概説 |
カゼのひき始めや、じん麻疹に用いる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 香蘇散(コウソサン)という方剤です。軽い発散作用があり、体の熱や腫れ、あるいは痛みをやわらげる働きをします。カゼのひき始めに用いるほか、頭痛やじん麻疹などにも適応します。胃腸が弱く繊細で、体力のない人の初期症状に向く処方です。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。香蘇散は、“香附子”など、発散作用や健胃作用のある下記の5種類の生薬からなります。シソの葉っぱの“蘇葉”は、魚介類による中毒やじん麻疹にもよいといわれます。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 香附子(コウブシ)
- 蘇葉(ソヨウ)
- 陳皮(チンピ)
- 甘草(カンゾウ)
- 生姜(ショウキョウ)
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特徴 |
- 宋時代の「和剤局方」という古典書で紹介されている処方です。方剤名は、主薬の“香附子”と“蘇葉”に由来します。葛根湯では強すぎて、胃がもたれてしまうような虚証向けの方剤です。
- 適応証(体質)は、表証(急性期)、虚証(虚弱)、寒証(冷え)、湿証(水分停滞)、気滞(抑うつ・不安)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 芍薬甘草湯など甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
- 飲み合わせに注意..甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)など。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、かえって食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、香蘇散をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ・他】

- 胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期。

- 【コタロー】

- 神経質で、頭痛がして、気分がすぐれず食欲不振を訴えるもの、あるいは頭重、めまい、耳鳴を伴うもの。
- 感冒、頭痛、ジンマ疹、神経衰弱、婦人更年期神経症、神経性月経困難症。
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用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
重い副作用はまずありませんが、配合生薬の“甘草”の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
 【その他】
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