概説 |
がん細胞をおさえるお薬です。急性前骨髄球性白血病の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 前骨髄球の分化を正常化させる作用があります。そのため、前骨髄球が異常に増加する急性前骨髄球性白血病(APL)に適応します。

- 【薬理】

- 前骨髄球の分化誘導をブロックしてしまうキメラ遺伝子の働きを阻害します。そうすることで、前骨髄球の分化が進み、増加した前骨髄球が減少し血液が正常になります。
|
特徴 | ビタミンAの活性代謝物で、略号はATRA。白血病のうちの前骨髄球性白血病に対して第一選択されます。その効き目は特効的で、10人中8〜9人くらいの割合でほぼ完治できます。 |
注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
- 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。

- 【注意する人】

- 病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。肝臓や腎臓が悪い人など使用できないことがあります。妊娠中は絶対禁忌です。
- 適さないケース..肝臓病、腎臓病、妊娠中。
- 注意が必要なケース..糖尿病、肥満、アルコール中毒症、脂質代謝異常、25歳以下、高齢の人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- ビタミンA(チョコラA)との併用は禁止です。そのほかにも、抗けいれん薬のフェニトインや抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)など注意が必要な飲み合わせがあります。
- 飲み合わせの悪い薬..ビタミンA(チョコラA)
- 飲み合わせに注意..フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、トラネキサム酸(トランサミン)、イトラコナゾール(イトリゾール)、フルコナゾール(ジフルカン)、ボリコナゾール(ブイフェンド)など。
 【使用にあたり】
- 病状や治療方針によって飲み方が違います。決められた飲み方を厳守してください。
- 発熱、皮下出血、空咳、息切れ、関節痛など、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と相談してください。
 【検査】
- 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。
- 女性では、必要に応じて妊娠検査をおこないます。

- 【妊娠・授乳】

- 奇形を作る作用が強いので妊娠出産の予定のある女性には基本的に用いません。やむおえない場合、妊娠検査などで妊娠を否定したうえで治療を開始します。そして、服用中および服用中止後少なくとも1ヵ月間は避妊しなければなりません。
|
効能 |
急性前骨髄球性白血病 |
用法 |
通常、成人は寛解導入療法としてトレチノイン1日60〜80mg(45mg/m2)を3回に分けて食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
口や唇の乾燥、肌荒れ、発熱、頭痛、中性脂肪の上昇、肝機能値の異常など、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。
副作用でもっとも重要なのが「レチノイン酸症候群」です。これは、ビタミンA誘導体に特徴的なもので、肺障害をはじめ全身の臓器がおかしくなる症状です。発熱、空咳、息切れ、息苦しさなどの症状に注意しましょう。もし起きたなら、大量のステロイド薬で対処します。
そのほか、白血球増多症や血栓症などもみられます。下記のような初期症状をふまえ、なにか普段と違う「おかしいな」と感じたら、すぐ医師に連絡してください。予防のために、頻回な検査も欠かせません。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- レチノイン酸症候群..発熱、空咳、息切れ、息苦しさ、胸苦しさ、ひどい倦怠感
- 白血球増多症..ひどい倦怠感、めまい、立ちくらみ、息切れ
- 血栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。
- 血管炎..足のしびれ、痛み、皮下出血(青あざ)。
- 重い感染症..発熱、けん怠感、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚がピリピリ痛い、皮膚の発赤・水ぶくれ・できもの。
- 錯乱..混乱・もうろう状態、取り乱す、意味不明な言動
 【その他】
- 口や唇の乾燥、口内炎、肌荒れ、紅斑、発赤、発疹
- 発熱、頭痛、めまい、咳
- 食欲不振、吐き気、吐く
- 筋肉痛、関節痛
- 中性脂肪の上昇、肝機能値の異常
|