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成分(一般名) アファチニブ マレイン酸塩
製品例 ジオトリフ錠20mg~30mg~40mg~50mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/キナゾリン系/抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 肺がんを治療するお薬です。非小細胞肺がんに用います。
作用

【働き】

肺がんは、細胞の型あるいは薬の効き具合など治療上の観点から、“小細胞肺がん”と、“非小細胞肺がん”に大別されます。抗がん薬がよく効く小細胞肺がんに対し、非小細胞肺がんでは薬の効き目が悪く手術による切除を第一に考えなければなりません。非小細胞肺がんは、さらに がん遺伝子の変異別に“EGFR遺伝子変異陽性”、“ALK融合遺伝子陽性”、どちらの変異もない“野生型”の3タイプに分けることができます。

このお薬は今までの抗がん薬とは効きかたが違う新しいカテゴリーの分子標的薬です。非小細胞肺がんのうちEGFR遺伝子変異陽性タイプに一定の効果が期待できることから、手術が困難なEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんの治療に使います。効き方には個人差がありますが、よく効くと、がん細胞の増殖が止まり、がんが小さくなります。そして 呼吸困難や咳、痛みが軽減し、より長生きできる可能性もあります。

【薬理】

EGFR、日本語でいう上皮成長因子受容体(EGFR)は、肺がんの細胞表面に発現する蛋白で、がん細胞の増殖をうながす役目をしています。EGFRにはTKことチロシンキナーゼ(TK)という酵素がついていて、この酵素のリン酸化により細胞増殖のシグナルが伝わります。

この薬は、チロシンキナーゼに共有結合し、そのリン酸化を持続的に阻害します。すると、EGFRの異常なチロシンキナーゼ活性が低下し、細胞の増殖をうながす情報が遮断され、結果として がんの増殖抑制、縮小につながるわけです。変異のないEGFRよりも、変異型EGFRによく効くことが分かっています。

【臨床試験】

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対する一次治療としての有効性を調べる臨床試験がおこなわれています。参加したのは、EGFR遺伝子変異のある再発・進行性非小細胞肺がんで、がん化学療法をまだ受けていない患者さん345人。うち230人はこの薬を内服、別の115人は注射による既存の標準的化学療法(CDDP+PEM)をおこない、それぞれの効果を比較します。有効性の第一の判断材料は、がんが大きくならず病状が安定している期間「無増悪生存期間」です。

その結果、この薬を飲んでいた人達の無増悪生存期間の中央値は11.1カ月でした。一方、標準的化学療法を受けた人達の中央値は6.9カ月でした。この薬を飲んでいた人達のほうが無増悪生存期間が明らかに延長し、既存の化学療法を上回る有効性が確認できたわけです。なお、副次的におこなわれた全生存期間の調査では、この薬の中央値が28.1カ月、標準的化学療法で28.2カ月でした。残念ながら全生存期間は同様で優越性は示されませんでしたが、少なくとも劣る傾向は認められなかったことになります。
特徴
  • チロシンキナーゼ阻害薬の一種のEGFR阻害薬(EGFR-TKI)です。一般的な抗がん薬とは異なる“分子標的薬”の部類で、がん細胞の増殖過程における指令系統を分子レベルでブロックします。この薬の標的は、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ(TK)。化学構造的には、キナゾリン系の小分子で、ゲフィチニブ(イレッサ)やエルロチニブ(タルセバ)と同系です。
  • 第二世代のEGFR阻害薬です。特徴的なのは、上皮成長因子受容体のEGFR(ErbB1)にくわえ、その仲間のHER2(ErbB2)やHER4(ErbB4)のチロシンキナーゼを不可逆的、持続的に阻害することです。このため、不可逆的ErbBファミリー阻害薬と呼ばれることがあります。従来品のゲフィチニブとエルロチニブの阻害作用は可逆的とされ、これらによる治療歴がある患者さんにおいても一定の効果が期待できそうです。
  • 実際に、第一世代のEGFR阻害薬と直接比較した試験で、肺がん進行のリスクを30%近く低下させることが分かりました。さらに、治療開始後2年時点において、第一世代に比べ2倍の患者さんが進行を認めませんでした(18% vs 8%)。
  • 一般的な抗がん薬でしばしば問題となる骨髄抑制にともなう血液障害の副作用はほとんどありません。一方で、間質性肺疾患がかなりの頻度で発現し、死亡例も報告されています。このため、緊急時に十分に対応できる医療施設で、専門医による慎重な診断のうえで処方されなければなりません。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は原則使用しません。
  • 有効性だけでなく、副作用についても十分に説明を受けてください。とくに間質性肺炎の初期症状や注意事項について、ご家族も含めよく理解しておくことが大切です。薬の性質をよく理解し、同意のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

間質性肺炎など肺の病気を併発している人、またその既往歴のある人は慎重に用いなければなりません。肺疾患が悪化したり、再発するおそれがあるためです。肝臓病や心臓病のある人も病状の悪化に注意が必要です。また、腎機が悪いと血中濃度が上昇しやすいです。

  • 注意が必要なケース..肺の病気(間質性肺炎など)、肝臓病、腎臓病、心臓病(心不全)のある人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

薬の飲み合わせに注意が必要です。使用中の薬は必ず医師に報告してください。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えておきましょう。

  • アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、心臓の薬のベラパミル(ワソラン)、リトナビルを含有する抗エイズウイルス薬など、飲み合わせによっては この薬の血中濃度が上昇し副作用が増強する可能性があります。
  • 結核治療薬のリファンピシン(リファジン)や抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)との併用により、この薬の血中濃度が低下するおそれがあります。
  • セイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品は控えてください。この薬の作用を弱めてしまうかもしれません。

【使用にあたり】
  • 治療開始にあたり、必要に応じて入院します。間質性肺疾患など重い副作用の発現に細心の注意が必要なためです。
  • 決められた飲み方を厳守してください。服用時間は空腹時です。食後ですと十分吸収されません。食事の影響を避けるため食事の1時間前から食後3時間までの間は避けてください。また、牛乳などで飲まず、水だけで飲みましょう。
  • 服用量は医師の指示どおりにしてください。病状や副作用の重症度等に応じて、増量または減量することがあります。
  • 咳や息切れ、発熱、下痢、発疹など、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と連絡をとってください。

【検査】
  • 治療に先立ち、EGFR遺伝子に変異があるか調べます。この薬がよく効くのは、変異がある場合です。
  • 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。とくに気を付けたいのが間質性肺疾患です。定期的に胸部レントゲン(CT)検査をおこない肺に異常がないか調べます。肝臓や腎臓、心臓の検査も重要です。

【妊娠・授乳】

妊娠中は、治療上やむを得ない場合を除き、できるだけ使用しないようにします。また、妊娠可能な女性は、治療中に妊娠しないように適切な方法で避妊してください。
効能 EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
用法 通常、成人はアファチニブとして1日1回40mgを空腹時に経口服用する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回50mgまで増量できる。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 ほとんどの人にあらわれるのが下痢と皮膚障害です。激しい下痢が続くと、脱水症状から腎不全を起こしかねませんので油断できません。皮膚症状としては、発疹や紅斑、皮膚乾燥、皮膚荒れ、爪周囲の発赤、爪の萎縮や割れなどさまざまです。たいていは継続可能ですが、重症度に応じて減量や休薬が必要なこともあります。

重い副作用でもっとも重要なのが間質性肺炎など肺に起こる障害です。から咳、息切れ、息苦しさ、発熱といった症状があらわれたら、ただちに受診してください。対応が遅れると、重症化し治療が困難になります。ほかにも、肝障害や心障害など注意を要する副作用があります。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、医師と連絡をとるようにしてください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 間質性肺疾患..から咳、息苦しさ、息切れ、息が荒い、呼吸困難、血痰、発熱。
  • 重度の下痢・脱水..激しい下痢、嘔吐、尿が出ない
  • 重度の皮膚障害..全身の発疹・発赤、広範なニキビ、ひどい皮膚乾燥・亀裂、重い爪障害、強いかゆみ。
  • 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 心不全..息苦しい、息切れ、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、急な体重増加。
  • 消化管潰瘍・胃腸出血..胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、吐血(コーヒー色のものを吐く)、下血(血液便、黒いタール状の便)。
  • 膵炎..吐き気、吐く、上腹部〜背中の激しい痛み。

【その他】
  • 下痢、食欲減退、吐き気、嘔吐
  • 口内炎、口唇炎、味覚異常
  • 発疹、紅斑、ニキビ、皮膚乾燥、肌荒れ、かゆみ
  • 爪の異常(爪周囲の発赤、爪の萎縮・割れ・痛み)
  • 結膜炎、角膜炎、鼻血、粘膜の炎症
  • 肝機能異常

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。