概説 |
尿をためやすくし、尿意を抑えるお薬です。頻尿や尿失禁の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 過活動膀胱は、日頃から尿意切迫感があり、頻尿を伴うことが多い症状症候群です。突然に強い尿意を生じ、我慢できないほどでつらいです。その直後に尿漏れを起こしてしまうこともあります。
このお薬は、そのような過活動膀胱に有効です。膀胱をゆるめ、その容量を大きくし、尿をためやすくします。尿意切迫感、日中ないし夜間の頻尿、急な尿意のあとの迫性尿失禁など過活動膀胱における諸症状を改善します。

- 【薬理】

- 膀胱の平滑筋にあるβ3アドレナリン受容体を選択的に刺激し、膀胱の弛緩を促進します。そうすることで、膀胱容量を増大し、蓄尿機能を高めるのです。膀胱に選択的に作用するので、心血管系への影響は比較的少ないと考えられています。このような作用から、選択的β3アドレナリン受容体作動薬と呼ばれています。

- 【臨床試験】

- この薬の効果を、プラセボ(にせ薬)および類似薬の抗コリン薬イミダフェナシン(ウリトス)と比較する試験が行われています。参照薬として採用されたイミダフェナシンは標準的な過活動膀胱治療薬の一つです。参加したのは過活動膀胱の患者さん1224人。そして、それぞれの薬を飲むグループに分かれ、主要評価項目として服薬3カ月間後(12週時)の1日平均排尿回数の変化量を調べるのです。もちろん、グループ分けはクジ引きで行い、本物かプラセボか患者さんにも医師にも伝えません(無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験)。
その結果、この薬を飲んだグループの1日平均排尿回数は服薬前より2.1回減り(11.1→9.0回)、プラセボのグループは1.2回減りました(11.2→10.0回)。また、副次的に調べられた尿意切迫感の1日回数は、この薬で2.3回減り(3.7→1.4回)、プラセボで1.8回減りました(3.8→2回)。尿失禁については、この薬で1.4回減り(2.0→0.6回)、プラセボで1.1回減りました(1.9→0.8回)。いずれの評価項目でもプラセボに比べ有意な改善が認められ、安全性についても特段の問題はありませんでした。なお、参照薬のイミダフェナシンとは有効性・安全性とも同程度でしたが、口内乾燥の発現率はこの薬のほうが少なめでした。
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特徴 |
- 新しい作用の過活動膀胱治療薬です。薬理作用から選択的β3アドレナリン受容体作動薬と呼ばれています。同系として2番目であり、ミラベグロン(ベタニス)に次ぐものです。
- 現在、標準的に用いられている抗コリン薬のソリフェナシン(ベシケア)、トルテロジン(デトルシトール)やイミダフェナシン(ウリトス)とは作用機序が違います。抗コリン薬と同等ないしそれ以上の効果が期待でき、また、口の渇き、便秘、尿が出にくいといった副作用が軽減できる可能性があります。そのような副作用で抗コリン薬が使いにくいときの新たな選択肢です。
- 通常は単独で用いますが、抗コリン薬またはα1遮断薬(ハルナール等)との併用効果も期待できます。ただし、抗コリン薬と併用する場合は、尿閉などの副作用にも注意が必要です。前立腺肥大症ではα1遮断薬治療後に残存する過活動膀胱に対する追加併用療法が考えられます。
- 同系のミラベグロン(ベタニス)で心配される生殖器系への影響はありません。また、QT延長を含め心血管系への悪影響や薬物間相互作用のリスクも低いとされます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 使用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 重い心臓病のある人は慎重に用います。心拍数を増加させ病状を悪化させるおそれがあるためです。肝臓が悪いと、薬の代謝・排泄が遅れ、血中濃度が上昇する可能性があります
- 注意が必要なケース..重い心臓病、重い肝臓病のある人。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 禁止ではありませんが、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)や抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)は、この薬の代謝を阻害し血中濃度を上昇させる可能性があります。逆に、結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)は、この薬の血中濃度を低下させ作用を弱めるかもしれません。
- 飲み合わせに注意..イトラコナゾール(イトリゾール)、リトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)、リファンピシン(リファジン)、リファブチン(ミコブティン)、フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)など。
 【使用にあたり】
- 通常、1日に1回1錠を食後に飲みます。とくに指示がなければ、朝食後でよいでしょう。
- 飲み忘れたら、気づいたときに飲んでください。ただし、次の服用時間が近ければ、1回分抜かし、次の時間に1回分飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。
 【妊娠・授乳】
- 妊娠中またはその可能性のある女性は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。
- 授乳については、医師が治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、その可否を決めます。
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効能 |
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁 |
用法 |
通常、成人はビベグロンとして50mgを1日1回食後に経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用は少ないほうです。人によっては、口内乾燥や便秘がみられますが、頻度は従来の抗コリン薬より低いです。重い副作用として尿閉が報告されています。もし、尿がまったく出ないときはすぐに受診してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
 【その他】
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