概説 |
骨を丈夫にするお薬です。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 骨粗鬆症は、骨の代謝が悪くなり、骨がもろくなる病気です。高齢の人では骨折しやすくなり、腰痛や背骨の痛みをともなうこともあります。骨折で多いのは背骨の圧迫骨折(脊椎椎体骨折)です。
このお薬は、骨に付着して、骨のカルシウム分が血液に溶け出すのを防ぎます(骨吸収抑制作用)。その結果、骨の密度が増加し骨が丈夫になります。骨折の予防にもつながります。

- 【薬理】

- 骨は新陳代謝をしています。古い骨は壊され新しく作り直されるのです。古い骨を壊し血液中に溶かす役目をするのが“破骨細胞”です。この薬は、破骨細胞に入りその機能を抑制することにより、骨からカルシウムが溶け出すのをおさえます。結果的に、骨密度が増大し骨が丈夫になるのです。

- 【臨床試験】

- 国内で骨折の予防効果を調べる長期臨床試験が行われています。参加したのは、若年性でない女性の骨粗鬆症の患者さん674人です。このうち343人はこの薬を、別の331人はプラセボ(にせ薬)を服用し、椎体骨折(背骨の圧迫骨折)の累積発生率を比較します。圧迫骨折はあまり痛まないことがあるので、レントゲンでその有無を調べます。服用期間は2年間。全員が基礎治療薬としてカルシウム薬とビタミンD3製剤を併用します。
その結果、2年間に椎体骨折を起こしてしまった人の割合は、この薬を飲んでいた人達で10.4%(31人)、プラセボを飲んでいた人達は24%(69人)でした。また、飲み始めをのぞいた半年以降でみると、この薬を飲んでいた人達の骨折発生率は5%にとどまりました。この薬を飲んでいた人達のほうが骨折発生頻度が少なく、半年以降ではさらに低減することが確認できたわけです。
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特徴 |
- ビスホスホネート系の骨粗鬆症治療薬です。同系のなかで第三世代(側鎖に窒素を含み、環状構造をもつ)に分類されることがあり、第一世代のエチドロン酸(ダイドロネル)に比べ骨吸収抑制作用がはるかに強力です。また、安全域が広く骨軟化の副作用を生じにくいです。
- 骨折の予防効果が高く、高齢の人や骨折の危険性が高い重度の骨粗鬆症に向きます。また、ステロイドなどによる薬物性の骨粗鬆症に対しても第一選択されます。
- 日本人における骨折抑制効果を、プラセボ対照比較試験により検証できた初めてのビスホスホネート製剤です(上記)。なお、同系薬剤による骨折介入試験は海外でも大規模におこなわれ、骨粗鬆症治による骨折をおおよそ半減することが示されています。
- 従来の1日1回服用タイプの錠剤にくわえ、利便性が高い月1回(4週に1回)服用タイプの錠剤(50mg)が発売されています。月1回でも効力や副作用に大差はなく、同様の効果が得られます。
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注意 |
 【診察で】
- 食道や胃腸に病気のある人、またアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中またはその可能性のある人は申し出てください。妊娠中は服用禁止です。
- 胃腸薬など別の薬を飲んでいるときは、医師に伝えておきましょう。

- 【注意する人】

- 食道に障害があり、飲み込みに時間がかかる人は避けたほうが無難です。 また、歯の悪い人は、事前に歯科治療を済ませておくとよいでしょう。もし、服用中に歯科治療を受けるときは、担当の医師とよく相談してください。
- 適さないケース..食道障害(食道狭窄、食道弛緩不能症)で飲み込みに時間がかかる人、服用時に30分以上体を起こしていることのできない人(食道通過が滞るおそれ)、低カルシウム血症のある人、妊娠中の女性。
- 注意が必要なケース..飲み込みがうまくできない人、食道炎や胃炎など上部消化管障害がある人、腎臓病、抜歯など顎骨に影響する歯科治療を受けるとき。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- この系統の薬剤は、併用薬や飲食物の影響を受け吸収が悪くなる性質があります。原則、この薬単独で服用しなければなりません。
- カルシウムやマグネシウム製剤、また胃腸薬の制酸剤(マーロックス、アルサルミン等)との同時服用は避けてください。この薬を服用後、少なくとも30分たってから服用するようにします。
- 牛乳など水以外の飲み物や食べ物と一緒に飲むと、吸収率が低下します。カルシウムやマグネシウム分をたくさん含むミネラルウォーター(硬水)もよくありません。水道水(軟水)で飲むのがいちばん無難です。
 【使用にあたり】
- 1日1回毎日服用タイプの錠剤(1mg)と、月1回(4週に1回)服用タイプの錠剤(50mg)があります。飲み間違いのないように十分注意してください。
- 飲む時間はどちらも朝起きてすぐです。コップ1杯の水(約180mL)とともに1錠を服用します。噛んだり口の中で溶かしたりしなで、すぐに飲み込んでください。寝たままの姿勢で飲んではいけません。寝る前も避けてください。
- 服用後30分は横にならないでください。すぐ横になると、食道炎や胃炎のリスクが高まります。
- 服用後30分以上たってから朝食をとりましょう。間隔をあけるのは、飲食による薬の吸収阻害を避けるためです。
- 1日1回服用錠(1mg)を飲み忘れた場合、その日にまだ何も食べていなければ、気づいたときに1回分を飲んでください。すでに飲食をしている場合は、その日は抜かし次の朝から飲んでください。
- 月1回服用錠(50mg)については、とくに飲み忘れが心配されます。あらかじめ手帳やカレンダーに服薬日をマークしておくとよいでしょう。もし飲み忘れてしまったら、気付いた日の翌朝に1回分を飲んでください。飲み忘れたことを医師にも報告しておきましょう。
 【検査】
- 事前に歯科検査を受けておくとよいでしょう。とくに抜歯については、この薬を飲み始める前に済ませおく必要があります。また、服用開始後も、定期的に歯科健診を受け口腔内管理をきちんとおこなうことが大事です。
- 骨密度や骨吸収マーカーを調べて、薬の効き具合を調べます。また骨折の心配がないか、レントゲン検査で骨の具合をチェックすることがあります。
 【食生活】
- まれに、あごの骨に炎症を生じることがあります。口腔不衛生がリスク因子の一つになりますので、ふだんから歯磨きをよくして、口内を清潔に保ちましょう。また、歯の治療を受けるさいは、担当の医師とよく相談し、歯科医にこの薬を飲んでいることを伝えてください。
- バランスのよい食事を心がけましょう。とくに、カルシウム分やビタミンD、ビタミンKが大切です。カルシウムは乳製品や小魚に、ビタミンDはウナギやイワシ、レバーなどに多いです。ビタミンKは、納豆をはじめ、ホウレン草やブロッコリーなど野菜類にたくさん含まれます。
- 適度な運動も、骨量を増やし骨を丈夫にします。日光浴をかねた散歩やウォーキングが、その第一歩です。

- 【備考】

- 骨粗鬆症の治療には、この薬が属するビスホスホネート系薬剤を中心に、エストロゲン受容体調整薬のラロキシフェン(エビスタ、ビビアント)、活性型ビタミンD3、ビタミンK2製剤、カルシウム薬などが用いられます。
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効能 |
骨粗鬆症 |
用法 |

- 【錠1mg】

- 通常、成人はミノドロン酸水和物として1mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又はぬるま湯)とともに経口服用する。なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

- 【錠50mg】

- 通常、成人はミノドロン酸水和物として50mgを4週に1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又はぬるま湯)とともに経口服用する。なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
強い刺激から、食道や胃粘膜が荒れやすいです。多くはありませんが、食道炎や食道潰瘍、あるいは胃潰瘍など“上部消化管障害”を引き起こすことがあります。もし、食道の痛みや胸やけ、胃痛が続くときは すぐに受診してください。たくさんの水で服用するなど、決められた飲み方を守ることが大切です。
同系の薬剤において顎骨壊死(がくこつえし)など あごの骨に副作用があらわれることがあります。とくに抜歯後に起きやすいようです。抜歯により傷ついた顎骨がうまく修復できず壊死してしまうのです。もし、歯が浮いたり、歯茎やあごが腫れて痛んだりしたら、直ちに歯科ないし口腔外科を受診ください。さらに最近報告されるのが外耳道骨壊死です。外耳炎、耳だれ、耳痛が続く場合には、耳鼻科を受診してください。
骨折の危険性は全体として低下しますが、特異なケースとして 長期使用時における‘非定型骨折’が報告されています。前ぶれとして 大腿部近くの足の付け根や太もも、あるいは前腕部が痛むことがあるようです。発現頻度はきわめてまれとはいえ、いつもと違う痛みが気になるときは早めに受診し骨折の危険性がないか調べてもらいましょう。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 上部消化管障害(食道炎、食道潰瘍、胃潰瘍など)..飲み込みにくい、飲むと痛い、胸やけ、食道の熱感・痛み、胃痛、吐血(血またはコーヒー色のものを吐く)、下血(血液便、黒いタール状の便)。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 低カルシウム血症..手足のふるえ、しびれ、ピリピリ感、ぴくつき、筋肉の脱力感、筋肉けいれん、気分変調、動悸、血圧低下、全身けいれん、意識もうろう。
- 顎骨壊死・顎骨骨髄炎..歯が浮く、歯の奥の痛み、歯茎の腫れ・痛み、あごのしびれ感・腫れ、抜歯など歯科治療後に腫れや痛みが続く。
- 外耳道骨壊死..外耳炎、耳だれ、耳の痛み。
- 大腿骨や腕の非定型骨折..太もも、足の付け根、腰、前腕部の痛み。
 【その他】
- 胃の不快感、吐き気、腹痛、胃炎
- 発疹、かゆみ
- 肝機能値の異常、血中カルシウム減少
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