概説 |
ディフィシル菌による感染性腸炎を治療するお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- ディフィシル菌は毒素を産生する細菌の一種です。大腸内で増殖すると、下痢や腹痛を起こし、ときに重症化します。感染要因の一つは、抗菌薬の使用です。抗菌スペクトルの広い抗菌薬を続けていると、腸内細菌のバランスが乱れ、ディフィシル菌が異常に増殖してしまうことがあるのです。大腸に小さい円形の膜‘偽膜’を生じる偽膜性大腸炎の主要原因菌としても知られています。
このお薬は、クロストリジウム属のディフィシル菌を殺菌する抗菌薬です。抗菌スペクトルが狭いため、他の腸内細菌のバランスを乱す作用が弱く、ディフィシル菌に選択的に作用するのが特徴です。このため、偽膜性大腸炎を含め、ディフィシル菌による感染性腸炎の治療に用いられます。初発、再発あるいは重症度にかかわらず適用可能です。

- 【薬理】

- 有効成分のフィダキソマイシンは抗生物質の一種で、細菌の遺伝子転写にかかわるRNAポリメラーゼという酵素を阻害することにより抗菌力を発揮します。クロストリジウム・ディフィシルに対し殺菌的に作用し、また熱や消毒薬に抵抗性をもたらす芽胞形成を抑制する作用、毒素産生を阻害する作用も持ちあわせます。抗菌スペクトルは狭く、クロストリジウム・ディフィシルをはじめとする一部のグラム陽性菌に強い抗菌活性を持ちますが、ほとんどのグラム陰性菌に対しては抗菌活性を示しません。

- 【臨床試験】

- クロストリジウム属・ディフィシル菌による感染性腸炎に対する有効性と安全性を、既存の同効薬バンコマイシンと比較する試験が行われています。バンコマイシンは、同疾患に対し国内外で標準的に使われる汎用薬です。
参加したのは軽度から中等度のディフィシル菌による下痢症状がある患者さん212人です。このうち104人はこの薬を、別の108人はバンコマイシンを10日間服用します。そして、服薬終了時に治癒し、かつ1カ月間再発しなかった患者さんの割合‘治癒維持率’を比較するのです。
その結果、この薬を飲んでいた人達の治癒維持率は67.3%(70/104人)、バンコマイシンの人達で65.7%(71/108人)でした。残念ながら、事前に規定した非劣性の基準を満たしませんでしたが、治癒維持率はほぼ同程度であり、ディフィシル感染症に対する有効性が十分期待できると結論付けられました。安全性についても特段の問題はありませんでした。
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特徴 |
- 放線菌から産生される抗生物質の一種です。化学構造からは、18員環マクロライド骨格を持つ大環状抗菌薬に分類されます。新しいクラスの抗菌薬で、同じ効能のメトロニダゾール(フラジール)やバンコマイシンとは異なる作用機序を持ちます。
- クロストリジウム属・ディフィシル菌に対し強い抗菌活性を示しますが、狭域抗菌スペクトラムのため、正常な腸内細菌バランスをかく乱しにくいとされます。
- 腸管内で作用します。消化管からの吸収はわずかと考えられ、全身作用なほとんどありません。
- 国内外の臨床試験で、ディフィシル感染症に対し、バンコマイシンに勝るとも劣らない有効性が示されています。臨床的位置付けは、バンコマイシンとだいたい同じです。
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注意 |

- 【診察で】

- アレルギーのある人は、医師に伝えておきましょう。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。通常、1回1錠(200mg)を1日2回服用します。食事と関係なく飲めます。
- 飲み忘れた場合、気がついたときに飲んでください。ただし、次の時間が近ければ、1回分抜かし、次の通常の時間に1回分飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
- 服用期間は、原則10日間です。自分だけの判断で止めてしまうと、再発したり治りにくくなるおそれがあります。指示された期間きちんと続けましょう。
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効能 |

- 【適応菌種】

- 本剤に感性のクロストリジウム・ディフィシル

- 【適応症】

- 感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)
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用法 |
通常、成人はフィダキソマイシンとして1回200mgを1日2回経口服用する。
- [注意1]本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認すること。
- [注意2]本剤の投与期間は原則として10日間であり、この期間を超えて使用する場合、ベネフィット・リスクを考慮して投与の継続を慎重に判断すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
多くはありませんが、吐き気、嘔吐、便秘などが報告されています。腸からほとんど吸収されないので、そのほかの副作用は少ないです。過敏反応によるアナフィラキシーに念のため注意が必要かもしれません。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- アナフィラキシー..発疹、じんま疹、全身発赤、顔や口・喉や舌の腫れ、咳込む、ゼーゼー息苦しい。

- 【その他】

- 吐き気、嘔吐、便秘
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