概説 |
食事がとれないときに用いる総合栄養剤です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 栄養管理はどんな病気でも大事です。このお薬は、食事がとれないときや消化・吸収力が弱っているときに用いる総合栄養剤です。タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルなど体に必要な栄養分がバランスよく配合されています。そのまま腸から吸収できるように調整されているので、専門的に「経腸栄養剤」と呼ばれています。
口から飲むこともありますが、飲めないときは経管投与として鼻の穴(経鼻)または胃や腸に開けた穴(胃瘻、腸瘻)からチューブで胃や腸内に注入することができます。適用となるのは、胃腸の手術や大きな手術の前後、大やけど、栄養管理が困難ながん、口や食道の病気、神経や筋肉の病気あるいは脳卒中の後遺症で飲み込みがうまくできない場合などです。

- 【臨床試験】

- この薬の有効性と安全性について、既存の類似薬のラコール配合経腸用液と比較する試験がおこなわれています。参加したのは食道がんまたは胃がんの手術後で経管栄養補給が必要な患者さん117人です。このうち59人はこの薬を、別の58人はラコールを用い、経鼻、胃瘻または腸瘻より投与します。投与期間は術後3日目から約2週間ほどとし、効果の判定は短期間の動的な栄養状態を示すレチノール結合タンパク、プレアルブミン、トランスフェリンの3種類の急速代謝回転タンパク質(RTP)の推移でおこないます。また、副次的に平均的栄養状態を反映する血清総タンパクと血清アルブミンについても調べます。
その結果、この薬を使用していた人達の急速代謝回転タンパク質の推移は、レチノール結合タンパクが投与開始日の1.5から3.3に改善、プレアルブミンが11から20に、トランスフェリンが117から188に改善しました。一方、ラコールを使用していた人達のレチノール結合タンパクは1.6から3.7に、プレアルブミンが12から22に、トランスフェリンが123から195に改善しました。どちらも同様に推移し、ラコールを用いた既存治療と比較して、同程度の有効性が示されたわけです。また、血清総タンパクと血清アルブミンの推移についても、大きな違いはありませんでした。安全性については、便秘と嘔吐がやや多くみられましたが、臨床的に大きな問題にはならないと判断されました。
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特徴 |
- 経腸栄養剤のうち「半消化態経腸栄養剤」に分類されます。窒素源(タンパク源)として牛乳と大豆が使われ、また脂質をやや多めに含むので、ある程度の消化吸収力が必要です。吸収されたあと、食べ物のかすとして残渣(便)も少し残ります。タンパク質:脂質:炭水化物のエネルギー比は、18:29:53になります。
- セレンを配合した初めての医薬品です。セレンは経管栄養の長期化で不足が心配される微量元素の一つです。ほかにも、微量元素としてクロムとモリブデン、脂質代謝にかかわるL-カルニチン、整腸作用が期待できるフラクトオリゴ糖などが新たに配合されています。味は甘すぎずさっぱりとしたバニラ味です。
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注意 |
 【診察で】
- 牛乳アレルギーのある人は、医師に報告してください。
- 外来で処方されましたら、調製方法や使用方法、注意点などについて、よく説明を受けておきましょう。
 【注意する人】
- 牛乳のたん白にアレルギーのある人は使用できません。カゼインという牛乳に由来するたん白質が配合されているためです。
- 重い肝臓病や腎臓病、腸閉塞など、病気によっては使用できないことがあります。意識がないとき、高熱時、ひどい脱水症状、急性膵炎などにおいても慎重に用いるようにします。糖尿病を合併している人は、血糖値の変動に注意が必要です。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 配合成分のビタミンKの影響により、抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)の作用が減弱するかもしれません。併用のさいは、定期的に血液の固まり具合の検査を受ける必要があります。
 【使用にあたり】
- 病気により、また病状により使用方法が違います。指示された用法用量にならって使用してください。経管投与を前提とする栄養剤ですが、回復してきたらふつうに口から飲むことも多いです。
- 経管投与の場合は、鼻の穴(経鼻)またはお腹に開けた穴(胃瘻、腸瘻)から専門のチューブで注入します。感染予防のため、汚染防止に留意し衛生的におこなってください。
- 少量または低濃度で開始し、徐々に増量するのが一般的です。注入スピードが速すぎると、下痢を起こしやすいです。決められた時間でゆっくりとおこなってください。
- 開封直前によく振ってから使用しましょう。加温する場合は、直火を避け、未開缶のまま微温湯でおこなってください。
- 原則1回使い切りです。開封後に冷蔵庫内に保存する場合でも、48時間以内に使い切るようにしてください。
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効能 |
一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する |
用法 |
通常、標準量として成人には1日1,000〜1,667mL(1,200〜2,000kcal)を経管又は経口投与する。経管投与では本剤を1時間に62.5〜104mL(75〜125kcal)の速度で持続的又は1日数回に分けて投与する。経口摂取可能な場合は1日1回又は数回に分けて経口投与することもできる。
ただし、通常、初期量は333mL/日(400kcal/日)を目安とし、低速度(約41.7mL/時間(50kcal/時間)以下)で投与する。以後は患者の状態により徐々に増量し標準量とする。なお、年齢、体重、症状により投与量、投与濃度、投与速度を適宜増減する。特に投与初期は、水で希釈して投与することも考慮する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは下痢です。お腹が張ったり、吐き気がすることもあります。下痢は、注入スピードが速すぎたり、製剤が冷えていると起きやすいです。下痢が続くようでしたら、医師と相談してみてください。
- 下痢、便秘、お腹が張る、吐き気、吐く、腹痛
- 低ナトリウム血症、高カリウム血症
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