概説 |
痔の治療に用いる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 乙字湯(オツジトウ)という方剤です。痔の炎症をおさえ、また便通をよくします。体力が中くらい以上で、便秘がちの人に向いています。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。乙字湯の構成生薬は、下記の6種類です。そのうち、“柴胡”、“黄ごん”、“大黄”、“甘草”などは、炎症をしずめ痛みをやわらげる働きをします。“大黄”には、便通をつける作用もあります。また、“当帰”には補血作用があり、“升麻”は痔核や脱肛によいといわれます。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 柴胡(サイコ)
- 黄ごん(オウゴン)
- 当帰(トウキ)
- 升麻( ショウマ)
- 大黄(ダイオウ)
- 甘草(カンゾウ)
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特徴 |
- 江戸時代の日本の医者“原 南陽”によって創られた方剤です。病院でも、痔の治療によく処方されています。
- 適応証(体質)は、実〜中間証(比較的体力充実)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に申し出てください。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- どちらかというと体力の充実している「実証」向けの方剤です。したがって、体の虚弱な「虚証」の人は控えるようにします。また、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢など、胃腸の弱っている人は慎重に用いる必要があります。
- 注意が必要なケース..虚証(虚弱)、胃弱(食欲不振、吐き気、嘔吐)、下痢や軟便のある人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 他の漢方薬と併用する場合は、大黄の重複に注意します。また、芍薬甘草湯など甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
- 飲み合わせに注意..大黄含有製剤、甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)など。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。

- 【妊娠・授乳】

- 配合生薬の大黄には、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用が認められています。そのため、流早産の原因にもなりかねません。大量でなければまず心配ないのですが、妊娠中の服用については医師とよく相談してください。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、乙字湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ】

- 病状がそれほど激しくなく、体力が中位で衰弱していないものの次の諸症。

- 【クラシエ・他】

- 大便がかたくて便秘傾向のあるものの次の諸症。

- 【コタロー】

- 痔核、脱肛、肛門出血、痔疾の疼痛。

- 【三和】

- 便秘がちで局所に痛みがあり、時に少量の出血があるものの次の諸症。
- 一般痔疾、痔核、脱肛、肛門出血、女子陰部そう痒症。
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用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(以上ツムラ、他の製品は省略)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢などおこします。腹痛や下痢がひどいときは、早めに受診してください。
重い副作用はまずありませんが、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。
そのほか、間質性肺炎と肝障害が報告されています。万一のことですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 胃の不快感、食欲不振、吐き気、吐く、腹痛、下痢
- 発疹、発赤、かゆみ
- 肝機能値の異常
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