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成分(一般名) アレクチニブ塩酸塩
製品例 アレセンサカプセル150mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/他の抗悪性腫瘍剤/抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 肺がんや悪性リンパ腫を治療するお薬です。おもにALK遺伝子に変異がある非小細胞肺がんに用いられます。
作用

【働き-1】

肺がんは、組織の型あるいは薬の効き具合など治療上の観点から、“小細胞肺がん”と、“非小細胞肺がん”に大別されます。抗がん薬がよく効く小細胞肺がんに対し、非小細胞肺がんは薬の効き目が悪いので 手術による切除を第一に考えなければなりません。非小細胞肺がんは、さらに がん遺伝子の変異別に“ALK融合遺伝子陽性”、“EGFR遺伝子変異陽性”、どちらの変異もない“野生型”の3タイプに分けることができます。

このお薬は今までの抗がん薬とは効きかたが違う新しいカテゴリーの分子標的薬です。非小細胞肺がんのうちALK融合遺伝子陽性タイプに相当の効果が期待できることから、手術が困難なALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療に使います。効き方には個人差がありますが、よく効くと、がん細胞の増殖が止まり、がんが小さくなります。そして 呼吸困難や痛みが軽減し、より長生きできる可能性もあります。

【働き-2】

悪性リンパ腫は血液がんの一種で、白血球のうちのリンパ球ががん化する病気です。さまざまな病型があり、そのうちの一つが未分化大細胞リンパ腫になります。Tリンパ球(T細胞)の表面にあるCD30という分子が陽性であれば未分化大細胞リンパ腫と診断され、さらにALK蛋白が発現していればALK陽性未分化大細胞リンパ腫と確定診断されます。このお薬は、再発または難治性のALK陽性未分化大細胞リンパ腫の治療に用いられます。国内試験で80%の奏効率が示されました。

【薬理】

ALKという部位の遺伝子に変異があると、EML4などある種の蛋白と融合しEML4-ALK融合蛋白が産生されます。これががん細胞の増殖や正常細胞のがん化をもたらすものと考えられています。この薬は、ALKについているチロシンキナーゼという酵素の働きをおさえリン酸化を阻害することで、増殖をうながす情報伝達系の流れを遮断します。その結果として、がん細胞の増殖がおさえられ、がんが小さくなるわけです。このような作用から略してALK-TK阻害薬、または広くチロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれています。

  • ALK:未分化リンパ腫キナーゼ
  • EML4:微小管会合タンパク4
  • TK:チロシンキナーゼ

【臨床試験-1】

別の抗がん薬による治療歴があり、ALK融合遺伝子陽性の進行した非小細胞肺がんの患者さん46人による臨床試験が行われています。有効性を判定するための評価項目は、画像上での奏効率(ORR)です。ここでいう奏効率は、明らかな腫瘍の縮小が確認できる完全奏効と、部分奏効の合計であらわされます。

その結果、奏効率は93.5%(43/46人)にのぼりました。うち全奏効率は15%(7/46人)、部分奏効率は78%(36/46人)です。比較試験ではありませんが、白金系薬剤など従来の抗がん薬のALK融合遺伝子陽性患者における奏効率は30%そこそこ、同類薬のクリゾチニブ(ザーコリ)で50〜60%ですから、この薬の奏効率はかなり高いと考えられるのです。ただし、奏効したからと、必ずしも症状軽減や延命につながるものではありません。生存期間の検証を含めた比較試験(JO28928、ALEX)は以下です。

【臨床試験-2】

「無増悪生存期間」を主要評価項目とする、同類薬クリゾチニブ(ザーコリ)との比較試験(JO28928)がおこなわれています。参加したのは、未治療または従来の抗がん薬による治療を一度だけ受けたことのあるALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの患者さん207人。そして、この薬を飲むグループとクリゾチニブのグループに半々に分かれ、 がんが大きくならず病状が安定している無増悪生存期間を比べるのです。

その結果、10カ月後の無増悪生存の割合は、この薬のグループで約80%(中央値未到達)、クリゾチニブのグループで50%(中央値10カ月)でした。この薬のほうが明らかに高く、クリゾチニブに対する無増悪生存期間の有意な延長が示されたのです。安全性についても大きな問題はなく、中等度以上の副作用の発現率は、この薬で27%、クリゾチニブで51%でした。なお、別の国際共同試験(ALEX)においても同様の結果が得られています。それによると無増悪生存期間中央値はこの薬で26カ月、クリゾチニブで10カ月でした。クリゾチニブと比較し病勢進行または死亡リスクが50%低下したとのことです。
特徴
  • いわゆる分子標的治療薬です。がん細胞の増殖過程における指令系統を分子レベルでブロックします。標的分子は、ALKのチロシンキナーゼ(TK)。略してALK阻害薬またはALK-TK阻害薬ということになります。クリゾチニブ(ザーコリ)に次ぐ、国内2番目のALK阻害薬です。
  • ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおいて、90%以上の高い奏効率が得られています。また、症状が安定している無増悪生存期間の中央値は2年以上になると推定されます。ALK陽性非小細胞肺がんにおける一次治療薬として、さらには再発・難治性のALK陽性未分化大細胞リンパ腫に対する新たな治療選択肢として期待されるところです。
  • 血液脳関門を通過し脳内に移行します。中枢神経系において活性があり、脳転移に対する有効性が確認されています。
  • 一般的な抗がん薬でしばしば問題となる脱毛や骨髄抑制の心配はほとんどありません。一方で、間質性肺疾患や白血球減少など特異な副作用がかなりの頻度で発現します。このため、緊急時に十分に対応できる医療施設で、専門医による慎重な診断のうえで処方されなければなりません。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。
  • 有効性だけでなく、副作用や注意事項についても十分に説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、同意のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

間質性肺炎や肺線維症など肺の病気を併発している場合、またはその既往歴のある人は慎重に用います。肺疾患が悪化したり、再発するおそれがあるためです。肝臓病のある人は、病状の悪化や薬の血中濃度上昇に注意が必要です。妊婦中またはその可能性のある女性は使用できません。

  • 注意が必要なケース..肺の病気(間質性肺疾患)や肝臓病を合併している人、妊婦中またはその可能性のある人。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

他の薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなります。逆に血中濃度が低下し、有効性が減弱するおそれもあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • この薬の血中濃度を上昇させる薬剤として、たとえば抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)やボリコナゾール(ブイフェンド)、フルコナゾール(ジフルカン)、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ)やアタザナビル(レイアタッツ)などがあげられます。また、グレープフルーツジュースにも同様の性質があることが知られています。これらを避け他の薬剤への変更が望ましいですが、治療上やむを得ない場合は副作用の発現に十分注意する必要があります。
  • 逆に、血中濃度を低下させる薬剤に、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)とフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、フェノバルビタール(フェノバール)などがあります。薬ではありませんが、健康食品やハーブティーとして販売されているセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)にも同様の性質があります。これらとの併用はできるだけ避け、相互作用のより少ない薬剤への代替を考慮するようにします。

【使用にあたり】
  • 治療開始にあたり、必要に応じて入院します。間質性肺疾患など重い副作用の発現に細心の注意が必要なためです。外来で処方され、薬局で薬をもらうときは「アレセンサ緊急時連絡カード」を提示してください。
  • 決められた飲み方を厳守してください。服用回数は1日に2回。1回の服用量は通常300mgです(カプセル150mgを2カプセル)。
  • もし、飲み忘れたら、飲み忘れた分は抜かし、次の時間に1回分を飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
  • 咳や息切れ、息苦しさ、発熱など、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と連絡をとってください。

【検査】
  • ALK融合遺伝子が陽性かどうかを調べます。陽性の場合に限り、この薬による治療が可能です。
  • 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。肝機能や血液の検査、さらに肺に副作用がでていないか 胸部レントゲン(CT)検査などでチェックする必要があります。

【妊娠・授乳】
  • 動物実験で胎児毒性や催奇形性作用が認められています。このため、妊娠可能な女性は、治療中に妊娠しないように適切な方法で避妊してください。
  • 授乳中は使用を控えるべきですが、やむを得ず使用する場合は、授乳を中止する必要があります。
効能

【効能A】

ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

【効能B】

再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫
用法

【効能A】

通常、成人はアレクチニブとして1回300mgを1日2回経口服用する。

【効能B】

通常、アレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。ただし、体重35kg未満の場合の1回投与量は150mgとする。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 多くの人にあらわれるのが便秘または下痢、吐き気、味覚異常、口内炎や発疹などです。また、検査で肝機能値の悪化や血液の異常が見つかることがあります。重症化しないように、定期的に検査を受け、早く対処することが大事です。

重い副作用でもっとも重要なのが肺に起こる間質性肺疾患です。咳、息切れ、息苦しさ、発熱といった症状があらわれたら、ただちに受診してください。対応が遅れると、重症化し治療が困難になります。ほかにも、重い肝障害や血液障害を起こす可能性があり注意が必要です。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、医師と連絡をとるようにしてください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 間質性肺疾患..息切れ、咳、息苦しい、息が荒い、呼吸困難、血痰、発熱。
  • 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 白血球減少、好中球減少..発熱、のどの痛み、口内炎、咳、だるい。
  • 消化管穿孔..突然の激しい腹痛、持続する腹痛、吐き気、嘔吐、寒気、発熱、意識低下。
  • 血栓塞栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。

【その他】
  • 便秘、下痢、吐き気
  • 味覚異常、口内炎
  • けん怠感、頭痛、筋肉痛、むくみ
  • 発疹、肌荒れ
  • 貧血、肝機能値の異常

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。