快するまでの時間を比較するのです。

その結果、この薬を使用した第1のグループでは54時間(中央値)、オセルタミビルのグループも54時間、プラセボのグループでは80時間かかりました。プラセボに比べ明らかに罹病期間が短く、標準的に用いられているオセルタミビルと同等の有効性が確かめられたわけです。また、副作用の発現率はプラセボのグループと変わりなく、安全性についても特段の問題は認められませんでした。
特徴
  • 新しい作用機序をもつ抗インフルエンザウイルス薬です。キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬と呼ばれ、オセルタミビル(タミフル)に代表される既存のノイラミニダーゼ阻害薬とは効きかたが違います。既存薬がウイルスの細胞外への拡散を阻止するのに対し、この薬は細胞内での増殖を直接阻害します。ウイルス排出もより早期に抑制されます。
  • 2009年に流行した豚由来A型インフルエンザ(A/H1N1)をふくめ、A型およびB型インフルエンザウイルス感染症に適用可能です。既存薬耐性ウイルス、新型インフルエンザウイルスに対する有用性も期待できそうです。一方で、耐性ウイルスの発現率が オセルタミビルに比べて高く、12歳未満の子供で23%、12歳以上で10%と報告されています。治療上の影響など 今後の課題になるかもしれません。
  • 治療が簡便です。錠剤を1回分飲んで完了です。治療効果は既存薬とだいたい同じで、罹病期間が1〜2日短縮します。安全性が高く、これといった副作用もありません。
  • 予防投与が可能になりました。高齢、持病があるなど重症化リスクが高い人が対象です。
注意
【診察で】
  • 肝臓病など持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 注意事項について十分説明を受けてください。

【注意する人】

重い肝臓病のある人の使用実績は少ないです。このため慎重に用いられます。

【使用にあたり】
  • 1回飲んでおしまいです。1回分の服用量は、年齢や体重により違います。指示された錠数を飲んでください。
  • 大事なのは早期治療。薬をもらったら、すぐに飲んでください。症状の発現から2日以内が目安です。症状発現から48時間経過後に使用したケースにおいて、有効性を裏付けるデータは得られていません。
  • 予防投与は、家庭内感染を防ぐため、あるいは病院や高齢者施設で蔓延させないために行われます。重症化のリスクが高い高齢(65歳以上)または持病(糖尿病、心臓病、肺疾患など)のある人が対象です。感染症患者に接触後2日以内に服用しなければなりません。

【妊娠・授乳】
  • 動物実験で特段の催奇形性作用は認められていません。人においても危険性はそれほど高くないと考えられ、治療上の有益性が高いと判断されるなら 妊娠中でも使用可能です。ただし、使用実績が少なく、100%安全性が保証されるわけではありません。もし妊娠中に医師から服薬をすすめられたら、十分に説明を受け納得のうえで使用しましょう。
  • 授乳は避けてください。母乳中への薬が移行する可能性があります。

【食生活】

インフルエンザ罹患時の異常行動が報告されています。原因は不明で、抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無にかかわらず発現する可能性があります。頻度はまれなものの、とくに転落事故につながるような重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年の男性に多く、また発熱から2日間以内の発現例が多いとされます。保護者の方は、発熱から少なくとも2日間は、子供が1人にならないように配慮してください。また、就寝中を含め、例えば、以下のような具体策を講じてください。万が一の住居外への飛び出しや転落事故を防ぐためです。

  • 玄関や全ての部屋の窓を確実に施錠する(内鍵、チェーンロック、補助鍵がある場合は、その活用を含む)
  • 窓に格子のある部屋があれば、その部屋で寝かせる
  • ベランダに面していない部屋で寝かせる
  • 一戸建てなら、できる限り1階で寝かせる

【備考】
  • 対症療法的に、カゼ薬、解熱鎮痛薬、咳止め、痰切り薬なども処方されます。ただし、アスピリンやボルタレン、ポンタールなど強い解熱鎮痛薬は、子供のインフルエンザには原則禁止です(脳症との因果関係)。そのほか、肺炎など細菌による二次感染時やその予防に抗生物質も処方されます。
  • 「予防にまさる治療はない」といわれるのがインフルエンザ。やはりワクチンの予防接種が基本です。とくにお年寄りや、持病で体の弱っている人は重症化しやすいので、冬のシーズンに入る前にかかりつけの医師と相談するとよいでしょう。
  • インフルエンザが流行してきたら、お年寄りや体の弱い人は、できるだけ人混みは避けたほうがよいでしょう。外出時のマスク、帰宅時のうがいや手洗いも忘れずに。
  • ふだん健康な若い人は、重症化することなく自然に治るものです(2009年流行のインフルエンザにおいては、ごく一部重症例が報告されています)。抗ウイルス薬の必要性が高いのはハイリスク感染者および一部の重症例であり、大半の軽症例では投与することなく治癒がみこまれます。必ずしも薬を必要としません。休養と睡眠、そして十分な水分と栄養をとることが大切です。
  • 重症化の徴候は、呼吸困難や頻呼吸・促迫呼吸(息切れ、息苦しさ、荒い呼吸)、胸の痛み、蒼白、血痰・着色痰、精神変調、3日以上続く高熱・・などです。子供の脳症では、意味不明な言動が前ぶれとなることがあり、さらに意識がうすれ、けいれんが長びきます。症状の進行が非常に早いことがありますので、このような場合は直ちに適切な治療を受ける必要があります。
効能
【効能】
<錠20mg、顆粒2%分包>

A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防
<錠10mg>

A型又はB型インフルエンザウイルス感染症
<参考>
  • 効能:治療→錠10mg、錠20mg、顆粒2%分包
  • 効能:予防→錠20mg、顆粒2%分包

【注意】
<効能共通>
  • 本剤は細菌感染症には効果がない。
  • 小児に対する投与については、低年齢になるほど低感受性株の出現頻度が高くなる傾向が示されていることから、学会等から提唱されている最新のガイドライン等を参照し、慎重に検討すること。
<治療>

抗ウイルス薬の投与がA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の全ての患者に対しては必須ではないことを踏まえ、本剤の投与の必要性を慎重に検討すること。
<予防>
  • 原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者のうち、インフルエンザウイルス感染症罹患時に、重症化のリスクが高いと判断される者※を対象とする。

    ※高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿病等)等
  • 小児に対する投与については、流行ウイルスの薬剤耐性情報に留意し、他の抗インフルエンザウイルス薬の使用を考慮した上で、慎重に検討すること。
  • 本剤のB型インフルエンザウイルス感染症に対する予防投与について、有効性を示すデータは限られていることを考慮した上で、本剤の投与を慎重に検討すること。
用法

【用法】

通常、以下の用量を単回経口投与する。

【治療】
<成人及び12歳以上の小児>
  • 80kg以上..20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)
  • 80kg未満..20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
<12歳未満の小児>
  • 40kg以上..20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
  • 20kg以上40kg未満..20mg錠1錠又は顆粒2包(バロキサビル マルボキシルとして20mg)
  • 10kg以上20kg未満..10mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして10mg)

【予防】
<成人及び12歳以上の小児>
  • 80kg以上..20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)
  • 80kg未満..20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
<12歳未満の小児>
  • 40kg以上..20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
  • 20kg以上40kg未満..20mg錠1錠又は顆粒2包(バロキサビル マルボキシルとして20mg)

【注意】
<効能共通>

10mg錠と20mg錠又は顆粒2%分包の生物学的同等性は示されていないため、10mgを投与する際には顆粒2%分包を使用しないこと。また、20mg以上の用量を投与する際には、10mg錠を使用しないこと。
<治療>

本剤の投与は、症状発現後、可能な限り速やかに開始することが望ましい。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
<予防>
  • インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始すること。接触後48時間経過後に投与を開始した場合における有効性を裏付けるデータは得られていない。
  • 本剤を服用した日から10日を超えた期間のインフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は確認されていない。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 出血が報告されています。まれなケースと考えられますが、血便、鼻出血、血尿など出血がみられたら、医師に連絡してください。服薬数日後にあらわれることもあるようです。

なお、インフルエンザの患者さんにおいて、異常行動などの精神・神経症状が報告されています。変なことを言う、突然笑う、泣きだす、怯える、さらには 襲われるような感覚から外に飛び出し走りだす、興奮して窓から飛び降りようとする・・といった症状です。頻度はきわめてまれで、薬との関連性は不明です。念のため注意してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
  • 異常行動..変なことを言う、突然笑う、泣き出す、興奮する、部屋の中を歩き回る、外へ出て走り出す、窓から飛び降りようとする。
  • 大腸炎..激しい腹痛、頻回な下痢、血便、発熱。
  • 出血..血便、鼻出血、血尿、皮下出血、歯肉出血

【その他】
  • 下痢
  • 肝機能値の異常
  • 発疹、かゆみ

概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。