概説 |
C型慢性肝炎の2〜6型を治療するお薬です。リバビリン(レベトール、コペガス)と併用し、原因ウイルスを排除します。 |
作用 | 
- 【働き】

- 肝臓病の多くはウイルス性です。とくにB型とC型ウイルスによる慢性肝炎が問題となります。慢性肝炎になると、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、長いあいだに一部が肝硬変へと進み、さらに肝臓がんに至ることもあります。この流れを絶つこと、あるいは遅らせるための治療が重要です。B型とC型では治療方針が異なり、さらにC型は大きく遺伝子1型と2型に分かれそれぞれに適した治療がおこなわれます。
このお薬は、C型肝炎ウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬です。おもに遺伝子2型に用いられますが、1型を除く3〜6型のC型慢性肝炎にも適応します。治療にあたっては、単独ではなく、別の抗ウイルス薬のリバビリン(レベトール、コペガス)といっしょに用います。併用により、抗ウイルス活性が相加的・相乗的に強まり、C型肝炎ウイルスを排除できる可能性が高まるのです。実際の臨床試験でも、この2剤併用療法により90%以上の人でウイルスが消滅し治癒にいたりました。

- 【薬理】

- C型肝炎ウイルス(HCV)の複製にかかわる酵素の一種‘NS5Bポリメラーゼ’を阻害することにより、抗ウイルス作用を発揮します。このような作用機序から「NS5Bポリメラーゼ阻害薬」と呼ばれることがあります。

- 【臨床試験】

- この薬の有効性と安全性を検証する試験が行われています。参加したのは、2型のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変の患者さん140人。このうち83人は未治療、57人は治療経験のある人です。有効性の判定は、この薬とリバビリンによる2剤併用療法3カ月後の持続的ウイルス陰性化率(SVR12率)でおこないます。ウイルスの陰性化は、ウイルスが排除されC型肝炎ウイルス感染症が治癒したとみなされます。
その結果、患者さん全体の陰性化率は96.4%(135/140人)、未治療の人で97.6%(81/83人)、既治療の人で94.7%(54/57人)でした。残念ながら、従来のインターフェロン療法との比較試験ではないのですが、C型肝炎ウイルスの自然排除は非常にまれなことから、90%以上という高いウイルス陰性化率は この薬の有効性を示す十分な証拠となるわけです。安全性についても、リバビリンによる貧血を除き、特段に重い副作用はみられませんでした。
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特徴 |
- C型慢性肝炎のうち遺伝子2型(セログループ2)を適応症とする新規抗ウイルス薬として開発されました。画期的なのは、副作用が多いインターフェロンの注射を必要とせず、飲み薬だけで2型のC型慢性肝炎の治療が可能なことです。1日1回1錠ですみ、服用期間も3カ月間と短いです。ただし単独ではよい効果が望めません。作用増強のため、別系統の抗ウイルス薬リバビリン(レベトール、コペガス)と必ず併用しなければなりません。
- 治療歴を問わず、すべての2型のC型慢性肝炎とC型代償性肝硬変に使用可能です。さらに少数例となる遺伝子3〜6型に対する適応も拡大されました。1型には使いません。
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注意 |
 【診察で】
- 妊娠出産の予定のある女性、あるいはパートナーにその予定のある男性は、医師に申し出てください。
- 心臓病や貧血、腎臓病など持病のある人は医師に伝えてください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。飲み合わせの悪い薬があります。
- 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。併用薬のリバビリンをふくめ薬の性質をよく理解しておくことが大切です。
 【注意する人】
- 妊婦中または妊娠の可能性のある女性は使用できません。併用薬のリバビリンに強い催奇形性の心配があるためです。
- 腎臓が弱っていると薬の排泄が遅れ、血中濃度が上昇しやすいです。このため、腎機能が著しく低下している場合は使用できません。
- 心臓病や貧血のある人など、病状によっては使用できないことがあります。併用薬のリバビリンにより、病状が悪化するおそれがあるためです。高血圧や腎臓病、糖尿病、痛風のある人も慎重に用いるようにします。
- B型肝炎ウイルスに重複感染している人は、その再活性化に注意が必要です。
- 高齢の人は肝臓がんになりやすいので、抗ウイルス薬による治療を積極的におこないウイルスの排除をめざします。ただし、貧血などの副作用がでやすく、また重症化しやすいので注意深く治療をすすめる必要があります。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせによっては、この薬の作用が減弱し、治療の失敗につながります。使用中の薬は必ず医師に報告し、また別の病院で診察を受けるときも この薬を飲んでいることを伝えてください。
作用減弱により禁止されるのは、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)とフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、それと健康食品のセイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)です。MAC症などに用いる抗酸菌症治療薬のリファブチン(ミコブティン)と抗けいれん薬のフェノバルビタール(フェノバール)は禁止ではありませんが、同様の理由で注意が必要です。
 【使用にあたり】
- 通常、1日1回、1回に1錠を食後に飲みます。時間は医師の指示どおりにしてください。服用期間は2型で3カ月間(12週間)、3〜6型は6カ月間(24週間)になります。
- リバビリン(レベトール、コペガス)と必ず併用します。リバビリンは、体重や腎臓の働き具合によって飲む量が違いますから、決められた通りにしてください。
- 飲み忘れなく毎日規則正しく飲み続けることが大事です。もし飲み忘れた場合は、気が付いたときに直ちに服用し、翌日はいつも通りに服用してください。翌日に気付き、次に服用する時間が近い場合は、1回分は抜かし次の通常の服用時間に1回分を服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。

- 【検査】

- 定期的に検査を受ける必要があります。とくに重要なのが血液検査と肝機能検査です。貧血の有無、ヘモグロビン量、ビリルビン値などに異常がないか調べます。

- 【妊娠・授乳】

- 併用薬のリバビリンに、強い催奇形性作用があることが分かっています。このため、妊娠する可能性のある女性、あるいはパートナーに妊娠の可能性のある男性は、治療中および治療終了後6カ月間は避妊をしなければなりません。詳細については、リバビリン製剤のコペガスまたはレベトールを参照ください。

- 【食生活】

- この薬の作用に影響する健康食品のセイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)の飲食は避けてください。
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効能 |
次のいずれかのC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
- セログループ2(ジェノタイプ2)の患者
- セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しない患者
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用法 |
<セログループ2(ジェノタイプ2)の場合>リバビリンとの併用において、通常、成人はソホスブビルとして400mgを1日1回、12週間経口服用する。 <セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しない場合>リバビリンとの併用において、通常、成人はソホスブビルとして400mgを1日1回、24週間経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
人によっては貧血、頭痛、倦怠感、吐き気などがあらわれます。多くは軽度ないし中等度で、やめるほど重症化することはまずないと思います。発現頻度はまれですが、重い副作用として、重度の高血圧と脳卒中が報告されています。念のため注意してください。
貧血は併用薬のリバビリンによるものです。疲労感やめまい、息切れ、動悸などの症状に注意しましょう。動悸がひどいと心臓に負担がかかりますので、もともと心臓の悪い人は要注意です。ヘモグロビンの検査で、貧血の兆候があるときはリバビリンを減量し、それ以上悪化しないようにします。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い貧血..疲れやすい、息切れ、動悸、頻脈、めまい、顔色が悪い。
- 重度の高血圧..著しい血圧の上昇。
- 脳卒中..片側の手足のまひ・しびれ、口がゆがむ、うまく話せない、視野が欠ける、二重に見える、考えがまとまらない、ふらつく、激しい頭痛
 【その他】
- 頭痛、めまい、倦怠感、疲労
- 吐き気、腹部不快感
- かゆみ、発疹
- ヘモグロビン減少、高ビリルビン血症
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