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成分(一般名) フィンゴリモド塩酸塩
製品例 ジレニアカプセル0.5mg、イムセラ カプセル0.5mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 他の代謝性医薬/その他/多発性硬化症治療剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 多発性硬化症の再発を予防するお薬です。
作用

【働き】

多発性硬化症は、脳や脊髄の神経細胞(髄鞘)が炎症により壊れ、情報の伝達がスムーズにできなくなる病気です。詳しいメカニズムはよくわかっていませんが、自己免疫疾患のひとつと考えられています。神経損傷による症状として、視力の低下、排尿・排便障害、手足のしびれなどを生じ、さらには手足が硬直し歩行が困難となります。いくつかのタイプに分かれますが、その多くは再発と寛解を繰り返す再発性多発性硬化症です。

このお薬は多発性硬化症治療薬です。神経細胞を攻撃する自己反応性リンパ球の中枢神経系への浸潤を阻止すことで、神経の炎症をおさえます。このような作用により、多発性硬化症の再発が減り、身体的障害の進行がおさえられるのです。実際の臨床試験においても、神経が炎症を起こしている活動性病巣が少なくなり、また年間の再発率が半分くらいになることが確かめられています。

【薬理】

生体内でスフィンゴキナーゼにより活性代謝物のリン酸化体に変換されたあと、リンパ球上のスフィンゴシン1-リン酸1受容体(S1P1受容体)に作用し、その受容体機能を阻害します(機能的アンタゴニスト作用)。この阻害作用により、自己反応性リンパ球の中枢神経系への浸潤が阻止され、結果として多発性硬化症の神経炎症を抑制することにつながるのです。このような作用機序から、スフィンゴシン1-リン酸1(S1P1)受容体調節薬と呼ばれることがあります。

【臨床試験】

再発性多発性硬化症の患者さんをクジ引きで分け、57人はこの薬を、別の57人はプラセボ(にせ薬)を服用し、その効果を比較する試験がおこなわれています。本当にプラセボを上回る効果があるのかを確かめるのが目的です。効果の判定は6ヶ月後の炎症性の活動性病巣(MRI Gd造影病巣)の有無でおこないます。活動性病巣は多発性硬化症の再発ないし病状悪化と相関性があるとされ、病巣数の減少は再発リスクの低減につながると考えられています。

試験の結果は、この薬を飲んでいた人達の病巣が認められなかった人の割合は約70%(服用前58%)、プラセボを飲んでいた人達は約40%(服用前58%)でした。この薬を飲んでいた人達の多くが活動性の病巣がなかったのに対し、プラセボでは病巣がみつかる割合が増えてしまったわけです。また、副次的な評価になりますが、実際に再発しなかった人の割合は、この薬で79%(45人/57人)、プラセボで65%(37人/57人)と、この薬のほうが再発率が低くなることがわかりました。
特徴
  • 多発性硬化症を適応とする国内初の飲み薬です。リンパ球上のスフィンゴシン1-リン酸受容体を標的とする免疫調節薬になります。冬虫夏草という天然の生薬をもとに、構造変換をおこない、純合成品として創製されました。
  • 海外の臨床試験で、既存の標準的治療薬のインターフェロンβをしのぐ有効性が示されています。服用回数は1日1回。自己注射が必要なインターフェロンβ製剤(ベタフェロン)に比べ利便性が高く治療が楽にできます。安全性も比較的高く、長期服用も可能です。これらから、再発性多発性硬化症に対する新たな標準薬として期待されます。
  • 副作用として、目の黄斑浮腫、徐脈性不整脈、感染症、肝機能障害などが心配されます。このため、設備の整った病院で、専門医により処方されることになります。副作用にそなえ、眼科医や循環器専門医師と連携をはかることが大事です。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹の既往歴を医師に教えてください。
  • 服用中の薬を医師に報告してください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてださい。妊娠中は禁止です。
  • 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

免疫が低下する可能性があるので、もともと感染症のある人は慎重に用いる必要があります。また、心臓病や肝臓病、黄斑浮腫など病気によっては、その病状を悪化させるおそれがあります。とくに糖尿病のある人は黄斑浮腫に、心臓病のある人は徐脈性不整脈の発現に注意が必要です。妊娠中は使用できません。

  • 適さないケース..重い感染症、妊娠中もしくはその可能性のある人。
  • 注意が必要なケース..感染症、水痘(水ぼうそう)または帯状疱疹にかかったことがなく予防接種を受けていない人、心臓病(不整脈、心不全、QT延長)、心拍数の低い人、低カリウム血症、高血圧症、黄斑浮腫、糖尿病、肝臓病、重い呼吸器疾患のある人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

生ワクチンの予防接種は避けなければなりません。免疫系に抑制的に作用するため生ワクチンを接種すると増殖し、病原性をあらわすおそれがあるためです。また、ジソピラミド(リスモダン)やアミオダロン(アンカロン)など一部の不整脈治療薬との併用も禁止されています。

  • 飲み合わせの悪い薬..生ワクチン(麻しんワクチン、風しんワクチン、ポリオワクチン、BCGなど)、ジソピラミド(リスモダン)、シベンゾリン(シベノール)、プロカインアミド(アミサリン)、キニジン(硫酸キニジン)、アミオダロン(アンカロン)、ソタロール(ソタコール)など。
  • 飲み合わせに注意..不活化ワクチン、β遮断薬(インデラル、テノーミン、ミケラン等)、カルシウム拮抗薬(ノルバスク、アダラート、カルブロック、ヘルベッサー等)、抗がん薬、免疫抑制薬など。

【使用にあたり】
  • 必要に応じて入院するなど、医師の管理下で治療を開始します。初回服用後少なくとも6時間は、心拍数や血圧などに変化がないか注意深く観察する必要があるためです。翌日の次の服薬時、また休薬後再開時も、油断しないで体調の変化を見逃さないようにします。もし、めまいやふらつき、疲れ、動悸 などいつもと違う症状があらわれたら医師と連絡をとってください。
  • その後の飲み方は医師の指示通りにしてください。通常量は1日1回1錠だけです。食事と関係なく飲めますが、飲み忘れのないように時間を決めて規則正しく服用しましょう。とくに指示がなければ、朝食後でよいと思います。
  • 手帳などに日々の体調を書きとめておくとよいでしょう。発熱やかぜ症状、あるいは視力の低下など目の異常を含め いつもと違う症状があらわれたら、直ちに医師と連絡をとり指示をあおいでください。なお、効果が長期間持続するので、服用中止後も2カ月間くらい副作用の発現に注意が必要です。

【検査】

服用に先立ち心電図検査を実施します。そして初回服薬日には心拍数や血圧測定、心電図検査を随時おこないます。除脈がみられるときなど、連続的な心電図モニターが必要です。そのほかで重要なのは、リンパ球数算定を含めた血液検査、眼底検査、肝機能検査などです。

【妊娠・授乳】
  • おなかの赤ちゃんに悪い影響を及ぼすおそれがあります(催奇形性を疑う症例報告があります)。このため、妊娠する可能性のある女性は、事前に妊娠検査をおこない、妊娠していないことを確認したうえで治療を開始します。また、治療中および治療終了後2カ月間は妊娠しないように適切な方法で避妊をしなければなりません。もし、妊娠の可能性がでてきたら、すぐ医師と相談してください。
  • 乳汁中に薬が移行する可能性がありますので、授乳は避けてください。

【食生活】

とくに飲み始めに、めまいやふらつきを起こしやすいです。車の運転や危険をともなう機械の操作には十分注意してください。
効能 多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制
  • [注意]進行型多発性硬化症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。一次性進行型多発性硬化症患者を対象とした海外のプラセボ対照臨床試験において、身体的障害の進行抑制効果は示されなかったとの報告がある。
用法 通常、成人はフィンゴリモドとして1日1回0.5mgを経口服用する。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 初回服薬時にみられるのが、一過性の心拍数低下や徐脈性不整脈です。重症化することは多くはありませんが、回復するまで慎重に経過を観察する必要があります。随伴症状として、めまいや疲労、動悸などがあらわれますので、そのような場合は医師と連絡をとってください。飲みはじめから数日間にわたり注意が必要です。

そのほかで多いのは、鼻咽頭炎、頭痛、めまいなどです。また、検査でよくみつかるのは、肝機能値の異常、リンパ球減少、白血球減少などです。リンパ球や白血球が極端に減少すると、体の抵抗力がひどく落ちて感染症にかかりやすくなります。初期症状として発熱やのどの痛み、けん怠感などに気をつけましょう。なお、この薬は体に長く留まる性質があるので、感染症については服薬中止後も2カ月間くらい注意が必要です。

黄斑浮腫は、目にあらわれる特異な副作用です。とくに糖尿病のある人や、ブドウ膜炎の既往歴のある人は発現リスクが高いので、定期的に眼底検査をおこなう必要があります。視力の低下やかすみ目、眼痛など目の異常が気になるときは早めに眼科医師と相談してください。多くの場合、服薬を中止することでまもなく回復します。

そのほかは少ないようですが、重い副作用として、悪性リンパ腫、脳卒中、可逆性後白質脳症症候群または進行性多巣性白質脳症などが報告されています。下記のような初期症状をふまえ、いつもと違う異常を感じたら、医師と連絡をとり適切な指示を受けるようにしてください。早期対応が大切です。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 重い感染症..発熱、けん怠感、のどの痛み、咳や痰、息苦しい、嘔吐、下痢、皮膚がピリピリ痛い、皮膚の発赤・水ぶくれ・できもの。
  • 徐脈性不整脈..動悸、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下、疲れやすい、めまい、ふらつき、息切れ、血圧低下、気が遠くなる、失神。
  • 黄斑浮腫..視力低下、かすんで見える、目が痛い。
  • リンパ腫..発熱、リンパ節のはれ(手足の付け根・首のはれ)、体重減少
  • 可逆性後白質脳症症候群..頭痛、視力の異常、意識もうろう、けいれん。
  • 進行性多巣性白質脳症..意識もうろう、物忘れ、考えがまとまらない、うまく話せない、手足の麻痺、見え方がおかしい
  • 脳卒中..片側の手足のまひ・しびれ、口がゆがむ、うまく話せない、視野が欠ける、二重に見える、考えがまとまらない、ふらつく、激しい頭痛
  • 末梢動脈閉塞性疾患..手足のしびれ・冷え・痛み。

【その他】
  • 鼻咽頭炎
  • めまい、ふらつき、頭痛、眠気
  • 下痢、吐き気、けん怠感、発熱、血圧上昇、発疹
  • 肝機能異常、リンパ球減少、白血球減少

概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。