PR 人気の薬系書籍ベスト30 「くすり本NAVI 」 おくすり 110番

成分(一般名) ソラフェニブ トシル酸塩
製品例 ネクサバール錠200mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/他の抗悪性腫瘍剤/抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 がんの増殖をおさえるお薬です。腎臓がん、肝臓がん、甲状腺がんの治療に用います。
作用

【働き1】

腎臓のがんのうち、もっとも多いのが“腎細胞がん”です。一般的な抗がん薬による化学療法が効きにくいため、手術による切除が第一の選択となります。さらに手術後に、インターフェロンやインターロイキンなどサイトカイン製剤による免疫療法も広くおこなわれています。

このお薬は血管新生阻害作用をもつ新しいタイプの抗がん薬です。がんを養う血管の新生をじゃまして、がんの勢いをなくします。酸素や栄養の供給を止めて兵糧攻めにするわけです。昔からの抗がん薬とは効きかたが違うため、腎細胞がんに対しても一定の効果が期待できます。手術が困難な場合や転移のある腎細胞がんの治療に使います。

【働き2】

原発性の肝臓がんの約9割が“肝細胞がん”です。従来の抗がん薬による全身療法は効果が低いので、手術による切除やエタノール注入療法などの局所療法が広くおこなわれています。

このお薬は、がん細胞の増殖にかかわる酵素の働きを阻害する新しいタイプの抗がん薬です。昔からの抗がん薬とは効きかたが違うため、手術ができない進行した肝臓がんに対しても一定の効果が期待できます。効き方には個人差がありますが、より長生きできる可能性があります。

【働き3】

甲状腺がんは組織型や臨床経過の違いでいくつかに分類され、その多くは分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん)に属します。分化型甲状腺がんの第一の治療は、治癒をめざす外科的切除術です。もし進行して摘出が困難な場合は、一般的な抗がん薬が効きにくいので、放射性ヨウ素治療が試みられます。

このお薬は、がん細胞の増殖にかかわる酵素の働きを阻害する新しいタイプの抗がん薬です。昔からの抗がん薬とは効きかたが違うため、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんに対しても一定の効果が期待できます。効き方には個人差がありますが、症状が軽減し より長生きできる可能性があります。分化型をはじめとする甲状腺がんの治療に用いられます。

【薬理】

がん細胞の増殖や血管新生にはキナーゼというある種の酵素群が関係しています。この薬は、複数のキナーゼを阻害することで、がん増殖や血管新生をうながすシグナル伝達をさまたげます。その結果、がんの成長が抑制され、予後の改善につながります。

【臨床試験-1】

この薬の有効性をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験が海外でおこなわれています。参加したのは一次治療をすでにおこなっている進行性の腎細胞がんの患者さん769人。どちらを飲むかは、くじ引きで半々に分かれるようにします。有効性の判断材料は、がんが大きくならず病状が安定している期間「無増悪生存期間」と「全生存期間」です。

その結果、この薬を飲んでいた人達の無増悪生存期間の中央値は168日でした。一方、プラセボでは84日にとどまりました。この薬を飲んでいた人達のほうが無増悪生存期間が明らかに延長し、プラセボを上回る有効性が確認できたわけです。なお、全生存期間については、この薬を飲んでいた人達のほうが延長する傾向が示されたものの、最終的に延命効果を証明するには至りませんでした。

【臨床試験-2】

肝がんに対する有効性をプラセボ(にせ薬)と比較する試験もおこなわれています。参加したのは手術が困難な進行した肝細胞がんの患者さん602人。有効性の判断材料は、「全生存期間」です。

その結果、この薬を飲んでいた人達の全生存期間の中央値は324日でした。一方、プラセボでは241日にとどまりました。この薬を飲んでいた人達のほうが生存期間が明らかに延長し、プラセボを上回る有効性が確認できたわけです。なお、根治的治療をめざす術後補助療法としての有効性は認められていません。

【臨床試験-3】

甲状腺がんに対する有効性をプラセボ(にせ薬)と比較する試験もおこなわれています。参加したのは手術が困難な進行した分化型甲状腺がんで放射性ヨウ素治療抵抗性の患者さん417人。有効性の判断材料は、病状が安定している「無増悪生存期間」です。

その結果、この薬を飲んでいた人達207人の無増悪生存期間の中央値は329日でした。一方、プラセボの人達210人では175日にとどまりました。この薬を飲んでいた人達のほうが無増悪生存期間が明らかに延長し、プラセボを上回る有効性が確認できたわけです。そして、病勢進行または死亡のリスクが41%低下しました。
特徴
  • いわゆる分子標的治療薬です。がんの増殖過程における指令系統を分子レベルでブロックします。標的分子は、細胞増殖と血管新生のそれぞれにかかわる2種類のキナーゼという酵素群(Rafキナーゼ、チロシンキナーゼ等)。このような作用機序からキナーゼ阻害薬と呼ばれています。機能が異なる複数のキナーゼを阻害することから、マルチキナーゼ阻害薬と呼ぶこともあります。
  • 進行して手術ができない腎細胞がんや肝細胞がんに対する新たな治療の選択肢となります。肝細胞がんの臨床試験で、プラセボ(にせ薬)と比較して44%ほど全生存期間中央値を延ばすことが示されています。肝臓がんの全身治療薬として延命効果が認められたのは この薬が初めてです。
  • 一般的な抗がん薬や類似薬のスニチニブ (スーテント)で頻発する骨髄抑制にともなう血液障害の副作用は少ないです。一方で、手足症候群や発疹などの皮膚症状、高血圧、出血など特異な副作用が多くみられます。
注意
【診察で】
  • 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
  • 有効性だけでなく、副作用や注意事項についても十分に説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。高血圧症を含め循環器系に病気のある人は慎重に用いるようにします。妊娠中は絶対禁忌です。

  • 適さないケース..妊娠中。
  • 注意が必要なケース..重い肝臓病、高血圧、心臓病、脳卒中、アレルギー体質、手術後まもない人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

飲み合わせによっては、薬の作用が強くなりすぎたり、逆に効果が弱くなってしまうことがあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • 飲み合わせに注意..リファンピシン(リファジン)、フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、カペシタビン(ゼローダ)、セイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品など。

【使用にあたり】
  • 決められた飲み方を守ってください。ふつう、1回2錠、1日2回服用します。副作用がひどい場合、医師の判断で減量することがあります。
  • 基本的に食事とは関係なく飲めます。食前でも食後でもかまいません。ただし、高脂肪食をとるときは、その食事の1時間前から食後2時間までの間を避けてください。高脂肪食とは、多量の肉や卵、乳製品、揚げ物など脂肪分の多い食事のことです。卵1個、牛乳1本くらいを含む、ふつうの和食の範囲でしたら、それほど気にしなくてよいと思います。
  • 手足の皮疹、血圧上昇、下痢、出血、息切れ、咳、発熱、意識障害など、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師に連絡してください。

【検査】

副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。血圧は、診察の日に必ず測ってもらいましょう。肝臓や膵臓、肺、血液の検査も大事です。とくに肝臓がんにおいては、肝性脳症につながる血中アンモニア値の上昇に十分留意します。また、甲状腺がんでは血清カルシウム濃度と甲状腺刺激ホルモン濃度を測定する必要があります。

【妊娠・授乳】

動物実験で奇形を作る作用が強いことが分かっています。妊娠中もしくはその可能性のある女性は使用できません。また、服用中および服用中止後少なくとも2週間は避妊しなければなりません。
効能
  • 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
  • 切除不能な肝細胞癌
  • 根治切除不能な甲状腺癌
用法 通常、成人にはソラフェニブとして1回400mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
  • 注意:高脂肪食の食後に本剤を投与した場合、血漿中濃度が低下するとの報告がある。高脂肪食摂取時には食事の1時間前から食後2時間までの間を避けて服用すること。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 半分以上の人に出るのが“手足症候群”など皮膚症状です。手の平や足の裏に皮疹や紅斑があらわれ、痛みをともなうこともあります。塗り薬で治療すれば多くは継続可能ですが、症状がひどいときは、減量もしくは休薬しなければなりません。

次に多いのが、下痢や吐き気など消化器症状、高血圧、それと甲状腺がんにおける低カルシウム血症などです。高血圧に対しては降圧薬で対処できます。ただ、まれに急激な血圧上昇と全身症状をともなう重篤な高血圧クリーゼを起こすことがあります。こまめに血圧測定をおこなうなど血圧の管理が重要です。

血管新生阻害作用から出血しやすくなったり、傷口が治りにくくなることもあります。たいてい軽い出血で済みますが、命にかかわるような消化管出血や脳出血を生じる例もあるようです。鼻血や血痰など出血がみられた場合は、医師に報告し指示をあおいでください。

そのほか、肺障害や消化管穿孔、心筋梗塞、肝障害、肝性脳症、膵炎などの報告があるようです。肺障害では、息切れ、咳、発熱といった症状があらわれます。また、肝臓がんや肝硬変のある人は、肝性脳症が疑われる意識障害の発現に注意が必要です。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐ病院スタッフに連絡してください。予防のために、頻回な検査も欠かせません。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 手足症候群、はく脱性皮膚炎..手の平や足の裏の皮疹、紅斑、腫れ、水ぶくれ、皮がむける、痛み。
  • 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
  • 高血圧クリーゼ..急激な血圧上昇、頭痛、吐き気、意識がうすれる。
  • 白質脳症..頭痛、もの忘れ、ボーとする、歩行時のふらつき、手足のしびれ・まひ、うまく話せない、動作がにぶる、けいれん、二重に見える、見えにくい。
  • 重い腸炎、消化管穿孔、消化管潰瘍..激しい腹痛・下痢、血液便、吐血。
  • 重い出血..鼻血、血尿、青あざ、血豆、血痰、血液便、吐血、脳出血(頭痛、ふらつき、手足のしびれ・まひ、しゃべれない、顔がゆがむ、意識がうすれる)。
  • 狭心症、心筋梗塞、心不全..胸の痛み・違和感・圧迫感、冷汗、締め付けられるような胸の痛み、息苦しい、むくみ、体重増加。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 肝性脳症..眠気、気分の変化、意識の乱れ、けいれん、昏睡。
  • 膵炎..吐き気、吐く、上腹部〜背中の激しい痛み。
  • 肺障害(間質性肺炎など)..息切れ、息苦しさ、から咳、痰、発熱。
  • 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
  • 腎臓の重い症状..尿が少ない・出ない、尿の濁り・泡立ち、血尿、むくみ、だるい、吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹。
  • 低ナトリウム血症..だるい、吐き気、嘔吐、意識もうろう、意味不明な言動、けいれん。
  • ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、ゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
  • 横紋筋融解症..手足のしびれ・けいれん、力が入らない、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
  • 低カルシウム血症..手足のふるえ、しびれ、ピリピリ感、ぴくつき、筋肉の脱力感、筋肉けいれん、気分変調、動悸、血圧低下、全身けいれん、意識もうろう。

【その他】
  • 発疹、脱毛、かゆみ、肌荒れ、じん麻疹
  • 高血圧
  • 下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、口内炎
  • 疲労感、嗄声、傷が治りにくい
  • リンパ球減少、肝臓・膵臓の検査値異常、低リン酸血症

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
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