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成分(一般名) ニロチニブ塩酸塩
製品例 タシグナカプセル50mg~150mg~200mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/他の抗悪性腫瘍剤/抗悪性腫瘍剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 白血病を治療するお薬です。慢性骨髄性白血病に用います。
作用

【働き】

血液は骨のなかの骨髄の造血幹細胞からつくられます。慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞ががん化し、白血球の一種の顆粒球が異常増殖する病気です。進行すると、正常な血球ができなくなり、貧血や出血、感染症などを引き起こし命を脅かします。病因としてあげられるのが、フィラデルフィア染色体に由来する異常遺伝子‘BCR-ABL’が産生するチロシンキナーゼという酵素タンパクです。

このお薬は、チロシンキナーゼのはたらきを阻害することにより、異常な血球の産生を抑え血液を正常化させます。寛解に導き、急性転化(急激な悪化)を回避することにより、より長生きできる可能性が高まるのです。初発の慢性骨髄性白血病の1次治療に用いるほか、従来の標準薬のイマチニブ(グリベック)が効果不十分な場合に2次治療薬として用いることもできます。

【薬理】

慢性骨髄性白血病の大部分の患者さんに見つかるのが、フィラデルフィア染色体と呼ばれる不正な染色体です。この染色体のもとBCR-ABL融合遺伝子が形成され、これがBcr-Ablチロシンキナーゼという異常な蛋白を産生します。Bcr-Ablチロシンキナーゼは慢性骨髄性白血病の病因ともいえ、がん細胞増殖の引き金となるシグナルを送る役目をしています。

この薬は、Bcr-Ablチロシンキナーゼに結合し、細胞増殖を促すシグナル伝達を遮断します。通常型のBcr-Ablチロシンキナーゼにくわえ、イマチニブ耐性の変異型Bcr-Ablチロシンキナーゼに対しても阻害活性を示します。チロシンキナーゼはリン酸化をもたらす一種の酵素であり、これを阻害する作用からチロシンキナーゼ阻害薬あるいはチロシンキナーゼインヒビターなどと呼ばれています。

【臨床試験】

慢性骨髄性白血病の1次治療における有効性を、類似薬のイマチニブ(グリベック)と比較する国際共同臨床試験が行われています。イマチニブは慢性骨髄性白血病に標準的に用いられているチロシンキナーゼ阻害薬です。参加したのは初発の慢性骨髄性白血病の患者さん846人(日本人79人)。そして、この薬を飲む人とイマチニブを飲む人に分かれ、1年以内に分子遺伝学的に寛解(MMR)した人の割合を比べます。分子遺伝学的寛解は、慢性骨髄性白血病の病因となるBCR-ABL遺伝子が消失し正常化することを意味します。

その結果、分子遺伝学的に寛解(MMR)した人の割合は、この薬を飲んでいた人達で44%(125/282人)、イマチニブの人達で22%(63/283人)でした。また、副次的に調べられた細胞遺伝学的に寛解(CCyR)した人の割合は、この薬で80%(226/282人)、イマチニブで65%(184/283人)でした。どちらの寛解率もこの薬のほうが高く、イマチニブを上回る治療効果が得られたわけです。なお、別の臨床試験でイマチニブが十分効かないイマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病に対する有効性も示されています。
特徴
  • 「分子標的薬」と呼ばれる新しいタイプの抗がん薬です。がん細胞の増殖を指令するシグナル伝達経路を分子レベルで遮断します。この薬の標的分子(蛋白)は、白血病細胞増殖の最初の伝達ポイントとなるBcr-Ablチロシンキナーゼです。
  • チロシンキナーゼを阻害し、基質のチロシンリン酸化を妨げる作用から広く「チロシンキナーゼ阻害薬」と呼ばれています。Bcr-Ablチロシンキナーゼを阻害する類似薬として、イマチニブ(グリベック)、ダサチニブ(スプリセル)、ボスチニブ(ボシュリフ)があります。これらの有効率は非常に高く、また、従来のインターフェロン療法などに比べ治療が楽です。同系の標準薬であるイマチニブの登場により、慢性骨髄性白血病の5年生存率は90%以上に達しました。
  • 作用的にはイマチニブとほぼ同じですが、Bcr-Ablチロシンキナーゼにより選択的に作用し、またイマチニブ耐性の変異型Bcr-Ablに対しても阻害活性を示します。実際の臨床試験でも1次治療ではイマチニブを上回る寛解率が得られ、またイマチニブ抵抗性の2次治療においても高い有効性が示されています。当初の適応症にはイマチニブ抵抗性というしばりがありましたが、現在は、初発の慢性骨髄性白血病に対する1次治療薬としても使用可能です。また、小児に対する効能と用法も承認されています。
  • 最近の臨床試験で無治療寛解維持データが得られています。深い寛解が得られれば、薬をやめても長く寛解を持続できる可能性があるのです。
  • がん細胞の特定の分子だけを阻害するため、腫瘍選択性が低い従来の抗がん薬やインターフェロンに比べ副作用が軽減され治療も楽です。ただし、特異な副作用として骨髄抑制にともなう血液障害、肝障害、高血糖、体液貯留や不整脈などに注意が必要なことに変わりありません。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
  • 注意事項や副作用を含め、医師から この薬の有効性や安全性について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

心臓病のある人は、病状の悪化に注意するなど慎重に用いるようにします。また、B型肝炎ウイルスに感染したことのある人は、その再活性化に注意が必要です。高齢の人は、むくみの副作用がでやすいです。

  • 注意が必要なケース..心臓病、肝臓病、膵炎、B型肝炎既往歴またはB型肝炎ウイルスをもっている人、イマチニブによる副作用歴のある人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)は、この薬の血中濃度を上昇させ、不整脈など重い副作用をまねくおそれがあります。
  • 抗結核薬のリファンピシン(リファジン)や抗けいれん薬のフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)など ある種の薬と併用すると、この薬の作用が弱まるかもしれません。
  • 抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)の血中濃度が上昇し、出血しやすくなる可能性があります。
  • ランソプラゾール(タケプロン)などプロトンポンプ阻害作用をもつ強力な制酸薬(胃薬)と併用すると、この薬の吸収が低下するおそれがあります。その他の制酸薬については、服用時間をずらすなどで影響をなくせるかもしれません。胃薬を飲んでいる場合は、医師とよく相談してください。
  • 不整脈(QT延長)の副作用をもつ薬と併用する場合は、その発現に注意しなければなりません。多くの抗不整脈薬のほか、抗精神病薬のピモジド(オーラップ)、抗うつ薬のクロミプラミン(アナフラニール)やイミプラミン(トフラニール)、高脂血症治療薬のプロブコール(ロレルコ、シンレスタール)、抗菌薬のモキシフロキサシン(アベロックス)やスパルフロキサシン(スパラ)、マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)など要注意です。
  • グレープフルーツジュースは飲まないでください。この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなるおそれがあります。
  • セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品は控えてください。この薬の作用を弱めるかもしれません。

【使用にあたり】
  • 病状や治療方針によって飲み方が違います。決められた飲み方を厳守してください。通常、1日2回、12時間毎を目安に服用します。食事の影響を避けるため、食事の1時間以上前または食後2時間以降にしてください。多めの水で飲むとよいでしょう。
  • 発熱、動悸、息切れ、咳、むくみ、急激な体重増加、出血など、いつもと違う症状があらわれたら医師に伝えてください。副作用の程度により、減量または一時休止することがあります。

【検査】

副作用や効果をチェックするため、飲み始めは頻繁に、その後も定期的に検査を受けなければなりません。血液検査、肝機能検査、腎機能検査をはじめ、体重測定や心電図検査も重要です。

【妊娠・授乳】
  • おなかの赤ちゃんの発育に悪い影響をおよぼすおそれがあります。このため妊娠中は禁止です。
  • 妊娠可能な女性は、医師の指示に従い服薬中および服薬終了後一定期間 適切に避妊してください。
  • 授乳は中止してください。母乳に薬が移行する可能性があります。

【食生活】
  • めまいがしたり、目がかすんで見えることがあります。このような場合は、車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作や高所作業はしないでください。
  • むくみの副作用予防に、塩分は控えめにしたほうがよいでしょう。
効能 慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病
用法 通常、成人はニロチニブとして1回400mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日2回、12時間毎を目安に経口服用する。ただし、初発の慢性期の慢性骨髄性白血病の場合には、1回服用量は300mgとする。なお、患者の状態により適宜減量する。

通常、小児は体表面積に合わせて次の服用量(ニロチニブとして1回約230mg/m2)を食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日2回、12時間毎を目安に経口服用する。なお、患者の状態により適宜減量する。
  • 体表面積 0.32m2以下:1回服用量 50mg
  • 体表面積 0.33〜0.54m2:1回服用量 100mg
  • 体表面積 0.55〜0.76m2:1回服用量 150mg
  • 体表面積 0.77〜0.97m2:1回服用量 200mg
  • 体表面積 0.98〜1.19m2:1回服用量 250mg
  • 体表面積 1.20〜1.41m2:1回服用量 300mg
  • 体表面積 1.42〜1.63m2:1回服用量 350mg
  • 体表面積 1.64m2以上:1回服用量 400mg

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 吐き気や嘔吐、発疹、頭痛、むくみ、筋肉のつっぱり・けいれん、発熱など、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。

副作用でもっとも重要なのが骨髄抑制にともなう血球の減少です。白血球が極端に減少すると、体の抵抗力がひどく落ちて感染症にかかりやすくなります。また、血小板減少により出血を生じることもあります。発熱やのどの痛み、あるいは歯茎出血・皮下出血など出血傾向に注意しましょう。

多くはありませんが、特異な副作用として体液貯留や不整脈(QT延長)を起こすことがあります。もともと心臓病のある人は十分な注意が必要です。さらに高血糖が比較的多くみられるほか、重い肝障害や膵炎、間質性肺炎の報告もあります。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐ医師と連絡をとってください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
  • 出血(脳出血、硬膜下出血、消化管出血)..激しい頭痛、片側の麻痺、うまく話せない、腹痛、下血(黒いタール状の便)、吐血。
  • 重い感染症..発熱、寒気、だるさ、食欲不振、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚発赤・小水疱・ピリピリ痛い、水ぶくれ、できもの。
  • 体液貯留(胸水、肺水腫、腹水、心不全)..息苦しい、胸苦しい、咳、むくみ、お腹のはり、急な体重増加。
  • 狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全..締め付けられるような胸の痛み、冷汗、動悸、脈の乱れ、めまい、失神、息苦しい、むくみ、体重増加。
  • 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 腫瘍崩壊症候群..全身のむくみ、尿が少ない・出ない、血尿、脇腹の痛み。
  • 末梢動脈閉塞性疾患..手足の冷え・しびれ・痛み、歩行による症状悪化。
  • 高血糖..異常にのどが渇く、水をがぶ飲み、多尿、頻尿。

【その他】
  • 食欲不振、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、腹痛
  • むくみ(手足、顔、目の周り)、体重増加
  • 筋肉痛、筋肉のつっぱり・けいれん、関節痛
  • 頭痛、不眠、めまい、発熱、咳、けん怠感
  • 発疹、発赤、かゆみ、皮膚乾燥、脱毛
  • かすみ目、まぶしい、視力低下
  • 動悸、高血圧
  • 肝機能異常、糖尿病、脂質異常、高尿酸血症

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。