概説 |
体の弱った機能をおぎなう漢方薬です。おもに、足腰の痛みや排尿異常などに用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 八味地黄丸(ハチミジオウガン)という方剤です。体の弱った機能をおぎない元気をつけます。ことに、足腰や泌尿生殖器など下半身の衰えに最適です。
一般的に高齢の人に用いることが多く、体力が低下し、顔色もすぐれず、冷えをともなうときに向きます。「臍下不仁(さいかふじん)」といって、オヘソから下の下腹部がフニャフニャと力がないことも使用目安です。
具体的には、足腰の痛みやしびれ、腎機能低下にともなう夜間頻尿、性機能低下、乾燥肌のカユミや湿疹などに用います。また、そのような症状をともなう前立腺肥大症や糖尿病にも適応します。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。八味地黄丸は、その名が示すよう、主薬の“地黄”を中心に下記の8種類の生薬からなります。“地黄”には、貧血症状を改善し元気をつける作用があります。“山茱萸”や“山薬”にも滋養強壮作用があり、“地黄”の働きを高めます。“茯苓”と“沢瀉”は、水分循環をよくする生薬です。“牡丹皮”は漢方でいう「お血(おけつ)」を治す生薬で、血行障害を改善し血のめぐりをよくします。さらに、体をあたため痛みをとる“桂皮”と“附子”が加わります。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 地黄(ジオウ)
- 山茱萸(サンシュユ)
- 山薬(サンヤク)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 沢瀉(タクシャ)
- 牡丹皮(ボタンピ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 附子(ブシ)
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特徴 |
- 腎気丸の代表的な方剤で、八味腎気丸あるいは通称で八味丸とも呼ばれます。“腎気”とは、漢方でいう腎(泌尿生殖器)の働きを高め、元気や精力をつけるという意味です。
- 腎虚(泌尿生殖器の衰え)をともなう高齢の人に広く用いられています。漢時代の「金匱要略」という古典書で紹介されている処方です。
- 適応証(体質)は、虚証(虚弱)、腎虚(泌尿生殖器・下半身の衰え)、寒証(冷え)、臍下不仁(下腹部脱力)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
 【注意する人】
- 体力が衰えている「虚証」向けの方剤です。したがって、体力が充実し、暑がりで、のぼせのある人には不向きです。
- 胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は慎重に用いるようにします。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 附子を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、その重複に注意が必要です。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、八味地黄丸をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ】

- 疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口渇し、手足に交互的に冷感と熱感のあるものの次の諸症。
- 腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧。

- 【クラシエ・他】

- 疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少または多尿で、ときに口渇がある次の諸症。
- 下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ。

- 【三和】

- 下腹部軟弱、腰に冷痛あり、尿利減少または頻数で、全身または手足に熱感あるものの次の諸症。
- 慢性腎炎、糖尿病、水腫、脚気のむくみ、膀胱カタル、腰痛、五十肩、肩こり。
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用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、胃の不快感やもたれ感、食欲不振、吐き気などを催します。また、動悸やのぼせ、舌のしびれ感などもみられます。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
- 胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢
- 動悸、のぼせ、舌のしびれ
- 発疹、発赤、かゆみ
- 肝機能の異常
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