概説 |
がん性皮膚潰瘍の‘におい’を治すお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- がん性皮膚潰瘍は、がんの進行により皮膚にあらわれる病態です。がん細胞の皮膚表面への浸潤、転移により生じ、潰瘍部位から特異な臭気をだすことが知られています。においがするのは、抗がん薬などによる免疫抑制下で、ある種の細菌‘嫌気性菌’が増殖するためです。
この塗り薬は、そのような がん性皮膚潰瘍臭の治療に用います。有効成分は、臭気物質(プトレシン、カダベリン)を産生する嫌気性菌に強い抗菌作用をもつメトロニダゾールという抗原虫・抗菌薬です。嫌気性菌が消失し不快なにおいがなくなれば、患者さんの精神的苦痛もやわらぎます。

- 【薬理】

- 有効成分のメトロニダゾールは、嫌気性条件下でニトロ基の還元により、微生物内でニトロソ遊離基に変化し、これが微生物のDNAと結合してDNA合成を阻害します。さらに、反応の途中で生成されるフリーラジカルがDNAの二重鎖を切断するなどして微生物の増殖を抑制します。一般的な抗生物質が効きにくい嫌気性微生物によく効くのが特徴です。

- 【臨床試験】

- がん性皮膚潰瘍に伴う臭気に対する有効性を調べる臨床試験がおこなわれています。参加したのは、がん(乳がん)が進行し、がん性皮膚潰瘍臭のある患者さん21人です。そして効果判定のために、塗布14日目の臭気の程度を0点(においがない)〜4点(非常に不快なにおい)の5段階スコアで評価します。
その結果、0点(においがない)または1点(においはあるが不快ではない)に改善した人の割合は95%(20/21人)に達しました。また、においスコアの平均値は塗布前の2.6点から0.5点に低下しました。細菌学的検査では、塗布前に嫌気性菌が検出されていた9人から、嫌気性菌が検出されなくなりました。この薬により、においの原因菌が殺菌され、臭気が軽減されることが確かめられたわけです。
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特徴 |
- 抗原虫・抗菌薬のメトロニダゾールを有効成分とするがん性皮膚潰瘍臭改善薬です。以前は、飲み薬のメトロニダゾールから調剤し実費で適応外使用していましたが、その手間と不便さから新規外用塗布剤として開発されました。がん性皮膚潰瘍臭に適応する国内唯一の薬剤です。
- WHO(世界保健機構)をはじめとする国内外診療ガイドランで 、がん性皮膚潰瘍臭に対する対症療法と して、メトロニダゾール外用剤による処置が推奨されています。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に申し出てください。
- 使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 一部が体内に吸収され中枢神経系などに影響する可能性があります。このため、脳や脊髄に病気のある人は使用できないことがあります。血液に病気あれば、副作用に注意するなど慎重に用いるようにします。
- 適さないケース..脳・脊髄に器質的疾患(脳膿瘍を除く)がある人、妊娠3ヵ月以内の女性
- 注意が必要なケース..血液疾患、脳膿瘍のある人
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 抗血栓薬のワルファリ(ワーファリン)の血中濃度が上昇し、作用や副作用が増強するおそれがあります。同様の理由で、抗がん薬のフルオロウラシル(5-FU)やブスルファン(マブリン)、気分安定薬のリチウム(リーマス)、免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)などにも注意が必要です。
- 抗酒薬のジスルフィラム(ノックビン)との併用により、精神症状の副作用が出現することがあります。
- 飲酒は禁止です。併用すると、アルコールによる悪心・嘔吐、腹痛、頭痛、動悸、紅潮といった症状が強まるおそれがあります。エリキシル剤などアルコール(エタノール)を含む医薬品にも注意が必要です。たとえば、エイズの薬のノービア内用液などです。
 【使用にあたり】
- 決められた手順で使用してください。通常、患部を清拭後、薬剤をガーゼなどにのばし1日1〜2回貼付するか、患部に直接塗布しその上をガーゼなどで保護します。患部を刺激しないように、ていねいに処置してください。
- 灼熱感や刺激感を伴う皮膚症状がみられたら、使用回数を減らすか、一時的にやめて、医師の指示を受けるようにしてください。

- 【妊娠・授乳】

- とくに妊娠初期(3ヵ月以内)は避けることが望ましいです。
 【食生活】
- 飲酒はいけません。薬の影響でアルコールに弱くなり、悪酔いしやすくなるのです。お酒に強い人でも、顔が真っ赤になり、吐き気や嘔吐、腹痛、頭痛など激しい症状を起こすおそれがあります。
- できるだけ日光にあたらないようにしましょう。日焼けランプもよくありません。紫外線により、薬の効果が弱くなってしまうからです。
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効能 |
がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減 |
用法 |
症状及び病巣の広さに応じて適量を使用する。潰瘍面を清拭後、1日1〜2回ガーゼ等にのばして貼付するか、患部に直接塗布しその上をガーゼ等で保護する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
人によっては、灼熱感や刺激痛があらわれます。症状が強い場合は、使用回数を減らすか一時中止し、医師の指示を受けるようにしてください。また、患部が刺激されると、潰瘍部位の血管が損傷し出血を起こすおそれがあります。ガーゼの交換などの際は十分注意しましょう。
飲み薬のような全身性の副作用はまずありませんが、広範囲に大量に用いる場合など まったくないともいえません。末梢神経障害や中枢神経障害、血液障害などに念のため注意が必要です。手足のしびれやピリピリ感、ふるえ、ろれつが回らない、集中力低下、物忘れ、発熱、のどの痛みといった症状に気をつけてください。
- 潰瘍部位からの出血
- 患部の灼熱感、刺激痛、かゆみ
- 皮膚乾燥、紅斑、かぶれ
- 手足のしびれ、感覚まひ、味覚異常
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