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成分(一般名) パゾパニブ塩酸塩
製品例 ヴォトリエント錠200mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/他の抗悪性腫瘍剤/抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 がんの増殖をおさえるお薬です。悪性軟部腫瘍または腎臓がんの治療に用います。
作用

【働き1】

悪性軟部腫瘍(サルコーマ)は、筋肉や脂肪、腱や関節、血管や神経などの軟部組織に発生するがんの総称です。いわゆる肉腫がこれにあたり、腕や太ももなどに腫れやしこりが発現します。発症率はたいへんまれですが、進行すると肺などに転移し予後は好ましくありません。抗がん薬が効きにくいので、完治をめざすには手術による切除が原則です。

このお薬は血管新生阻害作用をもつ新しいタイプの抗がん薬です。がんを養う血管の新生をじゃまして、がんの勢いをなくします。増殖に必要な酸素や栄養の供給を止めて兵糧攻めにするわけです。悪性軟部腫瘍に対しても一定の効果が期待できることから、手術が困難な場合や転移のある悪性軟部腫瘍の治療に使います。症状がやわらぐとともに、より長生きできる可能性があります。

【働き2】

腎臓のがんのうち、もっとも多いのが“腎細胞がん”です。一般的な抗がん薬による化学療法が効きにくいため、手術による切除が第一の選択となります。さらに手術後に、インターフェロンやインターロイキンなどサイトカイン製剤による免疫療法も広くおこなわれています。

このお薬は血管新生阻害作用をもつ新しいタイプの抗がん薬です。がんを養う血管の新生をじゃまして、がんの勢いをなくします。酸素や栄養の供給を止めて兵糧攻めにするわけです。昔からの抗がん薬とは効きかたが違うため、腎細胞がんに対しても一定の効果が期待できます。手術が困難な場合や転移のある腎細胞がんの治療に使います。

【薬理】

細胞の分化や増殖にはチロシンキナーゼというある種の酵素群が関与しています。とくに腫瘍増殖に深くかかわるのが血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(c-Kit)などの受容体型チロシンキナーゼです。

この薬は、そのようなチロシンキナーゼを阻害し、腫瘍の増殖につながる血管やリンパ管の新生を阻害することなどにより抗腫瘍効果を発揮します。がんの栄養補給路あるいは転移経路が絶たれ、結果的にがんの勢いが衰え増殖や転移が起こりにくくなるわけです。

【臨床試験-1】

悪性軟部腫瘍について、この薬の有効性をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験がおこなわれています。参加したのはアントラサイクリン系薬剤を含む前治療をすでにおこなっている進行性の悪性軟部腫瘍の患者さん369人、うち日本人47人です。有効性の主な判断材料は、がんが大きくならず病状が安定している期間「無増悪生存期間」です。

その結果、この薬を飲んでいた人達246人の無増悪生存期間の中央値が4.6ヶ月だったのに対し、プラセボを飲んでいた人達123人では1.6ヶ月と明らかな差が認められました。この薬を飲んだほうが無増悪生存期間が約3ヶ月延長することが確かめられたわけです。なお、全生存期間についてははっきりした有意差は得られず、この薬で約13ヶ月、プラセボで11ヶ月という結果でした。

【臨床試験-2】

腎細胞がんに対する有効性をプラセボ(にせ薬)と比較する試験が海外でおこなわれています。参加したのは未治療またはサイトカイン治療歴のある進行性の腎細胞がんの患者さん435人。振り分けは無作為にくじ引きでおこない、290人はこの薬を、別の145人はプラセボ(にせ薬)を飲むことになります。有効性のおもな判断材料は、がんが大きくならず病状が安定している期間「無増悪生存期間」です。また、副次的に亡くなるまでの「全生存期間」についても調べます。

その結果、この薬を飲んでいた人達の無増悪生存期間の中央値は9.2カ月でした。一方、プラセボでは4.2カ月にとどまりました。この薬を飲んでいた人達のほうが無増悪生存期間が明らかに延長し、プラセボを上回る有効性が確認できたわけです。一方、全生存期間については、プラセボと大差がなく、残念ながら この薬による延命効果は認められませんでした。なお、1000人以上による別の臨床試験において、標準薬のスニチニブ(スーテント)と同等の無増悪生存期間が得られています。
特徴
  • いわゆる分子標的治療薬です。がんの増殖過程における指令系統を分子レベルでブロックします。標的分子は、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(c-Kit)という3種類のチロシンキナーゼです。このような作用機序からチロシンキナーゼ阻害薬とも呼ばれます。
  • 悪性軟部腫瘍に対する初めての分子標的薬になります。標準的に使用されるアントラサイクリン系抗がん薬のドキソルビシン(アドリアシン)などに次ぐ二次療法における選択肢になると考えられます。
  • 腎細胞がんに対する効能も追加されました。適応となるのは、手術による治癒が望めない場合や、転移がみられる進行腎細胞がんです。その一次治療(初回治療)またはサイトカイン製剤による治療後の二次治療における新たな処方選択肢の一つとして期待されます。一次治療薬として標準的に用いられているスニチニブ(スーテント)と同等の有効性が示されています。
  • 一般的な抗がん薬でしばしば問題となる骨髄抑制にともなう血液障害の副作用は少ないです。一方で、肝機能障害や高血圧、心機能障害、血栓症、甲状腺機能障害など特異な副作用が多くみられます。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。
  • 有効性だけでなく、副作用や注意事項についても十分に説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。肝臓病や腎臓病、高血圧症や心臓病のある人は慎重に用いる必要があります。妊娠中は使用できません。

  • 適さないケース..妊娠中。
  • 注意が必要なケース..肝臓病、腎臓病、高血圧、心臓病、血栓塞栓症、脳転移または肺転移のある人、手術後まもない人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • 胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療に用いるプロトンポンプ阻害薬(オメプラール、 オメプラゾン、タケプロン、パリエット、 ネキシウム等)との併用はできるだけ避けます。胃酸の分泌が抑制され、この薬の溶解度が低下し吸収が低下するおそれがあるためです。
  • アゾール系抗真菌薬(イトリゾール等)やマクロライド系抗生物質(エリスロシン、クラリス等)は、この薬の血中濃度を上昇させ重い副作用をまねくおそれがあります。併用するのなら、この薬の減量を考慮しなければなりません。
  • 抗結核薬のリファンピシン(リファジン)や抗けいれん薬のフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)など ある種の薬と併用すると、この薬の作用が弱まるかもしれません。
  • 乳がん治療薬のラパチニブ(タイケルブ)との併用により、この薬の血中濃度が上昇する可能性があります。
  • グレープフルーツジュースは飲まないでください。この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなるからです。

【使用にあたり】
  • 1日1回、食間(空腹時)に飲みます。食前や食後は避け、食事の1時間以上前または食後2時間以降にしてください。1回の服用量は通常800mg(4錠)、ただし肝機能値や副作用の程度により減量することがあります。決められた飲み方を厳守してください。
  • 毛髪が変色したり肌の色が白っぽくなることがあります。危険な副作用ではありませんが、気になるときは医師と相談してください。
  • 激しい疲労、動悸や息切れ、血圧上昇、出血、皮膚や白目が黄色くなるなど、いつもと違う症状があらわれたら すぐに医師に連絡してください。

【検査】

効果や副作用をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。とくに重要なのが肝機能検査です。血圧は、診察日に必ず測ってもらいましょう。さらに、心臓に副作用がないか心電図や心エコーなどで調べることがあります。

【妊娠・授乳】

動物実験で胎児に悪い影響がでることがわかっています。妊娠中もしくはその可能性のある女性は使用できません。また、妊娠可能な女性は服薬中および服薬終了後一定期間は妊娠しないように避妊をしてください。
効能
  • 悪性軟部腫瘍
  • 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
用法 通常、成人はパゾパニブとして1日1回800mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に経口服用する。なお、患者の状態により適宜減量する。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 下痢や吐き気など胃腸症状が半分以上の人にあらわれます。血圧が上がることも多く、ほかにも毛髪の変色、味覚異常、頭痛、出血など、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先するようにします。

重い副作用でもっとも重要なのが肝機能障害です。肝不全にる死亡例も報告されているようです。異常なだるさ、発熱、吐き気、皮膚や白目が黄色くなるといった症状に注意しましょう。予防のために、定期的な肝機能検査が欠かせません。

高血圧の発現率は、とくに日本人で高いようです。通常、降圧薬で対処できますが、まれに急激な血圧上昇と全身症状をともなう重篤な高血圧クリーゼを起こすことがあります。こまめに血圧測定をおこなうなど血圧の管理が重要です。

心不全や不整脈があらわれることもあります。特徴的な症状は、息切れ、息苦しさ、むくみ、動悸、めまいなどです。初期症状に注意するとともに、定期的に心機能検査や心電図検査を受け軽いうちに見つけることが大事です。とくに、もともと心臓が弱っている人、抗不整脈薬を飲んでいる人は十分注意してください。

血管新生阻害作用から、出血しやすくなったり傷口が治りにくくなることもあります。鼻血や血尿など比較的軽い出血がほとんどですが、命にかかわるような消化管の大出血や脳出血を起こすこともなくはありません。

ほかにも、注意が必要な副作用として血栓塞栓症、気胸、甲状腺機能異常、消化管穿孔、タンパク尿やネフローゼ症候群などが報告されています。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐ病院スタッフと連絡をとるようにしてください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 高血圧クリーゼ..急激な血圧上昇、非常に高い血圧、頭痛、吐き気、意識がうすれる。
  • 心不全・不整脈..息切れ、息苦しい、むくみ、体重増加、動悸、脈が弱い、脈の乱れ、めまい、失神。
  • 血栓塞栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。
  • 出血..鼻血、血尿、血痰、血液便、吐血、脳出血(頭痛、片側の手足のしびれ・まひ、うまく話せない、意識がうすれる)。
  • 消化管穿孔..突然の激しい腹痛、持続する強い腹痛。
  • 甲状腺機能障害(低下・亢進)..疲れやすい、肌荒れ、声枯れ、冷え、むくみ、便秘、徐脈、頻脈、動悸、微熱、震え、食欲更新、やせる、発汗、いらいら。
  • ネフローゼ症候群..だるい、手足のむくみ、顔がむくみ目がはれぼったい、体重増加、尿の濁り・泡立ち。
  • 重い感染症..発熱、けん怠感、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚発赤・小水疱・ピリピリ痛い、水ぶくれ、できもの。
  • 創傷治癒遅延..傷が治りにくい。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 可逆性後白質脳症症候群..高血圧、頭痛、ぼんやり、いつもの違う精神状態、目が見えない。
  • 血栓性微小血管症..皮下出血、青あざ、血尿、尿が少ない・出ない、むくみ、吐き気、頭痛、けいれん。
  • 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、とくに上腹部〜背中の痛み。
  • 網膜剥離..視野に暗点、視野が欠ける、キラキラした光、異常な光が見える、視力低下。

【その他】
  • 下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛
  • 高血圧、徐脈
  • 毛髪変色、脱毛、皮膚乾燥、発疹、皮膚脱色、粘膜炎
  • 関節痛、筋肉痛
  • 発声障害(声枯れ、しゃがれ声、声の変化)
  • 頭痛、めまい、味覚異常
  • 疲労、体重減少

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注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。