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成分(一般名) テノホビル ジソプロキシル フマル酸塩
製品例 テノゼット錠300mg、ビリアード錠300mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 抗ウイルス剤/逆転写酵素阻害剤(ヌ系)/抗ウイルス化学療法剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 B型肝炎ウイルスとエイズウイルスの増殖をおさえるお薬です。B型肝炎、B型肝硬変またはエイズの治療に用います。
作用

【働き-1】

肝臓病のおおよそ9割はウイルス性です。とくに、B型とC型ウイルス(HBV、HCV)による慢性肝炎が問題となります。慢性肝炎になると、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、長いあいだに一部が肝硬変へとすすみ、さらには肝臓がんに至ります。この流れを絶つことが治療の最大の目標です。B型ではその指標としてウイルス抗原(HBs抗原)の消失をめざします。

このお薬は、B型肝炎ウイルスに有効な抗ウイルス薬です。ウイルス遺伝子の複製過程を阻害し、ウイルスの増殖を強力におさえます。抗ウイルス療法が適応されるのは、ウイルス量(HBV DNA量)が多く、肝機能値(ALT値)が思わしくないB型慢性肝疾患に対してです。中高年の慢性肝炎に用ることが多いですが、若い人でも進行が早く沈静化の見通しがなければ処方対象になります。治療により、ウイルスが減少し肝機能値が正常化すれば、肝硬変や肝臓がんへの進展を止めることができるのです。

【働き-2】

エイズは、エイズウイルス(HIV)の感染により起こる病気です。エイズウイルスは血液や精液を介してうつります。体に入ったエイズウイルスは、免疫系の細胞(白血球の一種のCD4リンパ球)を破壊しながら、徐々に増殖していきます。そして、体の免疫力がしだいに低下し、数年から十数年後に発症します。重い感染症にかかったり、リンパ腫などの悪性腫瘍に侵されやすくなり命にかかわることもあるのです。

このお薬は、エイズウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬です。ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬の部類で、ウイルスの遺伝子の複製を妨げる作用があります。ウイルスが減るとともに、免疫力が回復し、病状が改善します。また、エイズの発症や進行を遅らせ、長生きにもつながります。ただし、エイズウイルスを完全に死滅させることは困難です。したがって、生涯にわたり治療を続けなければなりません。

  • ※エイズ:後天性免疫不全症候群(AIDS)
  • ※エイズウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

【薬理】

ウイルスの遺伝子RNAをDNAに逆転写する酵素の働きを阻害します。これにより遺伝子の複製ができなくなり、ウイルスの増殖が抑制されるのです。このような作用から「逆転写酵素阻害薬」と呼ばれています。

【臨床試験】

この薬のB型肝炎ウイルスに対する有効性を調べるため、既存の抗ウイルス薬のエンテカビル(バラクルード)と比較する臨床試験がおこなわれています。参加したのは、治療歴のないB型慢性肝疾患の患者さん159人、このうち109人はこの薬を、別の56人はエンテカビルを服用します。試験の期間は1年間。効果の判定は、血液中のB型肝炎ウイルスの減少量(log copy/mL)でおこないます。また、副次的にウイルスの陰性化率(2.1 log copy/mL未満)や肝機能値(ALT)の正常化率についても調べます。

その結果、この薬を飲んでいた人達のウイルス量は平均して約4.9(7.00→2.16)減少、エンテカビルを飲んでいた人達も約4.9(7.26→2.33)減少しました。減少量に差がなく、この薬の効果が標準薬のエンテカビルと同等と確かめられたわけです。また、副次評価項目のウイルスの陰性化率は、この薬で77%(84/109人)、エンテカビルで66%(37/56人)、肝機能(ALT)の正常化率は、この薬で75%、エンテカビルで85%でした。これらについても大きな違いがなく、治療歴のないB型慢性肝疾患に対する有効性が示されたのです。なお、他剤効果不良の患者さんを対象とした別の臨床試験でも、62%というウイルス陰性化率が示されています。
特徴
  • 有効成分はテノホビル(略号TDF)。B型肝炎ウイルスとエイズウイルスに有効な抗ウイルス薬です。化学構造的に核酸系(ヌクレオシド系)になり、核酸アナログ(核酸類似物質)というカテゴリーに分類されます。作用機序からは核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)ということになります。
  • 当初はエイズ治療薬(ビリアード錠)として承認され、その後、B型肝炎ウイルスに対する有効性からB型慢性肝疾患治療薬(テノゼット錠)としても開発されました。どちらに対しても治療効果に優れ、また副作用が少なく安全性が高いことから、両疾患における主要薬として位置付けられます。
  • B型慢性肝疾患(B型肝炎・肝硬変)においては、標準的な核酸アナログ製剤のエンテカビル(バラクルード)と同等の有効性があり、さらに他の同系薬に抵抗性または無効例に対しても一定の効果が期待できます。現在まで耐性ウイルスがみられず、その点も優れた特性です。現在、エンテカビルとならび核酸アナログの第一選択薬として処方されるようになりました。
  • 他のエイズ治療薬のような脂質代謝への悪影響がほとんどなく、耐性エイズウイルスにも一定の効果が期待できます。1日1回の服用で済むなど利便性も高いことから、エイズ初回治療における多剤併用療法の基礎薬(ベースドラッグ、バックボーン)として汎用されるようになりました。
  • エイズ治療薬として単独では弱いので、同系の1種類を加えて基礎薬(ベースドラッグ、バックボーン)とし、さらに別系統の主要薬(キードラッグ)を組み合わせる3剤併用療法により強力な効果が得られます。たとえば、この薬(TDF)と、同系のエムトリシタビン(FTC)(エムトリバ)、それと非核酸系逆転写酵素阻害薬のエファビレンツ(EFV)(ストックリン)による3剤併用療法です。最近は、ツルバダ錠(TDF/FTC)など利便性のよい配合剤が広く用いられるようになりました。非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のかわりに、プロテアーゼ阻害薬またはインテグラーゼ阻害薬を用いることも可能です。
注意
【診察で】
  • 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
  • 使用中の薬を医師に教えてください。
  • 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
  • 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告してください。

【注意する人】
  • 腎臓の働きが落ちていると、この薬の排泄が遅れ、高い血中濃度が持続します。腎臓が悪い人は、服用間隔を延ばすなど慎重に用います。
  • 非代償性肝硬変への使用実績は少ないです。また、核酸アナログによる乳酸アシドーシスの報告があるため、注意深い経過観察が必要です。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

一部の医薬品と相互作用を起こす可能性があります。飲み合わせによっては、この薬の作用が強まり、副作用がでやすくなります。

  • 同一成分を含有する別の抗ウイルス薬と重複しないようにします。ベムリディ、ツルバダ、スタリビルド、デシコビ、ゲンボイヤ、コムプレラ、ベムリディなどがこれにあたります。
  • 類似薬のジダノシン(ヴァイデックス)の副作用を強めるおそれがあります。逆に、アタザナビル(レイアタッツ)の作用を弱める可能性があります。
  • 他の抗ウイルス薬のアシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)、ガンシクロビル(デノシン)などとの併用により、副作用が強まるおそれがあります。

【使用にあたり】
  • 決められた飲み方を守ってください。規則正しい服用は、薬の血中濃度を一定に保ち、ウイルスに増殖する“すき”を与えないために重要です。飲み忘れにも十分注意しましょう。
  • 通常、1日1回、1回に1錠(300mg)服用します。食事と関係なく飲めますが、決められた時間にしてください。
  • 飲み忘れた場合、気づいたときに直ちに服用してください。ただし、翌日に気づき次の服用時間が近ければ、その分は抜かし次の通常の時間に1回分を飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
  • B型肝炎では単剤による治療が基本ですが、他剤耐性ウイルスに対しては他の核酸アナログ製剤との併用療法も試みられます。エイズでは単剤ではなく、3剤併用療法をおこないます。
  • ウイルスを完全に排除するのは困難です。このため、B型肝炎においては、服用期間は長めになります。安易に中断すると、急激に病状が悪化するおそれがありますから、自分だけの判断でやめてはいけません。B型肝炎の治療終了時期の判断は、専門医により慎重に見極める必要があります。病状があまり改善しない場合や進行した肝硬変では、基本的には生涯にわたり治療を続けることになります。指示された期間、根気よく続けましょう。
  • エイズでは生涯にわたり抗ウイルス薬を続ける必要があります。自己判断で量を変えたり、飲むのをやめてはいけません。不用意な減量や中断は、薬の効き目を悪くし、治療を困難にします。抗エイズウイルス薬の服薬率が95%を割ると、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現が多くなるという報告があります。

【検査】
  • B型肝炎では効果判定のため、肝機能値(ALT)やウイルス量、HBe抗原などを調べます。必要に応じ、血中クレアチニンや血中リンなど腎機能にかかわる検査をおこないます。
  • エイズでは効果判定のため、ウイルス量の減少と免疫細胞(CD4)の増加を調べます。さらに、副作用をチェックするため、いろいろな検査を受けなければなりません。とくに、肝臓と腎臓の検査が重要です。
  • 長期服用時は必要に応じ骨密度検査を実施します。

【妊娠・授乳】
  • 妊娠中の服用については、医師とよく相談してください。エイズの治療にあたっては、この薬を飲むことで赤ちゃんの感染リスクを減らせる可能性があります。はっきりしたことは分かっていませんが、他の同類薬に比べ胎児への安全性が比較的高いのではと推定されています(FDA薬剤胎児危険度分類基準:カテゴリーB)。なお、エイズの治療で妊娠中に推奨されるのは、主要薬はプロテアーゼ阻害薬のロピナビル・リトナビル配合剤(カレトラ)、基礎薬としてヌクレオシド系のジドブジン・ラミブジン配合剤(コンビビル)の組み合わせです。
  • 授乳は避けてください。乳汁中に薬が移行すると考えられます。また、母乳中のエイズウイルスにより赤ちゃんが感染するおそれがあります。

【食生活】

B型肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)の感染力は概して弱く、ふつうの社会的な接触であれば感染することはありません。ただし、血液を介したり、性的接触により感染するおそれがあります。この薬を飲んでいたとしても、その点は同様です。

【備考】
  • B型肝炎の治療薬は2種類に大別されます。この薬をふくむ核酸アナログ製剤とインターフェロン製剤です。どちらかを、治療歴、抗原の状態、ウイルス量、線維化進展度、年齢などを考慮し、適切に使いわけます。薬が不要になることを目指す2種併用療法(シークエンシャル療法)も試みられます。
  • 核酸アナログ製剤でB型肝炎に保険適用となるのは、ラミブジン(ゼフィックス)、アデホビル(ヘプセラ)、エンテカビル(バラクルード)、テノホビル ジソプロキシル (テノゼット:この薬)、テノホビル アラフェナミド(ベムリディ)の5製剤です。最初に発売されたラミブジンは耐性ウイルスが発現しやすいのが欠点です。薬が効かない変異ウイルス(YMDD)の増殖により、よくなった肝機能値が再び悪化してしまうのです。アデホビルは、そのような変異ウイルスにも有効で、変異ウイルスの出現時にラミブジンと併用するようにします。エンテカビルとテノホビルは、耐性ウイルスを生じにくく治療効果にも優れるため、核酸アナログ製剤として第一選択されるようになりました。
  • エイズの薬は、かつては逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼ阻害薬の2系統しかなく、薬の選択肢が限られ治療成績もよくありませんでした。その後、次々と新薬が開発され、現在は5系統から選択可能です。現在、初回治療として推奨されるのは、2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(この薬)をベースドラッグとして、これにキードラッグの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬と低用量リトナビル、またはインテグラーゼ阻害薬のいずれかを加える3剤ないし4剤併用療法です。このような多剤併用療法によりエイズの予後はたいへん改善し、より長生きできるようになりました。
  • 免疫力が低下しエイズを発症すると、別のいろいろな感染症にかかりやすくなります。サイトメガロウイルス、カンジダ、ニューモシスチス(カリニ)・・ふつうなら感染しにくい微生物にまで侵されてしまうのです。このような2次感染症に対しては、抗菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬などで強力な治療をおこないます。
効能

【効能A(テノゼット)】

B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患におけるB型肝炎ウイルスの増殖抑制

【効能B(ビリアード)】

HIV-1感染症
用法

【効能A(テノゼット)】

通常、成人はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩として1回300mgを1日1回経口服用する。

【効能B(ビリアード)】

通常、成人はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩として1回300mg(テノホビル ジソプロキシルとして245mg)を1日1回経口服用する。なお、服用に際しては必ず他の抗HIV薬と併用すること。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 比較的多いのは、吐き気や嘔吐、下痢や腹痛などの胃腸症状です。重い副作用は多くありませんが、まれに急性腎不全など重い腎機能障害や乳酸アシドーシスを起こすことがあります。とくに、もともとむ腎臓の悪い人は要注意です。

また、多くはありませんが、免疫機能の回復に伴う免疫再構築症候群が報告されています。炎症反応の発現により、体にさまざまな異変を生じる可能性があります。いつもと違う症状があらわれたら どのようなことでも医師に報告してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
  • 乳酸アシドーシス・肝腫大(脂肪肝)..吐き気、吐く、腹痛、下痢、けん怠感、息苦しい、息が荒い、筋肉痛、手足の震え・脱力、歩けない、動悸、急激な体重減少、意識の低下、右上腹部の張り・圧迫感。
  • 膵炎..吐き気、吐く、上腹部〜背中の激しい痛み。

【その他】
  • 吐き気、吐く、食欲不振、消化不良、下痢、腹痛
  • 頭痛、めまい、けん怠感
  • 高脂血症、高トリグリセリド血症
  • 低カリウム血症、低リン血症
  • クレアチニン増加、肝機能検査値異常
  • 骨密度減少(腰椎、大腿骨)、骨軟化症
  • 発疹、かゆみ

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。