概説 |
乾癬(かんせん)を治療するお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 尋常性乾癬(一般的な乾癬)は比較的よくみられる皮膚病です。皮膚が作られるのが速くなり、角質が増え炎症をともないます。見た目が悪く、皮膚にわずかに盛り上がった赤い斑ができ、そこにフケのような垢や銀白色のカサブタ‘鱗屑(りんせつ)’ができてきます。はっきりした原因は不明で、よくなったり悪くなったりを繰り返すことが多いです。
このお薬は乾癬の治療に用いる塗り薬です。効果を高めるため2種類の成分が配合されています。ひとつは活性型ビタミンD3のカルシポトリオール(ドボネックス)。もうひとつは副腎皮質ホルモンいわゆるステロイドのベタメタゾン(リンデロンDP)です。これらがいっしょに作用することにより、皮膚の新陳代謝が正常化し、炎症や紅斑、鱗屑といった皮膚症状が改善されるのです。

- 【臨床試験】

- この薬の配合剤としての有効性を確かめる臨床試験が行われています。参加したのは乾癬の患者さん676人。クジ引きで3つのグループに分かれ、226人は配合剤であるこの薬を、別の227人はカルシポトリオール単剤を、残りの223人はベタメタゾンを塗り効果を比較します。効果の判定は4週時のPASI変法の平均変化率でおこないます。PASI は乾癬病変の程度や範囲を総合的に評価するスコアシステムです。点数が低ければ軽症、高いほど重症になります。
その結果、この薬(カルシポトリオール+ベタメタゾン)を使用していた人達のPASIスコアの平均変化率は-64.3%(10.3→3.7)、カルシポトリオールで-50.5%(10.4→5.0)、ベタメタゾンの人達で-53.6%(11.1→5.2)でした。各単剤に比べ、この薬を使用していた人達の点数がもっとも低下し、改善率として10%以上の差がでたことになります。この差は臨床的にも一定の意義があるとされ、配合薬としての有用性が確かめられたわけです。
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特徴 |
- 乾癬の外用療法として汎用される活性型ビタミンD3とステロイドの配合剤です。相加作用による速やかな効果発現と、優れた治療効果が期待できます。
- 配合剤ですので、別々に塗布したり、重ね塗りをする手間が省けます。塗布回数も1日1回だけで治療が簡便です。高い有効性と利便性から、重症度にかかわらず外用療法が適用可能な尋常性乾癬に対し第一選択薬のひとつとして用いられます。
- 軟膏剤、ゲル剤、フォーム剤の3種類があります。ゲル剤は、頭部の有毛部位にも塗布しやすいです。フォーム剤は伸展性に優れ、比較的短時間で塗布できます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬を含め使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 皮膚感染症や潰瘍のある部位は使用禁止です。また、腎臓の働きが落ちている人や、高カルシウム血症のある人は、血清カルシウム値の上昇に注意するなど慎重に用いるようにします。病変が広範囲に及び塗布量が多めになる場合も高カルシウム血症の発現に注意が必要です。
- 適さないケース..細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症、疥癬、けじらみ、潰瘍(ベーチェット病は除く)、重い熱傷・凍傷の部位。
- 注意が必要なケース..高カルシウム血症、腎臓病のある人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせによっては、血清カルシウム値が上昇し高カルシウム血症があらわれやすくなります。たとえば、骨粗鬆症の治療に用いる飲み薬の活性型ビタミンD3製剤や免疫抑制薬のシクロスポリンなどです。
- 飲み合わせに注意..アルファカルシドール(アルファロール、ワンアルファ)、カルシトリオール(ロカルトロール)、ファレカルシトリオール(ホーネル、フルスタン)、エルデカルシトール(エディロール)、シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)など。
 【使用にあたり】
- 通常、1日1回、適量を患部に塗ります。ただし1週間に90gを超えてはいけません。30gチューブ3本、15gチューブで6本までです。医師から指示された範囲内で使用してください。
- 決められた患部以外には塗らないでください。原則、顔面には用いません。粘膜や傷口は避けてください。
- 薬に触れた手をよく洗い、軟膏が目や口、傷口などに付着しないようにしましょう。
- 使用直後の入浴やシャワーは避けてください。
- 誤用のないように、子供の手の届かないところで、高温・多湿を避けて保管してください。
- 通常 1〜2週間で効果がでます。1カ月くらいで医師が継続の必要性を検討し、さらに続けるか、単剤に切り替えるか、一定程度の改善をよしとして終了するかを決めます。安易に漫然と使用することなく、そのときどきの症状に応じたきめ細かな指導を受けてください。
- 乾癬そのものは治せません。対症療法薬になりますので、症状を上手におさえながら、気長に根気よく治療を続ける必要があります。

- 【検査】

- 血清カルシウム値や腎機能の検査を定期的におこなう必要があります。とくに腎臓病のある人、広範囲に用いる場合は大事です。
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効能 |
尋常性乾癬 |
用法 |
通常、1日1回、患部に適量塗布する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
塗り薬ですので、適量を用いるかぎり副作用の心配はそれほどありません。ただ、長く続けていると、ニキビのような発疹ができたり、皮膚が白っぽくなる、潮紅する、萎縮するなどステロイド特有の皮膚症状がでる可能性があります。そのような症状が気になるときは医師とよく相談してください。
全身性の副作用で重要なのが高カルシウム血症です。とくに腎臓の悪い人や広範囲に大量を用いている場合など要注意です。ステロイドの飲み薬にみられる副作用はまずありませんが、長期大量使用時あるいは他のステロイド軟膏と併用しているときなど まったくないともいえません。糖尿病や高血圧症の悪化、骨粗しょう症の発現、副腎抑制などに念のため注意が必要かもしれません。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 高カルシウム血症..だるい、脱力感、食欲不振、吐き気、吐く、口の渇き、腹痛、頭痛、めまい、いらいら感、かゆみ、筋力低下、筋肉痛。
- 急性腎障害..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
 【その他】
- かゆみ、発赤、刺激感、ヒリヒリ感
- 毛包炎(毛穴の発赤)、膿疱性発疹(うんだ発疹)
- ステロイド皮膚症..皮膚が白くなる、萎縮し薄くなる、てかてか光る、しわ、潮紅、毛細血管拡張、乾燥肌、酒さ様皮膚炎(赤ら顔)、紫斑、ニキビ、多毛。
- 長期大量使用による副腎障害など全身症状..副腎皮質機能抑制、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症、緑内障、後嚢白内障、感染症など。
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