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成分(一般名) エルロチニブ塩酸塩
製品例 タルセバ錠25mg~100mg~150mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 その他の腫瘍用薬/キナゾリン系/EGFRチロシンキナーゼ阻害薬

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 肺がんや膵がんを治療するお薬です。
作用

【働き】

肺がんは、細胞の型あるいは薬の効き具合など治療上の観点から、“小細胞肺がん”と、“非小細胞肺がん”に大別されます。従来からの抗がん薬がよく効く小細胞肺がんに対し、非小細胞肺がんでは薬の効き目が悪いため 手術による切除を第一に考えなければなりません。

このお薬は新しい作用機序をもつ抗がん薬です。非小細胞肺がんに対しても一定の効果が期待できることから、進行して手術が困難な場合あるいは再発した非小細胞肺がんに使います。効き方には個人差がありますが、よく効くと、がん細胞の増殖が止まり、がんが小さくなります。そして 呼吸困難や痛みが軽減し、より長生きできる可能性もあります。

そのほか、膵がんに対する効能も追認されました。膵がんは膵臓にできるがんです。早期には自覚症状がほとんどなく、発見が遅れてしまい、外科的に取り除くことができない場合があります。このような場合に、このお薬とゲムシタビン注射薬(ジェムザール)の併用療法をおこないます。がん細胞の増殖がおさえられ、より長生きできる可能性があります。

【薬理】

肺がんの原因のひとつとして、肺がん細胞表面に発現する上皮成長因子受容体“EGFR”の遺伝子異常があげられます。この異常はEGFRのチロシンキナーゼ活性を無秩序に高め、がん細胞の増殖や正常細胞のがん化をもたらします。

この薬は、チロシンキナーゼ阻害薬の一種です(EGFR-TK阻害薬)。EGFRの病的なチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、がん細胞の増殖をうながす情報伝達系の流れを遮断します。その結果として、がん細胞の増殖がおさえられ、がんが小さくなるわけです。

【臨床試験-1】

この薬の延命効果をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験が行われています。参加したのは、他の標準的な抗がん薬の治療歴があり、その効果が期待できなくなった進行・再発性の非小細胞肺がんの患者さん731人、EGFR遺伝子変異の有無は問いません。このうち488人はこの薬を、別の243人はプラセボを服用します。

その結果、この薬を飲んでいた人達の生存期間の平均(中央値)は6.7カ月、プラセボの人達は4.7カ月でした。また、1年生存率は この薬で31%、プラセボで22%でした。二次あるいは三次治療としてこの薬を飲んでいた人達のほうが、生存期間が有意に延長することが確認できたわけです。

【臨床試験-2】

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対する一次治療としての有効性を調べる臨床試験が海外でおこなわれています。参加したのは、EGFR遺伝子変異のある再発・進行性非小細胞肺がんで、がん化学療法をまだ受けていない患者さん153人。うち77人はこの薬を内服、別の76人は注射による既存の標準的化学療法をおこない、それぞれの効果を比較します。有効性の判断材料は、がんが大きくならず病状が安定している期間「無増悪生存期間」です。

その結果、この薬を飲んでいた人達の無増悪生存期間の中央値は9.4ヶ月でした。一方、標準的化学療法を受けた人達の中央値は5.2ヶ月でした。この薬を飲んでいた人達のほうが無増悪生存期間が明らかに延長し、既存の化学療法を上回る有効性が確認できたわけです。なお、全生存期間については、検証不十分なのですが、一次治療薬としてこの薬を用いることにより明らかに悪化する傾向は認められていません。
特徴
  • チロシンキナーゼ阻害薬の一種のEGFR阻害薬(EGFR-TKI)です。一般的な抗がん薬とは異なる“分子標的薬”の部類で、がん細胞の増殖過程における指令系統を分子レベルでブロックします。この薬の標的は、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ(TK)。化学構造的には、キナゾリン系の小分子で、ゲフィチニブ(イレッサ)、アファチニブ (ジオトリフ)と同系です。
  • 肺がんにおいては、他の標準的な化学療法が無効または効果不十分な場合に、この薬による二次治療が試みられます。この場合、EGFR遺伝子変異の有無を問いません。EGFR遺伝子変異陽性の場合は、一次治療薬としてはじめからこの薬を用いることができます。よい効果が望める背景因子として、EGFR遺伝子変異陽性、腺がん、東洋人、非喫煙などがあげられます。なお、類薬のゲフィチニブ(イレッサ)の適応症においてはEGFR遺伝子変異陽性に限定されます。
  • 一般的な抗がん薬でしばしば問題となる骨髄抑制にともなう血液障害の副作用はほとんどありません(膵癌では、ゲムシタビンとの併用により頻発します)。一方で、間質性肺炎など肺障害がかなりの頻度で発現し、死亡例も報告されています。このため、緊急時に十分に対応できる医療施設で、専門医による慎重な診断のうえで処方されなければなりません。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は原則使用しません。
  • 有効性だけでなく、副作用や注意事項についても十分に説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

間質性肺炎など肺の病気を併発している人、またその既往歴のある人は慎重に用いなければなりません。肺疾患が悪化したり、再発するおそれがあるためです。肝臓病のある人は、その病状の悪化や薬の血中濃度の上昇に注意が必要です。

  • 注意が必要なケース..肺の病気(間質性肺炎、肺感染症等)、肝臓病、消化管潰瘍、腸管憩室のある人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • アゾール系抗真菌薬(イトリゾール等)やマクロライド系抗生物質(エリスロシン、クラリス等)などは、この薬の血中濃度を上昇させ重い副作用をまねくおそれがあります。
  • 抗結核薬(リファジン)や抗けいれん薬(アレビアチン、ヒダントール、テグレトール、フェノバール等)など、ある種の薬との併用によりこの薬の作用が減弱するかもしれません。
  • 胃薬のプロトンポンプ阻害薬(タケプロン等)やH2受容体拮抗薬(ガスター等)を飲んでいると、胃酸の低下によりこの薬の吸収が悪くなる可能性があります。
  • 抗血栓薬のワルファリンの作用が強まり、出血を生じたという報告があります。
  • グレープフルーツジュースは飲まないでください。この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなるおそれがあります。
  • セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品は控えてください。この薬の作用を弱めるかもしれません。
  • 原則、タバコは吸わないでください。喫煙がこの薬の血中濃度に影響する可能性があるためです。もし、服用中にやめていたタバコをはじめるとき、逆に禁煙をおこなうときは事前に医師に申し出てください。

【使用にあたり】
  • 治療開始にあたり、必要に応じて入院します。間質性肺炎など重い副作用の発現に細心の注意が必要なためです。
  • 決められた飲み方を厳守してください。服用時間は空腹時です。食事の前後は避け、十分間隔をあける必要があります。食事といっしょですと血中濃度が上昇し副作用が強まるおそれがあるためです。また、牛乳などで飲まず、水だけで飲むようにしてください。
  • 咳や息切れ、発熱、下痢、発疹など、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と相談してください。

【検査】
  • 肺がんの場合、EGFR遺伝子に変異があるか調べます。一次治療として適応が認められるのは、EGFR遺伝子変異陽性(Exon19の欠失変異またはExon21のL858R変異)の場合です。
  • 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。肝機能や腎機能検査のほか、肺に副作用がでていないか 胸部レントゲン(CT)検査で確認します。とくに膵がんでは、治療に先立ち、肺に病気がないかを検査します。

【妊娠・授乳】

妊娠中は、治療上やむを得ない場合を除き、できるだけ使用しないようにします。また、服薬中は妊娠しないように避妊をしてください。
効能
【効能A】
  • 切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌
  • EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性で、がん化学療法未治療の非小細胞肺癌

【効能B】

治癒切除不能な膵癌(錠25mg、錠100mgのみ適応)
用法

【効能A】

通常、成人はエルロチニブとして150mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日1回経口服用する。なお、患者の状態により適宜減量する。

【効能B】

ゲムシタビンとの併用において、通常、成人にはエルロチニブとして100mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 ほとんどの人に現れるのが皮膚症状です。ニキビのような発疹ができたり、皮膚が乾燥し痒くなったりします。たいていは軽症ですが、化膿したり水疱ができて皮がむけるなど症状が強い場合はすぐに受診してください。次に多いのが下痢で、発現頻度は7割くらいです。激しい下痢が続くと脱水症状を起こしますので油断できません。この場合、下痢止め薬や点滴で対処するようにします。

重い副作用でもっとも重要なのが間質性肺炎など肺に起こる障害です。から咳、息切れ、息苦しさ、発熱といった症状があらわれたら、ただちに受診してください。対応が遅れると、重症化し治療が困難になります。ほかにも、肝障害や消化管潰瘍、角膜潰瘍など注意を要する副作用があります。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、医師と連絡をとってください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
  • 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 重度の下痢・脱水..激しい下痢、嘔吐、尿が出ない
  • 急性腎障害..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
  • 重いざ瘡様皮疹・その他皮膚症状..ニキビのような重い発疹、化膿、ひどい皮膚乾燥・亀裂、爪障害、強いかゆみ。
  • 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
  • 消化管潰瘍・胃腸出血..胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、吐血(コーヒー色のものを吐く)、下血(血液便、黒いタール状の便)。
  • 角膜潰瘍・角膜穿孔..目の痛み

【その他】
  • ニキビのような発疹、皮膚乾燥、肌荒れ、かゆみ、爪の異常、脱毛
  • 食欲不振、吐き気、下痢、腹痛、口内炎
  • 肝機能異常
  • 結膜炎、角膜炎

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。