概説 |
がん細胞を抑えるお薬です。白血病やリンパ腫の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き-1】

- 白血病は、白血球が腫瘍化する いわゆる血液のがんです。このうち、慢性リンパ性白血病(CLL)は、リンパ球を発生起源とし、進行がゆるやかな病態を言います。数年は比較的安定していますが、進行期になると貧血や出血、感染症などを起こしやすくなります。
このお薬は、そのような慢性リンパ性白血病に有効な抗がん薬です。白血病細胞のDNAの合成を阻害することで、その増殖を抑制します。完治は難しいですが、50〜80%くらいの人に有効で、身体的所見や血液の性状、あるいは自覚症状の改善が望めます。

- 【働き-2】

- リンパ腫は、リンパ系細胞が腫瘍化するがんの一種です。リンパ節をはじめ体のあらゆる臓器で起こりえます。リンパ腫はさらに、細胞起源などによりさまざまなタイプに分かれます。代表的なものとして、白血球の一種のB細胞(Bリンパ球)が腫瘍化するB細胞性非ホジキンリンパ腫があります。
このお薬は、そのようなリンパ腫に有効な抗がん薬です。リンパ系に発生したがん細胞の増殖をおさえる作用があります。おもな適応症は、B細胞性非ホジキンリンパ腫と、マントル細胞リンパ腫です。ただし、一次治療薬とはせず、リツキシマブ(リツキサン注)を含め他の化学療法が無効な場合や、再発例に対して用いるのが一般的です。

- 【薬理】

- DNAと呼ばれる核酸には、細胞の増殖に必要な遺伝情報が組み込まれています。このお薬は、新たなDNAの合成を阻害、あるいは修復を阻害することによって、がん細胞の増殖をおさえます。核酸の代謝系に拮抗的に作用するので、広く「代謝拮抗薬」と呼ばれる部類です。
 【臨床試験】
- 治療歴のない慢性リンパ性白血病の患者さん81人に、この薬による治療が試みられました。その結果、病状が完全におさまった人(完全寛解)が10人、病状が落ち着いた人(部分寛解)が55人で、奏効率は80%でした。
- 治療歴のある慢性リンパ性白血病の患者さん78人に、この薬による再治療が試みられました。その結果、病状が完全におさまった人(完全寛解)が14人、病状が落ち着いた人(部分寛解)が26人で、奏効率は51%でした。
- 治療歴のある低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫の患者さん46人に、この薬による再治療が試みられました。その結果、病状が完全におさまった人(完全寛解)が14人、病状が落ち着いた人(部分寛解)が16人で、奏効率は65%でした。
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特徴 | 代謝拮抗薬に分類される内用抗がん薬です。有効成分は、プリンヌクレオチド誘導体のフルダラビン(FLD)。慢性リンパ性白血病に対する主要な治療薬で、錠剤のほか同成分の注射薬も使用されています。 |
注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
- 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。

- 【注意する人】

- 病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。ウイルス性肝炎を含め、感染症を合併している人はとくに注意が必要です。また、腎臓の働きが落ちている人は、少量にするなど慎重に用いるようにします。
- 適さないケース..重い腎臓病、妊娠中。
- 注意が必要なケース..腎臓病、肝臓病、感染症を合併している人、ウイルス性肝炎、肝炎ウイルスをもっている人、妊娠する可能性のある女性、高齢の人など。
 【使用にあたり】
- 体の大きさによって服用量が違います。腎臓の働き具合も考慮されます。決められた錠数を厳守してください。
- 服薬と休薬を繰り返します。ふつう、1日1回5日間服用し、その後23日間休みます。必ず休薬しなければなりません。
- 吐き気や嘔吐、下痢、ふらつき、口内炎、また、発熱やかぜ症状を含め、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と相談してください。

- 【検査】

- 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中または妊娠している可能性のある女性は使用禁止です。催奇形性作用が報告されているためです。
- 妊娠する可能性のある女性は、服薬中および服薬終了後6カ月間は指示どおりに避妊してください。
- 男性も、服薬中および服薬終了後95日間はバリア法(コンドーム)で避妊してください。
- 母乳へ薬が移行する可能性があります。服薬中は授乳を避けてください。
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効能 |

- 【効能A】

- 貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病

- 【効能B】

- 再発又は難治性の下記疾患
- 低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫
- マントル細胞リンパ腫
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用法 |
通常、成人はフルダラビンリン酸エステルとして、40mg/m2(体表面積)を1日1回5日間連日経口服用し、23日間休薬する。これを1クールとし、服用を繰り返す。なお、体表面積により、次の服用量を1日用量とする。ただし、患者の状態により適宜減量する。
- 体表面積(m2):0.89−1.13..1日用量(1日あたりの錠数):40mg(4錠)
- 体表面積(m2):1.14−1.38..1日用量(1日あたりの錠数):50mg(5錠)
- 体表面積(m2):1.39−1.63..1日用量(1日あたりの錠数):60mg(6錠)
- 体表面積(m2):1.64−1.88..1日用量(1日あたりの錠数):70mg(7錠)
- 体表面積(m2):1.89−2.13..1日用量(1日あたりの錠数):80mg(8錠)
- 体表面積(m2):2.14−2.38..1日用量(1日あたりの錠数):90mg(9錠)
- ※体表面積は小数点以下2桁に四捨五入
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
吐き気や嘔吐、下痢、頭痛、血尿など、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。
副作用でもっとも重要なのが「骨髄抑制」にともなう血液障害です。白血球が異常に減少すると、体の抵抗力がひどく落ちて感染症にかかりやすくなります。また、血小板減少により出血を生じることもあります。発熱やのどの痛み、あるいは歯茎出血・皮下出血・血尿など出血傾向がみられたら、ただちに医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 溶血性貧血..疲れやすい、めまい、息切れ、動悸、顔色が悪い、頭痛、黄疸(皮膚や白目が黄色)。
- 重い感染症..発熱、寒気、だるさ、食欲不振、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚発赤・小水疱・ピリピリ痛い、水ぶくれ、できもの。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 意識障害、けいれん..混乱・もうろう状態、異常行動、取り乱す、意識低下、筋肉のぴくつき、全身けいれん(ふるえ、白目、硬直)。
- 脳出血、肺出血、消化管出血、出血性膀胱炎..頭痛、ふらつき、手足のまひ、言葉が出ない、息苦しい、下血(血液便、黒いタール状の便)、吐血、血尿。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
 【その他】
- 吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、便秘、口内炎
- 疲労、発熱、頭痛、不眠、めまい、しびれ
- 不整脈、動悸
- 発疹、かゆみ
- 肝機能異常
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