概説 |
骨を丈夫にするお薬です。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 骨粗鬆症は、骨の代謝が悪くなり、骨がもろくなる病気です。腰痛や背骨の痛みをともなうほか、高齢の人では骨折をしやすくなります。女性に多いのは、女性ホルモンの減少にともなう「閉経後骨粗鬆症」のためです。
このお薬は、女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)と同様に作用して、骨のカルシウム分が血液に溶け出すのを防ぎます(骨吸収抑制作用)。その結果、骨の密度が増加し骨が丈夫になってきます。骨折の予防にもつながります。

- 【薬理】

- 骨のエストロゲン受容体に結合後、骨代謝回転に関与するサイトカインを介して骨吸収抑制作用を発揮します。作用の仕方は女性ホルモンと同じで、骨を溶かす破骨細胞の寿命を縮め その働きを抑制することによります。

- 【臨床試験】

- 海外での大規模骨折介入試験で、骨粗鬆症にともなう脊椎圧迫骨折を半分くらいに減らせることが示されています。その他の骨折、たとえば大腿骨頸部骨折や手関節周囲骨折などについては、骨折の危険性が高い重症例において高い予防効果が得られています。
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特徴 |
- SERMという新しいタイプの骨粗鬆症治療薬です。同類のラロキシフェン(エビスタ)は、女性の閉経後骨粗鬆症に第一選択されることが多くなりました。ただし、のぼせや発汗など更年期症状のある人には向きません。その症状をさらに悪化させるおそれがあるためです。
- 骨やコレステロール代謝に対しエストロゲン様作用を示す一方、乳房や子宮のエストロゲン受容体では反対の作用を示します。このような特性から、選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM:Selective Estrogen Receptor Modulater)と呼ばれています。
- 背骨以外の手足の骨折予防効果については、類似薬のラロキシフェン(エビスタ)をしのぐ有効性が示されています。
- 乳房に対し抗エストロゲン作用を示すので、副効用として 乳がんの予防効果が期待できます。ラロキシフェン(エビスタ)においては、エストロゲン受容体陽性の乳がん発生を1/10に抑制したという報告があります。
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注意 |
 【診察で】
- 血栓症など持病や、アレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 手術の予定があるときは、早めに医師に報告しておきましょう。
- 副作用や注意点についてよく説明を受けておきましょう。

- 【注意する人】

- 血栓の病気のある人は使用できないことがあります。また、手術後などで長期に体を動かせない状態にある人や、のぼせや発汗など更年期症状の強い人は控えるようにします。
- 適さないケース..静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症など)、長期不動状態(術後回復期、長期安静期など)、抗リン脂質抗体症候群、妊娠中。
- 注意が必要なケース..腎臓病、肝臓病、更年期障害のある人など。
 【使用にあたり】
- 指示どおりに正しくお飲みください。ふつう、1日1回1錠だけ飲みます。
- 手術などで長期に体を動かせない状態に入る場合、その3日くらい前までに服用を休止する必要があります。
 【食生活】
- たとえば長時間飛行など、体を動かせない状態が続くと、血栓症のリスクが少し高まるかもしれません。水分を多くとり、できるだけ体、ことに足をこまめに動かすようにしてください。
- バランスのよい食事を心がけましょう。とくに、カルシウム分やビタミンD、ビタミンKが大切です。カルシウムは乳製品や小魚に、ビタミンDはウナギやイワシ、レバーなどに多いです。ビタミンKは、納豆をはじめ、ホウレン草やブロッコリーなど野菜類にたくさん含まれます。
- 適度な運動も、骨量を増やし骨を丈夫にします。日光浴をかねた散歩やウォーキングが、その第一歩です。

- 【備考】

- 女性の閉経後骨粗鬆症には、バゼドキシフェン(この薬)のほか、同様の作用をもつ女性ホルモン薬が広く処方されています。また、骨粗鬆症の基礎薬として、活性型ビタミンD製剤も有用です。骨折のリスクが高い重度の骨粗鬆症には、ビスホスホネート系薬剤を用いるようにします。
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効能 |
閉経後骨粗鬆症 |
用法 |
通常、バゼドキシフェンとして、1日1回20mgを経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用でわりと多いのは、乳房の張り、ほてり、吐き気などです。これらは、2〜3カ月して体が慣れてくるとたいてい軽快しますので、それほど心配ないと思います。つらいようでしたら、医師とよく相談してください。
重い副作用は少ないですが、念のため注意が必要なのは「血栓症」です。血液の固まりで血管が詰まることで起こります。生じる所はいろいろです。手足、とくにふくらはぎの痛みやシビレ、突然の息切れ、胸の痛み、急に視力が落ちるといった症状が前触れとなります。万一のことですが、そのような症状があらわれたら、すぐ医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 静脈血栓症、肺塞栓症..手足(特にふくらはぎ)の痛み・はれ・むくみ・しびれ、爪の色が紫、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急な視力低下、視野が欠ける、目が痛む。
 【その他】
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