概説 |
乳がんを治療するお薬です。 |
作用 | 乳がんは、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の影響を受けて大きくなる性質があります。このお薬は、乳がん細胞にあるエストロゲン受容体をブロックすることで、がん細胞の増殖をおさえます。その結果、腫瘍の勢いがなくなり、病状がおさまります。
そのような作用から、ホルモン療法(内分泌療法)として乳がんの治療に用いられます。よい適応となるのはホルモン反応性が高い女性ホルモン受容体陽性乳がんです。このような場合、高い有効率が期待でき、予後の改善につながります。進行乳がんに用いるほか、手術後の再発予防目的に補助療法として用いることも多いです。 |
特徴 | 非ステロイド性の抗女性ホルモン薬(抗エストロゲン薬)です。略号はTAM。男性ホルモン様作用がなく、副作用も少ないほうです。優れた有効性が認められており、術後補助療法を含め 乳がんの標準治療薬として広く用いられています。閉経前・閉経後を問わず、女性ホルモン受容体(HR:ER・PgR)が陽性の場合に優先される治療薬です。 |
注意 |
【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人は、医師に伝えてください。妊娠していないことを確認したうえで使用する必要があります。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。
- 【注意する人】
- 白血球減少、血小板減少、あるいは遺伝性血管浮腫のある人は病状の悪化に注意するなど慎重に用います。妊娠中は禁止です。
【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)や抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ)の作用を増強するおそれがあるため、これらとの併用には注意が必要です。
- 結核の薬のリファンピシン(リファジン)や、SSRIと呼ばれる系統の抗うつ薬、たとえばパロキセチン(パキシル)などは、この薬の作用を減弱させる可能性があります。
【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。再発予防のために長期服用となることも多いです。決められた期間きちんと続けましょう。
- 服用中はピル(経口避妊薬)以外の方法で避妊してください。
- 【検査】
- 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。血液や肝臓の検査のほか、必要に応じて視力や子宮に異常がないか調べます。
【妊娠・授乳】
- 妊婦中または妊娠している可能性のある女性は使用できません。また、妊娠可能な女性は、医師の指示通りに、服薬中および服薬終了後9カ月間は適切な方法で避妊してください。
- 男性も、服薬中および服薬終了後6カ月間、バリア法(コンドーム)で避妊してください。
【食生活】
- たとえば長時間飛行など、体を動かせない状態が長く続くと、血栓症のリスクが少し高まるかもしれません。水分を多くとり、できるだけ体を動かすようにしましょう。
- できたらタバコは控えましょう。タバコは血栓症の危険性を増やします。
- 【備考】
- 乳がんでは切除による根治を目指しますが、薬の効き目がよいので薬物治療も大事です。薬物治療には大きく2つのやり方があります。ホルモン関連薬によるホルモン療法(内分泌療法)と、一般的な抗がん薬による化学療法の2つです。そして治療目的や乳がんのタイプ、年齢(閉経前・後)、進行具合、悪性度などにより使い分け、ときに併用します。基本的には、女性ホルモン受容体(HR:ER・PgR)が陽性ならばホルモン療法を、そうでなければ化学療法を優先します。実際には約7割は前者に属し、ホルモン療法が適用されるケースが多いです。抗エストロゲン薬(この薬)は、ホルモン療法として標準的に用いらています。
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効能 |
乳癌 |
用法 |
通常、成人はタモキシフェンとして1日20mgを1〜2回に分割経口服用する。なお、症状により適宜増量できるが、1日最高量はタモキシフェンとして40mgまでとする。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
人によっては生理が不順になることがあります。吐き気や嘔吐、食欲不振などもみられます。重いものは少ないですが、この薬に特徴的なのが目の副作用です。視力の低下やかすみ目、視野の異常などに注意しましょう。
そのほか、血栓塞栓症にも念のため注意が必要です。血液の固まりで血管が詰まることで起こります。生じる所はいろいろです。手足、とくにふくらはぎの痛みやシビレ、突然の息切れ、胸の痛み、激しい頭痛、めまい、急に視力が落ちるといった症状が前触れとなります。万一のことですが、そのような症状があらわれたら、すぐ医師に連絡してください。
さらに、長期服用により子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープを生じるおそれがあります。まれな例ですが子宮体がんの報告もあるようです。もし、予定外の性器出血がみられたら、医師に報告するようにしてください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 視力異常・視覚障害..目の疲れ、視力低下、かすみ目、視野の異常
- 血栓塞栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 子宮筋腫・子宮内膜症・子宮内膜ポリープ..性器不正出血、下腹部の強い痛み。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- アナフィラキシー様症状..じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、息苦しい(ゼーゼー)。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
【その他】
- 生理不順、無月経、性器不正出血
- 吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛
- 頭痛、めまい、ほてり、発汗、むくみ、体重増加
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