概説 |
がん細胞をおさえるお薬です。多発性骨髄腫の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞が悪性化する腫瘍性の病気で、血液がんの1種です。進行は比較的遅いほうですが、しだいに血液の性状が悪くなり、貧血や高カルシウム血症、骨の痛み、腎不全などを併発し、余後は好ましくありません。
このお薬は、多発性骨髄腫を適応とする抗悪性腫瘍薬です。細胞の核酸の合成を妨害することで、がん細胞を死滅させます。そして、骨髄腫にともなう貧血症状を改善し、倦怠感、腰痛などのつらい症状をやわらげます。おおよそ、半分くらいの人に有効です。
そのほか、医師の判断で各種のがん治療に応用されています。また、乳がんや卵巣がんの手術後の補助療法として再発予防目的に使用されることがあるかもしれません。

- 【薬理】

- 細胞の遺伝情報を持つ“DNA”をアルキル化して、DNAの働きをできなくします。そのようにして、がん細胞の増殖をおさえることから、「アルキル化薬」と呼ばれる部類です。
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特徴 |
- 最古の抗がん薬ナイトロジェンマスタードの流れをくむアルキル化薬です。略号はL-PAM。
- とくに骨髄腫細胞の増殖をよくおさえるので、多発性骨髄腫の治療に広く用いられています。抗がん薬によくみられる吐き気や嘔吐、脱毛の副作用も少なく、外来で治療可能です。
- ステロイドのプレドニゾロン(プレドニン)といっしょに飲むMP療法が代表的です。さらに、シクロホスファミド(エンドキサン)や植物アルカロイドのビンクリスチン(オンコビン注射)を追加する多剤併用療法も試みられます。また、自家末梢血幹細胞移植においては、その前処置としてメルファラン(この薬)を含む大量化学療法がおこなわれます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠中または妊娠出産の可能性のある女性、あるいはパートナーにその可能性のある男性は、医師に報告してください。避妊の重要性について十分説明を受けましょう。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。
- 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。

- 【注意する人】

- 白血球や血小板の減少が著しい場合、使用を控えることがあります。また、腎臓病のある人は用量に注意するなど慎重に用いるようにします。
- 適さないケース..血液障害(白血球や血小板の異常な減少)。
- 注意が必要なケース..腎臓病、感染症のある人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 胃炎や胃潰瘍の治療に用いるH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)といっしょに飲むと、この薬の吸収量が低下するかもしれません。同系の代表的薬剤として、シメチジン(タガメット)、ファモチジン(ガスター)、ラニチジン(ザンタック)などがあります。
 【使用にあたり】
- 病状や治療方針によって飲み方が違います。決められた治療スケジュールにそって正確に服用してください。MP療法といって、ステロイド薬のプレドニゾロン(プレドニン)といっしょに飲むことも多いです。
- 通常、1日1回の服用になります。服薬日や時間、服用量は医師の指示どおりにしてください。吸収をよくするために、早朝空腹時に飲むように言われるかもしれません。
- 症状がよくなったからといって、自分だけの判断で中止してはいけません。不用意な中断により症状を悪化させるおそれがあります。
- 発熱やのどの痛み、皮下出血など、この薬を服用中にいつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と相談してください。
- 湿気を避けて、できるだけ涼しいところに保管してください。
 【妊娠・授乳】
- 妊婦中は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用します。この場合、おなかの赤ちゃんへのリスクについて説明を受けてください。
- 妊娠可能な女性、あるいはパートナーに妊娠の可能性のある男性は、適切な方法で避妊してください。
- 授乳は中止してください。

- 【検査】

- 副作用や効果をチェックするため、定期的に検査を受けなければなりません。白血球や血小板が減りすぎていないか調べます。
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効能 |
下記疾患の自覚的並びに他覚的症状の寛解
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用法 |
- 1日1回メルファランとして2〜4mg(本剤1〜2錠)を連日経口服用する。
- 又は、1日1回メルファランとして6〜10mg(本剤3〜5錠)を4〜10日間(総量40〜60mg)経口服用し、休薬して骨髄機能の回復を待ち(通常2〜6週間)、1日2mg(本剤1錠)の維持量を服用する。
- 又は、1日1回メルファランとして6〜12mg(本剤3〜6錠)を4〜10日間(総量40〜60mg)経口服用し、休薬して骨髄機能の回復を待ち(通常2〜6週間)、同様の服用法を反復する。なお、服用中は頻回に血液検査を行い、特に白血球数、血小板数を指標として適宜用量を増減又は休薬する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
抗がん薬としては少ないほうですが、ときに吐き気や嘔吐、発疹、脱毛などがあらわれます。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。
副作用でもっとも重要なのが「骨髄抑制」にともなう血液障害です。白血球が異常に減少すると、体の抵抗力がひどく落ちて感染症にかかりやすくなります。また、血小板減少により出血を生じることもあります。発熱やのどの痛み、あるいは歯茎出血・皮下出血など出血傾向がみられたら、ただちに医師に連絡してください。
そのほか、多くはありませんが注意が必要な副作用として、肝障害と肺障害があります。異常なだるさ、吐き気、皮膚や白目が黄色くなる、から咳、息切れ、発熱といった症状に注意してください。予防のために、頻回な検査が欠かせません。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、ゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
 【その他】
- 食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
- 発疹、かゆみ、脱毛、口内炎
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