概説 |
胃のなかのピロリ菌を除菌するお薬です。ピロリ菌が原因の胃炎や胃潰瘍などに用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 胃炎や胃潰瘍の多くは、ヘリコバクター・ピロリという細菌が第一の原因です。さらに、胃がんなどいくつかの病気についてもピロリ菌との関連性が指摘されています。このお薬は、抗生物質、抗原虫・抗菌薬、胃酸分泌抑制薬の3剤が1セットになっています。これらをいっしょに飲むことで、胃のなかのピロリ菌が死滅し、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発予防につながるのです。ピロリ菌 除菌療法により、難治な消化性潰瘍の完治が可能になりました。
- ランソプラゾール(タケプロンカプセル30):胃酸分泌抑制薬(PPI)
- アモキシシリン(アモリンカプセル250):ペニシリン系抗生物質
- メトロニダゾール(フラジール内服錠250mg):抗原虫・抗菌薬(抗トリコモナス薬)

- 【薬理】

- ペニシリン系抗生物質のアモキシシリンはピロリ菌に対し殺菌的に作用します。メトロニダゾールは作用機序が異なり、アモキシシリンとの併用により抗菌力の増強が見込めます。ランソプラゾールを加えるのは、胃酸を抑制し抗菌作用をいっそう高めるためです。
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特徴 |
- ヘリコバクター・ピロリ二次除菌用の3剤組み合わせ製剤です。別々に処方されていた薬剤を1シートにパックしてあるので、飲み間違いや飲み忘れを防ぐことができ利便性が向上します。胃酸分泌抑制薬(PPI)として、ランソプラゾール(タケプロン)が採用されています。
- メトロニダゾールを含むこの組み合わせは二次除菌用です。通常、一次除菌療法(PPI+アモキシシリン+クラリスロマイシン)の不成功例に適用します。一次除菌における耐性菌対策として、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えることにより80〜90%の割合で除菌に成功します。
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注意 |
 【診察で】
- アレルギーを起こしやすい人は、必ず医師に伝えておきましょう。
- 今までに薬を飲んで発疹などアレルギー症状を起こしたことのある人は、その薬の名前を医師に教えてください。
- 喘息、じん麻疹、腎臓病など持病のある人は、医師に伝えてください。服用中の薬も報告しておきましょう。
- 妊娠中、もしくはその可能性のある人は医師に伝えてださい。
 【注意する人】
- ペニシリン系の抗生物質で、じん麻疹など過敏症状を起こしたことのある人は原則禁止です。特に必要な場合は、アレルギー反応に十分注意するなど慎重に用いるようにします。
- 伝染性単核症というウイルス性の病気にかかっているときは使用できません。この薬の影響で、発疹がでやすくなるためです。
- 脳や脊髄に器質的な病気がある場合は使用できないことがあります。また、血液に悪い影響をするおそれがあるので、血液疾患のある人は病状の悪化に気をつける必要があります。
- 喘息やじん麻疹などアレルギー性の病気のある人は慎重に用います。肝臓や腎臓の悪い人、高齢の人も副作用がでやすいので注意が必要です。
- 妊娠3ヵ月以内の女性は使用できません。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。飲み合わせによっては、作用が減弱したり副作用がでやすくなります。使用中の薬を医師に報告しておきましょう。
- 胃酸減少により、他の薬の吸収に影響することがあります。なかでも、抗エイズウイルス薬のアタザナビル(レイアタッツ)とリルピビリン(エジュラント)とは併用できません。これらの吸収が低下し、作用が減弱するおそれがあるためです。
- 禁止ではありませんが、同様の理由で血中濃度の低下が心配されのは、肺がんの薬のゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、白血病の薬のニロチニブ(タシグナ)やボスチニブ(ボシュリフ)、抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)などです。とくにボスチニブとの併用は可能な限り避けなければなりません。
- 喘息の薬のテオフィリン(テオドール)の代謝が促進されたり、経口避妊薬の再吸収が抑制されて効果が減弱するおそれがあります。
- 逆に、併用薬の血中濃度が上昇する可能性もあります。たとえば、心臓の薬のジギタリス薬(ジゴシン、ラニラピッド等)や免疫抑制薬のタクロリムス(プログラフ)、リウマチなどに用いるメトトレキサート(メソトレキセート、リウマトレックス等)、抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)、気分安定薬のリチウム(リーマス)、抗がん薬のフルオロウラシル(5-FU)や免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)などです。併用のさいは、これらの作用増強に注意が必要です。
- 抗酒薬のジスルフィラム(ノックビン)との併用により、精神症状の副作用があらわれるおそれがあります。
- 飲酒は禁止です。併用すると、アルコールによる悪心・嘔吐、腹痛、頭痛、動悸、紅潮といった症状が強まります。エリキシル剤などアルコール(エタノール)を含む医薬品も要注意です。たとえば、エイズの薬のノービア内用液などです。
 【使用にあたり】
- ふつう、3剤を同時に1日2回、7日間飲みます。1日服用分が1シートにまとめられているので、間違いなく飲めると思います。
- 飲み忘れや用量不足は、除菌率の低下につながります。決められた用量を確実に飲むことが大事です。万一、飲み忘れた場合は、気づいた時にすぐ飲んでください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、飲み忘れた分は抜かし、次の服用時間に1回分を飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
- 途中でやめてはいけません。7日間きちんと続けないと除菌に失敗し、治りにくくなるおそれがあります。
- 下痢の予防に、乳酸菌の整腸薬と併用することがあります。

- 【妊娠・授乳】

- とくに必要な場合を除き、妊娠中はできるだけ治療を控えます。とくに妊娠初期(3ヵ月以内)は避けなければなりません。

- 【検査】

- ヘリコバクター・ピロリ感染を調べる検査をおこないます。尿素呼気試験、ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法などの検査法があります。
 【食生活】
- 飲酒はいけません。薬の影響でアルコールに弱くなり、悪酔いしやすくなるのです。お酒に強い人でも、顔が真っ赤になり、吐き気や嘔吐、腹痛、頭痛など激しい症状を起こすおそれがあります。
- 尿の色が暗赤色に変わるかもしれませんが、薬の影響ですので心配いりません。
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効能 |

- 【適応菌種】

- アモキシシリン、メトロニダゾールに感性のヘリコバクター・ピロリ
 【適応症】
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症
- ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
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用法 |
プロトンポンプインヒビター、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤服用によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合、通常、成人はランソプラゾールとして1回30mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びメトロニダゾールとして1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは軟便や下痢です。これは、抗生物質が腸管を刺激したり、抗菌作用により腸内細菌のバランスがくずれるためです。軟便程度ならそれほど心配ないので、そのまま治療を続けることが多いです。ひどい下痢が続くときや血便がみられるときは受診してください。薬の影響で尿の色が暗赤色に変わるのは心配いりません。
人によっては、小さいブツブツした「発疹」ができます。ときに、発熱をともなうこともあります。ショックに至るような重いアレルギー症状(アナフィラキシー)を起こすことはまずないですが、万一、ひどい「じん麻疹」ができたり、顔や口が腫れてゼーゼーしてくるときは、すぐに受診してください。
多くはありませんが、末梢神経障害や中枢神経障害を起こすことがあります。手足のしびれやピリピリ感、ふらつき、ろれつが回らない、意識障害といった症状です。そのほか重い副作用として、腎不全や肝障害、血液障害、大腸炎、不整脈、皮膚障害などの報告があります。下記のような初期症状に念のため注意してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、ゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 大腸炎..激しい腹痛、頻回な下痢、発熱、血液便、下血。
- 間質性肺炎、好酸球性肺炎..から咳、息苦しさ、息切れ、痰、発熱。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・けいれん、力が入らない、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 末梢神経障害..手足のしびれ、感覚が鈍い、灼熱感、ピリピリ痛む。
- 中枢神経障害..ふらつき、よろける、ろれつが回らない、話せない、手足のしびれ、けいれん、物忘れ、混乱・もうろう状態、幻覚、意識低下。
 【その他】
- 軟便、下痢、腹痛、吐き気、味覚異常、口内炎
- 菌交代症(口内炎、カンジダ症、軟便、下痢)
- 発疹、じん麻疹、かゆみ
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