概説 |
尿量を減らすお薬です。尿崩症や夜尿症の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き-1】

- 中枢性尿崩症は、脳から分泌される“バソプレシン”という抗利尿ホルモンの不足で起こります。このホルモンは尿を減らす役目をしています。不足すると、腎臓での水分の再吸収が減少し、うすい尿が大量にでてしまうのです。その反動で、のどが渇き水も飲みたくります。
このお薬は、抗利尿ホルモンのバソプレシンと同じように作用し、その働きを補います。すなわち、腎臓での尿中水分の吸収を促進し、尿を濃くして尿量を減らせるわけです。抗利尿ホルモンの不足による中枢性尿崩症に適応するほか、以下のような夜尿症の治療にも用います。

- 【働き-2】

- 6歳を過ぎても、毎晩のように おねしょをする状態が夜尿症です。夜間の尿量が多い、膀胱が小さく尿をためられない、尿がたまっても目が覚めないなど、体の未熟性によるいくつかの原因が考えられます。成長とともに徐々に改善し自然治癒する場合がほとんどですが、それまでの苦痛やご家族の苦労はたいへんです。
このお薬は、夜尿症治療薬です。抗利尿ホルモンのバソプレシンと同じように働き、尿を濃縮し尿量を減らす作用があります。このため、夜間のホルモン分泌能力が未発達なために、尿が濃くならず、うすい尿がたまってしまうタイプの夜尿症に向きます。実際に夜間の尿量が減少し、夜尿日数が少なくなることが確かめられています。ただし、ホルモン補充療法ですので、夜尿症の原因そのものは治せません。やめると再発してしまうことも多いです。
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特徴 | 中枢性尿崩症や夜尿症の治療に標準的に用いられています。有効成分のデスモプレシンは抗利尿ホルモン“バソプレシン”の誘導体です。そのまま飲んでしまうと効果がなくなるので、点鼻薬として鼻の粘膜から吸収させます。作用時間が長く、持続的な尿量調節効果がえられます。なお、その後に、デスモプレシンを含有する特殊な飲み薬(ミニリンメルトOD錠)も開発されました。 |
注意 |
 【診察で】
- 高血圧など持病のある人は医師に伝えておきましょう。また、使用中の薬を医師に教えてください。
- 医師または薬剤師から、正しい使い方を習っておきましょう。
- 水中毒の副作用や注意事項について、ご本人 できたらご家族も含め、十分説明を受けてください。また、水の1日摂取量を確認しておきましょう。
 【注意する人】
- 低ナトリウム血症がある場合、夜尿症の治療に用いることはできません。
- 高血圧や狭心症など循環器系に病気のある人は、慎重に用います。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎のある人も医師に話してください。
- 小さい子供の夜尿症はあたりまえのことですので、6歳未満の一般的な夜尿症には原則用いません。
 【使用にあたり】
- 説明書をよく読んでおきましょう。正しく噴霧しないと、よい効果が発揮されません。
- 使用量は年齢や症状によって違います。決められた使用量・使用回数を厳守してください。ふつうは1日1〜2回使用します。夜間の排尿を少なくするのに、寝る前のこともあります。
- 鼻水があるようでしたら、使用前に鼻をかんでおきましょう。
- 水分をとり過ぎないようにしてください。指示された飲水量を守ることが大事です。とくに、発熱時や喘息など飲水が増加する病気を合併している人は要注意。もし、水を飲みすぎてしまった場合は、次の1回分を抜かし休薬してください。
- 夜尿症の場合は、使用2〜3時間前(夕食後)より翌朝までの飲水を極力避けるようにします。また、就寝前の排尿を徹底しましょう。
- 別の病気で他の医師の診察を受けるときは、この薬を使用していることを伝えてください。
 【検査】
- 中枢性尿崩症(バソプレシン欠乏性尿崩症)の確定診断が必要です。腎性尿崩症をはじめとする別の多尿疾患を除外するため、バゾプレシン負荷試験など各種検査をおこないます。
- 夜尿症では、そのタイプを診断するため、事前に起床時の尿を採取し、尿の浸透圧や比重を調べます。この薬の適応となるのは浸透圧低下型夜尿症(低比重多尿型)です。
- 水中毒を予防するために、血漿浸透圧や血清ナトリウム値検査、体重測定などをおこなうことがあります。とくに中枢性尿崩症の治療のさいは、治療開始数日間は毎日、その後は定期的に実施しなければなりません。

- 【保管】

- ふだんは冷蔵庫に保管します。旅行などで携行する場合は、できるだけ温度差の少ない涼しいところに保管してください。ポケットなど、体温が直接伝わる場所に入れておくと液漏れを起こすことがありますので注意してください。
 【備考】
- 病気の原因そのものは治せません。中枢性尿崩症においては対症療法的に長く続ける必要があります。けれど必ずしも減量中止ができないわけではありません。尿量が自然に減少し、薬が必要でなくなることもあります。
- 子供の夜尿症は、年齢とともに自然に治ることがほとんどです。体質的なものですので、あまり神経質にならず、少し気長に様子をみるとよいでしょう。この薬による治療をおこなう場合でも、定期的(3ヵ月前後)に1〜2週間休薬して夜尿状況を観察するなど、漫然と継続しないようにします。
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効能 |

- 【点鼻スプレー2.5μg】

- 中枢性尿崩症

- 【スプレー10】

- 尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う次の疾患//夜尿症
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用法 |
 【点鼻スプレー2.5μg】
- 小児:通常デスモプレシン酢酸塩水和物として1回2.5μg〜5μg(1〜2噴霧)を1日1〜2回鼻腔内に投与する。投与量は患者の飲水量、尿量、尿比重、尿浸透圧により適宜増減する。
- 成人:通常デスモプレシン酢酸塩水和物として1回5μg〜10μg(2〜4噴霧)を1日1〜2回鼻腔内に投与する。投与量は患者の飲水量、尿量、尿比重、尿浸透圧により適宜増減する。

- 【スプレー10】

- 通常、1日1回就寝前にデスモプレシン酢酸塩水和物として10μg(1噴霧)から鼻腔内に投与を開始し、効果不十分な場合は、1日1回就寝前にデスモプレシン酢酸塩水和物として20μg(2噴霧)に増量する。なお、1日最高用量はデスモプレシン酢酸塩水和物として20μg(2噴霧)とする。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
薬が効きすぎると、頭痛や吐き気、けん怠感、寒気などが起こります。“水中毒”のおそれがありますので、いったん使用を中止し、直ちに医師に連絡してください。薬の量を調整したほうがよいかもしれません。
水中毒は、ナトリウム分の少ない薄い水が体にたまった状態です。ひどくなると、脳浮腫を生じ、けいれんや意識障害を起こします。水をたくさん飲むと、起こりやすくなりますので、決められた飲水量を守ることが大切です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い水中毒..けん怠感、顔色が悪い、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気、発汗、むくみ、急激な体重増加、意識の乱れ、けいれん
 【その他】
- 頭痛、吐き気、吐く、けん怠感、寒気
- 浮腫(むくみ)、低ナトリウム血症
- 眠気、めまい、発汗
- 全身のかゆみ、発疹
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