概説 |
エイズウイルスの増殖を抑えるお薬です。エイズの治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- エイズは、エイズウイルスの感染により起こる病気です。エイズウイルスは血液や精液を介してうつります。体に入ったエイズウイルスは、免疫系の細胞(白血球の一種のCD4リンパ球)を破壊しながら、徐々に増殖していきます。そして、体の免疫力がしだいに低下し、数年から十数年後に発症します。重い感染症にかかったり、リンパ腫などの悪性腫瘍に侵されやすくなり命にかかわることもあるのです。
このお薬は、エイズウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬です。非ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬の部類で、ウイルスの遺伝子の複製を妨げる作用があります。ウイルスが減るとともに、免疫力が回復し、病状が改善します。また、エイズの発症や進行を遅らせ、長生きにもつながります。ただし、エイズウイルスを完全に死滅させることは困難です。したがって、生涯にわたり治療を続けなければなりません。
- ※エイズ:後天性免疫不全症候群
- ※エイズウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

- 【薬理】

- エイズウイルスの遺伝子RNAをDNAに逆転写する酵素と結合し、その働きを阻害します。これにより遺伝子の複製ができなくなり、ウイルスの増殖が抑制されるのです。このような作用から「逆転写酵素阻害薬」と呼ばれています。

- 【臨床試験】

- この薬の有効性と安全性について、既存の類似薬のエファビレンツ(ストックリン)と比較する試験が行われています。参加したのは抗ウイルス薬の使用経験のない患者さん1368人、どちらを飲むかはクジ引きで半々に分かれるようにし、併用薬は2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬とします。効果判定の主要評価項目は1年後のウイルス量が検出限界以下(50コピー/mL未満)になった人の割合です。
その結果、ウイルス量検出限界以下になった人の割合は、この薬を飲んでいた人達で84%(575/686人)、エファビレンツの人達が82%(560/682人)でした。両剤に明らかな差はなく、標準薬のエファビレンツに劣らない治療効果が確認できたわけです。ただし、高ウイルス量(10万コピー/mL以上)の患者さんにおいては、エファビレンツよりも効き目が落ちる傾向がみられました。副作用については、めまいや悪夢、発疹などが少なめです。そのような副作用で中止した人は この薬で14人、エファビレンツで46人でした。
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特徴 |
- 非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)です。略称はRPV。ヌクレオシド系とは化学構造が異なり、抗ウイルス効果がより強力です。比較的安全性が高く、また小さな錠剤を1日1回1錠で済むなど利便性も高いです。このような優れた特性から、初回治療もしくは代替治療における主要薬(キードラッグ)として広く使用されるようになりました。
- 類似薬に抵抗力をもつ耐性ウイルスに効果が期待できる一方、やはり耐性変異を生じる可能性があり効き目が落ちることがあります。耐性は単独投与で生じやすいので、必ず他の抗ウイルス薬と併用するようにします。
- 有効性は同類薬のエファビレンツ(ストックリン)とほぼ同等です。ただし、ウイルス量が相当に多い場合、あるいはCD4リンパ球が減少している症例において効果が劣る傾向が示されています。副作用による中断はエファビレンツよりも少なく忍容性に勝ります。
- 2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬との併用治療が標準的です。推奨される併用薬は、テノホビル(ビリアード)とエムトリシタビン(エムトリバ)またはその配合剤のツルバダ(TDF/FTC)、アバカビル(ザイアジェン)とラミブジン(エピビル)またはその配合剤のエプジコム(ABC/3TC)、あるいはジドブジン(レトロビル)とラミブジン(エピビル)またはその配合剤のコンビビル(AZT/3TC)などです。なお、リルピビリン(この薬)を含有する3薬配合剤としてコムプレラ配合錠(RPV+TDF/FTC)が販売されています。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
- 別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師に報告しておきましょう。
- 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
- 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告してください。

- 【注意する人】

- 心臓病や低カリウム血症のある人は、不整脈の発現に注意するなど慎重に用いるようにします。また、肝臓病のある人または既往のある人は、定期的に肝機能検査を行うなど肝障害の発現・悪化に注意が必要です。
- 注意が必要なケース..心臓病や低カリウム血症などで不整脈を起こしやすい人、肝臓病(B型、C型肝炎等)、肝臓病の既往のある人、高齢の人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、この薬の効果が減弱し、治療の失敗につながります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
- 飲み合わせが禁止されている薬剤に、抗結核薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)やフェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)などがあります。さらにセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品も避けなければなりません。これららとの併用により、この薬の血中濃度が低下し効果が減弱するおそれがあるためです。
- 胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬(オメプラール、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブ、キャブピリン)の併用は避けなければなりません。胃酸低下によりこの薬の吸収が悪くなるためです。H2受容体拮抗薬(タガメット、ザンタック、ガスター、アルタット、アシノン、プロテカジン)や制酸薬は禁止ではないですが、可能な限り間隔をあけて服用することが望ましいです。
- 抗酸菌症治療薬のリファブチン(ミコブティン)と併用する場合は、この薬の増量が必要です。ほかにも、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)やエリスロマイシン(エリスロシン)など注意が必要な薬がたくさんありますから、飲み合わせについては医師の指示どおりにしてください。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。規則正しい服用は、薬の血中濃度を一定に保ち、ウイルスに増殖する“すき”を与えないために重要です。飲み忘れにも十分注意しましょう。抗エイズ薬の服薬率が95%を割ると、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現が多くなるという報告があります。
- 通常、1日1回、1回に1錠(25mg)を食事中または食直後に飲みます。空腹時ですと吸収が悪くなりますので避けてください。
- 別系統の抗ウイルス薬との併用療法を長期(生涯)にわたり続けなければなりません。なお、カボテグラビル(ボカブリア)と併用する場合は、1〜2ヵ月間に限ります。同成分の注射剤による併用療法を優先し、そのための経口導入または一時的な代替投与とするためです。
- もし、飲み忘れた場合、12時間以内であれば食事とともに直ちに服用し、翌日はいつも通りに服用してください。12時間を超えたときは当日分は抜かし、次の通常の服用時間に1回分を飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
- 自分だけの判断で量を変えたり、飲むのをやめてはいけません。不用意な減量や中断は、薬の効き目を悪くし治療を困難にします。

- 【検査】

- 効果判定のため、ウイルス量の低下と免疫細胞(CD4リンパ球)の増加を調べます。また、副作用をチェックするため、いろいろな検査を実施します。
 【妊娠授乳】
- 妊娠中の服用については、医師とよく相談してください。この薬を飲むことで赤ちゃんの感染リスクを減らせるかもしれません。なお、妊娠中期以降に服用したとき、出産後と比較し、血中濃度が低下する可能性があります。
- 妊娠中に推奨されるのは、主要薬はプロテアーゼ阻害薬のロピナビル・リトナビル配合剤(カレトラ)、基礎薬としてヌクレオシド系のジドブジン・ラミブジン配合剤(コンビビル)の組み合わせです。
- 授乳は避けてください。乳汁中に薬が移行すると考えられます。また、母乳中のエイズウイルスにより赤ちゃんが感染するおそれがあります。

- 【食生活】

- エイズウイルスの感染力は非常に弱く、日常の社会的接触であれば感染することはありません。ただし、性的接触により感染の可能性があります。この薬を飲み始めても、その点には留意が必要です。
 【備考】
- エイズの薬は、大きく、逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬の3系統に分かれます。逆転写酵素阻害薬は、さらにヌクレオシド系と非ヌクレオシド系(この薬)に分かれます。作用増強と耐性回避のため、これらを組み合わせる多剤併用療法が一般的です。現在、初回治療として推奨されるのは、2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬をベースドラッグとし、これにキードラッグの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬と低用量リトナビル、またはインテグラーゼ阻害薬のいずれかを加える3剤ないし4剤併用療法です。このような多剤併用療法によりエイズの予後はたいへん改善し、より長生きできるようになりました。
- 免疫力が低下しエイズを発症すると、別のいろいろな感染症にかかりやすくなります。サイトメガロウイルス、カンジダ、ニューモシスチス(カリニ)・・ふつうなら感染しにくい微生物にまで侵されてしまうのです。このような2次感染症に対しては、抗菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬などで強力な治療をおこないます。
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効能 |
HIV-1感染症
- 注意1:治療経験のないHIV感染患者に使用すること。
- 注意2:本剤による治療にあたっては、可能な場合には薬剤耐性検査(遺伝子型解析あるいは表現型解析)を参考にすること。
- 注意3:小児HIV感染症に対しては、本剤投与による有効性、安全性が確立していない。
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用法 |
通常、成人はリルピビリンとして1回25mgを1日1回食事中又は食直後に経口服用する。服用に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること。
- ※注意:本剤とリファブチンを併用したとき、本剤の血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれがある。本剤とリファブチンを併用する場合は、本剤を50mg 1日1回に増量すること。なお、リファブチンの併用を中止した場合は、本剤を25mg 1日1回に減量すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
エイズの薬としては比較的安全性が高く、副作用も少ないほうです。飲み始めにあらわれるのが、めまい、頭痛、不眠、異常な夢など精神・神経系の症状です。これらはしだいに軽減することが多く、軽い場合は治療を優先しなければなりません。
吐き気や腹痛など胃腸症状、発疹など皮膚症状もみられます。重症化することはまずありませんが、発疹が全身に広がるようでしたら、すぐに受診するようにしてください。
そのほか、免疫機能の回復に伴う免疫再構築炎症反応症候群として 体にさまざまな異変を生じる可能性があります。いつもと違う症状があらわれたら、どのようなことでも医師に報告してください。
- 頭痛、めまい、けん怠感
- 変な夢・悪い夢を見る、気分が落ち込む、不眠、眠気
- 吐き気、吐く、食欲不振、腹痛、下痢
- 発疹
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