概説 |
肝臓や胃腸の病気、高血圧にともなう諸症状などに用いる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 大柴胡湯(ダイサイコトウ)という方剤です。体の熱や炎症をとり、機能の亢進をしずめます。また、痛みをやわらげたり、便通もつける作用もあります。体力のあるガッチリタイプで便秘がち、ミゾウチから肋骨下部が強く張っている人に向く処方です。
具体的には、肝臓や胆のうの病気、胃腸の病気、便秘や痔、あるいは高血圧にともなう頭重感や肩こり・めまい・耳鳴りなどに適応します。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。大柴胡湯は、主薬の“柴胡”をはじめ、下記の8種類の生薬からなります。“柴胡”と“黄ごん”の組み合わせにより、炎症をしずめる効果が高まります。“半夏”と“枳実”は、胸のつかえ感や吐き気をおさえ、また気分を落ち着けるのに役立ちます。そのほか、便通をつける“大黄”、痛みをとる“芍薬”などが配合されています。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 柴胡(サイコ)
- 黄ごん(オウゴン)
- 半夏(ハンゲ)
- 枳実(キジツ)
- 大黄(ダイオウ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大棗(タイソウ)
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特徴 |
- 実証タイプに用いる代表的な方剤です。胸脇苦満のあることも大事な条件です。構成生薬からは「柴胡剤」に分類され、中間証用の小柴胡湯とともによく使われています。漢時代の「傷寒論」および「金匱要略」という古典書で紹介されている処方です。
- 適応証(体質)は、実証(体力充実)、熱証(炎症)、胸脇苦満(肋骨下部の張り)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に申し出てください。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
 【注意する人】
- 体力の充実している「熱・実証」向けの方剤です。したがって、冷えの強い「寒証」、体の虚弱な「虚証」の人は控えるようにします。また、胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は慎重に用いるようにします。
- 軟便や下痢をしている人は、控えたほうがよいでしょう。この場合、大黄を取り去った「大柴胡湯去大黄」のほうが適当です。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 他の漢方薬と併用する場合は、大黄の重複に注意が必要です。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません(熱証の人、あるいは吐き気に用いるときは、冷たい水で飲んだほうがよいことも)。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。

- 【妊娠・授乳】

- 配合生薬の大黄には、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用が認められています。そのため、流早産の原因にもなりかねません。大量でなければまず心配ないのですが、妊娠中の服用については医師とよく相談してください。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、大柴胡湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ】

- 比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなど伴うものの次の諸症。
- 胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病、ノイローゼ、不眠症。

- 【クラシエ・他】

- がっしりとした体格で比較的体力があり、便秘の傾向のあるものの次の諸症。
- 胃炎、常習便秘、高血圧に伴う肩こり・頭痛・便秘、肩こり、肥胖症(肥満症)。

- 【コタロー】

- 肝臓部圧迫感、またはみぞおちが硬く張って、胸や脇腹にも痛みや圧迫感があり、便秘するもの、あるいはかえって下痢するもの、耳鳴、肩こり、疲労感、食欲減退などを伴うこともあるもの。
- 高血圧、動脈硬化、常習便秘、肥満症、黄疸、胆石症、胆のう炎、胃腸病、気管支喘息、不眠症、神経衰弱、陰萎、痔疾、半身不随。

- 【三和】

- 胸やわき腹に圧迫感や痛みがあって胃部が硬く、つかえて便秘するもの。あるいは下痢したり、耳鳴り、食欲減退、疲労などを伴うものの次の諸症。
- 胆嚢炎、胆石症、黄疸、胃腸カタル、動脈硬化、高血圧症、脳溢血、半身不随、肥満症、喘息、神経衰弱、不眠症、常習便秘、痔疾、肋間神経痛。
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用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢などおこします。腹痛や下痢がひどいときは、早めに受診してください。
重い副作用はまずありませんが、間質性肺炎と肝障害が報告されています。万一のことですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
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