概説 |
スギ花粉症を治すお薬です。アレルゲン免疫療法(減感作療法)として用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- スギ花粉症は、スギ花粉をアレルゲンとして発症するアレルギー疾患の総称です。スギ花粉飛散シーズンに花粉と接触することにより、くしゃみ、鼻汁、鼻づまり、目のかゆみ、涙目といったI 型アレルギー症状があらわれます。
このお薬の成分はスギ花粉エキスです。舌下液として、舌の下に滴下して服用します。これを毎日続けていると、体が慣れてきて、アレルギー症状が出なくなってくるのです。アレルゲン免疫療法または減感作療法と呼ばれる治療法です。

- 【臨床試験】

- スギ花粉症に対する有効性と安全性をプラセボ(にせ薬)と比較する試験が行われています。参加したのは、12歳以上65歳未満のスギ花粉症患者さん531人。うち266人はこの薬を、別の265人はプラセボを使用し、花粉飛散2シーズンにわたり続けます。効果判定のための主要評価項目は、第2シーズン目の症状ピーク期の総合鼻症状薬物スコアとします。くしゃみ(0〜4点)、鼻汁(0〜4点)、鼻閉(0〜4点)、抗アレルギー薬(3点)または点鼻用血管収縮薬(3点)の緊急使用などについて自己採点し合算したものです。点数が低ければ軽症、高いほど重症です(0〜18点)。
その結果、この薬を使用していた人達の第2シーズン目の総合鼻症状薬物スコアは平均4.0点、プラセボで5.7点でした。この薬のほうが点数が低く、鼻症状の軽減とともに別の薬剤の使用が少ないことが示されたのです。さらに、症状がほとんどなくなる寛解(鼻症状スコア・眼症状スコア1点以下、薬物未使用)とみなされる人の割合は、この薬で17.0%(41/241人)、プラセボで8.3%(20/241人)でした。必ずしも高率ではありませんが、減感作療法の最終的な治療目標となる根治または長期寛解も十分期待できるわけです。安全性についても大きな問題はなく、心配される強いアレルギー反応によるショックやアナフィラキシーも見られませんでした。
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特徴 |
- スギ花粉症の治療に用いる舌下アレルゲン免疫療法薬(減感作療法薬)です。アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因物質‘アレルゲン’を服用し、徐々に体を慣らしていく治療法です。複数年続けることにより、完治または長期寛解が期待できます。
- 舌下液なので自宅で服用可能です。旧来の皮下注射のように頻回に通院しなくて済みます。ショックやアナフィラキシーの危険性も注射に比べれば低いです。ただし、注意が必要なことに変わりありません。免疫療法に精通する医師により慎重に処方されます。
- 3種類の製品があります。増量期1週目に用いるボトル入り低濃度製剤、2週目に用いるボトル入り高濃度製剤、維持期に用いる1回分パック入り高濃度製剤の3種類です。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。また、使用中の薬を医師に教えてください。
- 服用方法や注意事項、副作用について十分説明を受けてください。ご家族をふくめ、アナフィラキシーのおそれがあること、その際の対処法を理解しておくことが大事です。
- 「患者携帯カード」が交付されます。万一のアナフィラキシーに備え、いつも携帯しましょう。診察や調剤を受けるときも必ず持参してください。

- 【注意する人】

- 気管支喘息のある人は使用できないことがあります。発作時や症状が悪化しているときは、服用の可否を医師に確認してください。自己免疫疾患など免疫系に病気のある人、がんのある人も慎重に用いる必要があります。また、インフルエンザやかぜなど急性感染症にかかっているときや体調が悪いときも医師と相談してからにしてください。
- 注意が必要なケース..喘息、自己免疫疾患(膠原病)、免疫不全症、がんのある人、急性感染症にかかっているとき、抜歯後、口内炎ができている場合など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 相互作用を起こす飲み合わせはありませんが、治療に影響する薬がいくつかあります。たとえば、ステロイド薬(プレドニゾロンなど)を大量に飲んでいると、この薬の効果が十分出ない可能性があります。また、非選択的β遮断薬(インデラル等)は、この薬のアレルギー反応による副作用を強めるかもしれません。
- アナフィラキシーの処置のためにアドレナリン(エピペン)を注射したとき、アドレナリンの作用や副作用に影響する薬があります。非選択的β遮断薬(インデラル等)や抗うつ薬など要注意です。
 【使用にあたり】
- スギ花粉飛散時期を避けて治療を開始します。まず、低濃度 少量から始め、徐々に増量、高濃度へ移行します。医師から指示された服薬スケジュール、用法・用量に従い使用してください。なお、初回は医師のもとで使用し、30分ほど安静にする必要があります。万一のショックやアナフィラキシーに備えるためです。2回目以降は自宅で使用できます。
- 基本的な飲みかたは、1日1回、所定用量を舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込みます。その後5分間は、うがいや飲食をしないでください。飲み始めの2週間は用量が変則的なので、間違わないようにしましょう。なお、増量期用ボトルの詳しい使い方は説明書にありますから、よく読んでおいてください。使用前に空押しが必要です。
- はじめの1週目は、増量期用の低濃度製剤「シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル」を用います。ディスペンサーを装着し、ポンプをプッシュし必要量を舌下に滴下してください。1プッシュ0.2mLです。1日目は、1日1回、0.2mL(1プッシュ)を舌下に滴下します。段階的に徐々に増量し、7日目は1mL(5プッシュ)とします。服用後30分間は、アナフィラキシーの発現に注意してください(副作用を参照)。
- 2週目は、高濃度製剤の「シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル」を用い、1週目と同様に段階的に増量していきます。
- 3週目以降は維持期となります。1回分パック入りの「シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック」を1日1回、全量を服用してください。
- 薬液が手についたら直ちに水で洗い流してください。薬液がついた手で目をこすると、かゆみなどアレルギー症状がでるおそれがあります。
- インフルエンザやかぜで体調が悪いとき、抜歯後や口内炎などで口の中に傷や炎症があるときは、服用の可否をふくめ医師に相談してください。
- 飲み忘れた場合は、気がついた時点で1回分を服用してください。ただし、翌日に気づいた場合は、前日の量を1回服用してください。1日1回までとし、2回分を一度に使用してはいけません。
- もし、2分間舌下で保持できずに飲み込んでしまっても、その日は再度服用しないでください。翌日、改めて前日の量を服用してください。2回分を一度に使用してはいけません。
- 誤って多く服用した場合は、吐き出し、うがいをしてください。翌日、改めて前の日の量を服用してください。
- 万一のアナフィラキシーやショック症状に対応できるように、家族のいる場所や日中の服用が推奨されています。
- 自分だけの判断で止めてはいけません。治療期間は医師が決めます。長期寛解には年単位(3〜5年)の服用が必要とされます。決められた期間、根気よく続けてください。もし、1年以上続けても 少しも効果を感じないなら、医師とよく相談してみましょう。

- 【検査】

- 治療に先立ち、皮膚反応テストまたは特異的IgE抗体検査をおこない、スギ花粉症に間違いないことを確定診断します。

- 【食生活】

- 服用前と服用後2時間くらいは、激しい運動、飲酒、入浴などは避けてください。それらの行為で血行が良くなると、この薬の吸収が促進され、副作用が出やすくなるためです。服用後2時間以降に行う場合もアナフィラキシーなど副作用の発現に注意しましょう。
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効能 |
スギ花粉症(減感作療法) |
用法 |

- 【1.増量期(1〜2週目)】

- 通常、成人及び12歳以上の小児には、増量期として投与開始後2週間、以下の用量を1日1回、舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控える。
- ※1週目増量期 シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル
- 1日目 0.2mL
- 2日目 0.2mL
- 3日目 0.4mL
- 4日目 0.4mL
- 5日目 0.6mL
- 6日目 0.8mL
- 7日目 1mL
- ※2週目増量期 シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル
- 1日目 0.2mL
- 2日目 0.2mL
- 3日目 0.4mL
- 4日目 0.4mL
- 5日目 0.6mL
- 6日目 0.8mL
- 7日目 1mL

- 【2.維持期(3週目以降)】

- 増量期終了後、維持期として、シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパックの全量(1mL)を1日1回、舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控える。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは口や喉の症状です。口内や舌下の腫れ、口内炎、喉のかゆみ感などです。とくに開始初期に多くみられます。重症化することはまずありませんが、症状が強くなったり広がる場合は、いったん使用をやめ、医師と相談してください。アナフィラキシーの前兆かもしれませんから。
注射に比べ、ショックやアナフィラキシーは起こしにくいと考えられますが、決して油断できません。とくに、開始初期1カ月、服用後30分間、スギ花粉飛散時期など要注意。初期症状として、顔や喉の腫れ、全身発赤、じんま疹、顔面蒼白、呼吸困難、吐き気、動悸などいつもと違う症状が急激にあらわれます。そのような場合は、ただちに使用をやめ、医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
 【その他】
- 口内や舌下の腫れ、むくみ、口内炎、喉のかゆみ感
- 耳のかゆみ、頭痛。
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