概説 |
骨を丈夫にするお薬です。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 骨粗鬆症は、骨の代謝が悪くなり、骨がもろくなる病気です。高齢の人では骨折しやすくなり、腰痛や背骨の痛みをともなうこともあります。骨折で多いのは背骨の圧迫骨折(脊椎椎体骨折)です。
このお薬は、骨に付着して、骨のカルシウム分が血液に溶け出すのを防ぎます(骨吸収抑制作用)。その結果、骨の密度が増加し骨が丈夫になります。骨折の予防にもつながります。

- 【薬理】

- 骨は新陳代謝をしています。古い骨は壊され新しく作り直されるのです。古い骨を壊し血液中に溶かす役目をするのが“破骨細胞”です。この薬は、破骨細胞に入りその機能を抑制することにより、骨からカルシウムが溶け出すのをおさえます。結果的に、骨密度が増大し骨が丈夫になるのです。
 【臨床試験】
- 月1回服用のこの薬の有効性を、同一成分の注射剤ボンビバ静注と比較する試験が行われています。参加したのは55歳以上の骨粗鬆症の患者さん422人。そして1年後の腰椎の骨密度の増加率を調べるのです。その結果、この薬で5.2%、対照薬の注射剤で5.4%増加しました。規定内のわずかな差なので、注射剤に劣らない同程度の有効性があると判断されました。なお、ボンビバ静注の椎体骨折の予防効果を調べる別の試験で、臨床実績があるリセドロン酸に劣らない有効性が確認されています。これらの結果から、この薬の骨折抑制効果についても十分期待できるわけです。
- 同系のビスホスホネート系薬剤による大規模骨折介入試験で、椎体骨折および大腿骨近位部を含めた非椎体骨折の抑制効果が認められています。骨粗鬆症による骨折がおおよそ半減し、治療開始半年以降ではさらなる低減が示されています。
|
特徴 |
- ビスホスホネート系の骨粗鬆症治療薬です。同系のなかで第二世代(側鎖に窒素を含む)に分類されることがあり、第一世代のエチドロン酸(ダイドロネル)に比べ骨吸収抑制作用がはるかに強力です。また、安全域が広く骨軟化の副作用を生じにくいです。
- 骨折の予防効果が高く、高齢の人や骨折の危険性が高い重度の骨粗鬆症に向きます。また、ステロイドなどによる薬物性の骨粗鬆症に対しても第一選択されます。
- 月1回服用タイプです。ひと月に1回飲むだけなので、毎日の煩わしさがありません。また食道や胃の副作用のリスクも全体として低くなると考えられます。
|
注意 |
 【診察で】
- 食道や胃腸に病気のある人、またアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中またはその可能性のある人は申し出てください。妊娠中は使用できません。
- 胃腸薬など別の薬を飲んでいるときは、医師に伝えておきましょう。

- 【注意する人】

- 食道に障害があり、飲み込みに時間がかかる人は避けたほうが無難です。 また、歯の悪い人は、事前に歯科治療を済ませておくとよいでしょう。もし、服用中に歯科治療を受けるときは、担当の医師とよく相談してください。
- 適さないケース..食道障害(食道狭窄、食道弛緩不能症)で飲み込みに時間がかかる人、服用時に60分以上体を起こしていることのできない人(食道通過が滞るおそれ)、低カルシウム血症のある人、妊娠中の女性。
- 注意が必要なケース..飲み込みがうまくできない人、食道炎や胃炎など上部消化管障害がある人、重い腎臓病、抜歯など顎骨に影響する歯科治療を受けるとき。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- この系統の薬剤は、併用薬や飲食物の影響を受け吸収が悪くなる性質があります。原則、この薬単独で服用しなければなりません。
- カルシウムやマグネシウム製剤、また胃腸薬の制酸剤(マーロックス、アルサルミン等)との同時服用は避けてください。この薬を服用後、少なくとも60分たってから服用するようにします。
- 牛乳など水以外の飲み物や食べ物と一緒に飲むと、吸収率が低下します。カルシウムやマグネシウム分をたくさん含むミネラルウォーター(硬水)もよくありません。水道水(軟水)で飲むのがいちばん無難です。
 【使用にあたり】
- 1ヵ月に1回だけ飲みます。飲む日は薬のケースに書いてあります。あらかじめ手帳やカレンダーに服薬日をマークしておくとよいでしょう。もし飲み忘れてしまったら、気付いた日の翌朝に1錠飲んでください。次からの服用は、飲んだ日から1ヵ月間隔とします。飲み忘れたことを医師と薬剤師にも伝えておきましょう。
- 飲む時間は朝起きてすぐです。コップ1杯の水(約180mL)とともに1錠を服用します。噛んだり口の中で溶かしたりしなで、すぐに飲み込んでください。寝たままの姿勢で飲んではいけません。寝る前も避けてください。
- 服用後60分は横にならないでください。すぐ横になると、食道炎や胃炎のリスクが高まります。
- 服用後60分以上たってから朝食をとりましょう。間隔をあけるのは、飲食による薬の吸収阻害を避けるためです。
 【検査】
- 事前に歯科検査を受けておくとよいでしょう。とくに抜歯については、この薬を飲み始める前に済ませおく必要があります。また、服用開始後も、定期的に歯科健診を受け口腔内管理をきちんとおこなうことが大事です。
- 骨密度や骨吸収マーカーを調べて、薬の効き具合を調べます。また骨折の心配がないか、レントゲン検査で骨の具合をチェックすることがあります。
 【食生活】
- まれに、あごの骨に炎症を生じることがあります。口腔不衛生がリスク因子の一つになりますので、ふだんから歯磨き・ブラッシングをよくして、口内を清潔に保ちましょう。また、歯の治療を受けるさいは、担当の医師とよく相談し、歯科医にもこの薬を飲んでいることを伝えてください。
- バランスのよい食事を心がけましょう。とくに、カルシウム分やビタミンD、ビタミンKが大切です。カルシウムは乳製品や小魚に、ビタミンDはウナギやイワシ、レバーなどに多いです。ビタミンKは、納豆をはじめ、ホウレン草やブロッコリーなど野菜類にたくさん含まれます。
- 適度な運動も、骨量を増やし骨を丈夫にします。日光浴をかねた散歩やウォーキングが、その第一歩です。

- 【備考】

- 骨粗鬆症の治療には、この薬が属するビスホスホネート系薬剤を中心に、エストロゲン受容体調整薬のラロキシフェン(エビスタ、ビビアント)、活性型ビタミンD3、ビタミンK2製剤、カルシウム薬などが用いられます。
|
効能 |
骨粗鬆症 |
用法 |
通常、成人はイバンドロン酸として100mgを1カ月に1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口服用する。なお、服用後少なくとも60分は横にならず、飲食(水を除く)及び他の薬剤の経口摂取を避けること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
強い刺激から、食道や胃粘膜が荒れやすいです。多くはありませんが、食道炎や食道潰瘍、あるいは胃潰瘍など“上部消化管障害”を引き起こすことがあります。もし、食道の痛みや胸やけ、胃痛が続くときは すぐに受診してください。たくさんの水で服用するなど、決められた飲み方を守ることが大切です。
同系の薬剤において顎骨壊死(がくこつえし)など あごの骨に副作用があらわれることがあります。とくに抜歯後に起きやすいようです。抜歯により傷ついた顎骨がうまく修復できず壊死してしまうのです。もし、歯が浮いたり、歯茎やあごが腫れて痛んだりしたら、直ちに歯科ないし口腔外科を受診ください。さらに最近報告されるのが外耳道骨壊死です。外耳炎、耳だれ、耳痛が続く場合には、耳鼻科を受診してください。
骨折の危険性は全体として低下しますが、特異なケースとして 長期使用時における‘非定型骨折’が報告されています。前ぶれとして 大腿部近くの足の付け根や太もも、あるいは前腕部が痛むことがあるようです。発現頻度はきわめてまれとはいえ、いつもと違う痛みが気になるときは早めに受診し骨折の危険性がないか調べてもらいましょう。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 上部消化管障害(食道炎、食道潰瘍、胃潰瘍など)..飲み込みにくい、飲むと痛い、胸やけ、食道の熱感・痛み、胃痛、吐血(血またはコーヒー色のものを吐く)、下血(血液便、黒いタール状の便)。
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 顎骨壊死・顎骨骨髄炎..歯が浮く、歯の奥の痛み、歯茎の腫れ・痛み、あごのしびれ感・腫れ、抜歯など歯科治療後に腫れや痛みが続く。
- 外耳道骨壊死..外耳炎、耳だれ、耳の痛み。
- 大腿骨や腕の非定型骨折..太もも、足の付け根、腰、前腕部の痛み。
- 低カルシウム血症..手足のふるえ、しびれ、ピリピリ感、ぴくつき、筋肉の脱力感、筋肉けいれん、気分変調、動悸、血圧低下、全身けいれん、意識もうろう。
 【その他】
- 下痢、腹痛、胃の不快感、吐き気、胃炎
- 頭痛、背中の痛み、関節痛、倦怠感
|