概説 |
骨を丈夫にするお薬です。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 骨粗鬆症は、骨の代謝が悪くなり、骨がもろくなる病気です。腰痛や背中の痛みをともなうほか、高齢の人では骨折しやすくなります。男性に比べ女性に多いのは、閉経後 女性ホルモンの減少により骨代謝のバランスがくずれやすくなるためです。
このお薬の主成分は、女性ホルモンの一種の「卵胞ホルモン薬」です。これを補うことで、骨が溶け出すのを抑え、新陳代謝のアンバランスを正常化します。結果的に、骨の密度が増大し、骨折の予防にもつながるわけです。女性の閉経後骨粗鬆症に適応します。

- 【薬理】

- 骨のエストロゲン受容体に結合後、骨代謝回転に関与するサイトカインを介して骨吸収抑制作用を発揮します。作用の仕方は女性ホルモンと同じで、骨を溶かす破骨細胞の寿命を縮め その働きを抑制することになります。
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特徴 |
- 主成分は生理活性の高い17β-エストラジオール。天然型の卵胞ホルモン(エストロゲン)の一種です。これに、子宮内膜保護を目的として、黄体ホルモン薬のレボノルゲストレルが配合されます。
- 骨粗鬆症治療薬として初めての卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤です。今までのように黄体ホルモン薬を追加併用する必要がなく、1日1錠だけで済みます。
- いわゆる女性ホルモン補充療法(HRT)として、更年期障害の改善効果が期待できます。のぼせや発汗など更年期特有の症状があり、ラロキシフェン(エビスタ)が使いにくいときに向きます。
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注意 |
 【診察で】
- 血栓症など持病や、アレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人は、医師に伝えてださい。妊娠中は使用できません。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- とくに長期使用が必要な場合、その利点だけでなく不利益についても説明を受けてください。医師とよく話し合い、納得のうえで治療にあたることが大切です。

- 【注意する人】

- 卵胞ホルモンによって悪化する乳がんや子宮がんがある場合は使用禁止です。もし、原因不明の性器出血があるなら、子宮がんでないことを確認したうえで使用する必要があります。血栓性静脈炎や心筋梗塞など、血栓性疾患のある人も使用できません。
- 適さないケース..血栓性静脈炎、肺塞栓症、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、乳がん、乳がん既往歴、子宮内膜がん、未治療の子宮内膜増殖症、重い肝臓病、子宮を摘出している人、妊娠中。
- 注意が必要なケース..子宮筋腫、子宮内膜症、乳がん家族素因、乳房結節、乳腺症、高血圧、心臓病、腎臓病、肝臓病、糖尿病、片頭痛、てんかん、全身性エリテマトーデス、ポルフィリン症、高トリグリセリド血症、手術前、寝たきり、長期に体を動かせない状態にある人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 飲み合わせによっては、この薬の作用が増強されるおそれがあります。たとえば、マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス)、トリアゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア)などに注意が必要です。
- 逆に、この薬の作用を弱めるものもあります。抗結核薬のリファンピシン(リファジン)、抗けいれん薬のやカルバマゼピン(テグレトール)やフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、フェノバルビタール(フェノバール)、ステロイド薬などがこれに当たります。
- セイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品はとらないでください。この薬の作用を弱めるかもしれません。

- 【使用にあたり】

- ふつう、1日1回1錠を飲みます。飲み始めの乳房痛や子宮出血、吐き気などは、徐々になくなることが多いです。気になるときは、医師とよく相談してください。
 【検査】
- 服薬に先立ち、乳房と子宮に異常がないかを調べます。治療開始後も乳房検診や婦人科検診を定期的に実施する必要があります。
- 効果の確認のために骨密度の測定をおこなうことがあります。
 【食生活】
- たとえば長時間飛行や車中泊など、体を動かせない状態が長く続くと、血栓症のリスクが少し高まるかもしれません。水分を多くとり、できるだけ体、ことに足をこまめに動かすようにしましょう。
- バランスのよい食事を心がけましょう。とくに、カルシウム分やビタミンD、ビタミンKが大切です。カルシウムは乳製品や小魚に、ビタミンDはウナギやイワシ、レバーなどに多いです。ビタミンKは、納豆をはじめ、ホウレン草やブロッコリーなど野菜類にたくさん含まれます。
- 適度な運動も、骨量を増やし骨を丈夫にします。日光浴をかねた散歩やウォーキングが、その第一歩です。

- 【備考】

- 女性の閉経後骨粗鬆症には、この薬と同系の女性ホルモン薬のほか、似た作用をもつラロキシフェン(エビスタ)が広く処方されています。また、骨粗鬆症の基礎薬として、活性型ビタミンD製剤も有用です。骨折のリスクが高い重度の骨粗鬆症には、ビスホスホネート系薬剤を用いるようにします。
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効能 |
閉経後骨粗鬆症 |
用法 |
通常、成人に対し1日1錠を経口投与する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用で多いのは、乳房の張りや痛み、予定外の性器出血、吐き気や腹痛、腹部膨満などです。これらは、2〜3カ月して体が慣れてくればたいてい軽快しますので、それほど心配ないと思います。つらいようでしたら、早めに受診し医師とよく相談してください。
重い副作用はまずありませんが、念のため注意が必要なのは「血栓症」です。血液の固まりで血管が詰まることで起こります。生じる所はいろいろです。手足、とくにふくらはぎの痛みやシビレ、突然の息切れ、胸の痛み、激しい頭痛、めまい、急に視力が落ちるといった症状が前触れとなります。万一のことですが、そのような症状があらわれたら、すぐ医師に連絡してください。
そのほか、すぐに起こる副作用ではありませんが、長期間のホルモン補充療法により、乳がんの発現リスクが少し高まる可能性があります。このへんのことも含め、治療上の不利益についてもよく聞いておくとよいでしょう。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 血栓症..手足とくにふくらはぎの痛み・はれ・むくみ・しびれ、突然の息切れ・息苦しい、深呼吸で胸が痛い、急に視力が落ちる、視野が欠ける、目が痛む、頭痛、片側のまひ、うまく話せない、意識が薄れる。
 【その他】
- 乳房が張る、乳房痛
- 予定外の性器出血、下腹部痛、おりもの
- 吐き気、食欲不振、腹痛、腹部膨満
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