概説 |
腸の炎症をしずめるお薬です。潰瘍性大腸炎に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症を起こす病気です。直腸など大腸の一部または大腸全体の粘膜層に潰瘍やびらんを生じ、ひどい下痢や腹痛を起こします。直腸炎型では血便をともなうことも多いです。完治は難しく、そのような症状がでる活動期と、軽快する寛解期を繰り返します。
このお薬の有効成分ブデソニドは、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の一種です。ステロイドには炎症をおさえる強い作用があります。注腸剤として用いることで、直腸からS状結腸の患部に直接作用します。炎症がひけば、下痢や腹痛も改善してきます。軽症から中等症の活動期の潰瘍性大腸炎の治療に用います。

- 【薬理】

- ステロイド(糖質コルチコイド)には組織の反応性を低下させる作用があります。炎症起因物質のサイトカイン、マスト細胞、好酸球などの産生および遊離を抑制するとともに、血管透過性や炎症性浮腫形成を抑えることにより抗アレルギー・抗炎症作用・免疫抑制作用を発揮するものと考えられます。

- 【臨床試験】

- この薬の効果と安全性をプラセボ(にせ薬)と比較する試験がおこなわれています。参加したのは、直腸からS状結腸に発赤やびらんなど中等症の内視鏡所見が認められる活動期潰瘍性大腸炎の患者さん126人です。このうち64人はこの薬を、残りの62人はプラセボを使用し、6週後の粘膜治癒率を比べるのです。粘膜治癒は長期的な寛解維持の観点からも臨床的意義が高いと考えられています。
その結果、この薬を飲んでいた人達の粘膜治癒率は33%(21/64人)、プラセボの人達で3%(2/62人)でした。プラセボに比べ明らかに治癒率が高く、プラセボに対する優越性が証明されたわけです。さらに、副次的に調べられた寛解率および排便回数、血便、医師の全般的評価などもプラセボを上回る傾向が示されました。安全性については、6週時に血中コルチゾールと副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の低下が認められましたが、服薬終了後には服薬前と同程度に回復しました。
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特徴 |
- 肛門から直腸内に注入する泡状の注腸フォーム製剤です。泡状のため、薬剤が腸内に留まり、肛門から漏れにくいというメリットがあります。立ったまま使用でき、利便性も高いです。
- 有効成分のブデソニドは局所作用型の強力な合成副腎皮質ステロイドになります。体内に吸収されても肝臓ですぐ代謝されるため、全身作用が少ないのが特徴です。飲み薬に比べ、はるかに安全性が高いです。
- 直腸からS状結腸に病変がある中等症までの活動期潰瘍性大腸炎に対し、寛解導入を目的として使います。長期的な寛解維持療法には向きません。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠出産を希望する場合は、事前に医師と相談しましょう。

- 【注意する人】

- 細菌やウイルスによる重い感染症のある人は、慎重に用いる必要があります。とくに長期使用時は注意が必要です。
- 注意が必要なケース..感染症(結核、細菌感染症、単純疱疹、真菌症、B型肝炎など)、肝炎ウイルスをもっている人、水痘(水ぼうそう)もしくは麻しん(はしか)の既往がなく また予防接種を受けていない人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 飲み合わせによっては、この薬の血中濃度が上昇します。たとえば、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、抗エイズウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)やコビシスタット(スタリビルド)などに注意が必要です。薬ではありませんが、グレープフルーツにも同様の性質があります。
- 生ワクチン(麻しん、風しん、BCG等)の接種は、免疫機能を検査のうえ慎重におこないます。
 【使用にあたり】
- アプリケーターを使い直腸内に噴射します。使用回数は1日2回、1回あたり1プッシュです。具体的な使用方法は説明書にあります。その手順にならって使用してください。
- 薬剤が手や目に付着した場合は、すぐ水で洗い流してください。また、肛門周囲に漏出したら、直ちにふき取ってください。
- 忘れた場合、気づいたときに使用してください。ただし、次の使用時間が近ければ1回とばし、次の通常の時間に使用してください。2回分を一度に使用してはいけません。
- 寛解導入が目的です。使用期間の目安はおおよそ6週間。医師の判断でさらに続けることもありますが、長期の維持療法には向きません。
 【食生活】
- 水痘(水ぼうそう)または麻しん(はしか)に感染しないように注意しましょう。感染が疑われる場合は直ちに受診してください。
- 次のような場合、この薬を使用していることを医師に報告してください。大けがをした場合、手術をするとき、予防接種や皮内反応テストをするとき。
- グレープフルーツジュースは飲まないほうがよいでしょう。この薬の血中濃度が上昇し副作用が増強するおそれがあるためです。
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効能 |
潰瘍性大腸炎(重症を除く)
- 注意:本剤が腸内で到達する範囲は概ねS状結腸部までであり、直腸部及びS状結腸部の病変に対して使用すること。
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用法 |
通常、成人には1回あたり1プッシュ(ブデソニドとして2mg)、1日2回直腸内に噴射する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
頻度はまれですが、頭痛、不眠、めまい、痔などが報告されています。検査で見つかるのは、血中コルチゾールと副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の減少です。これは副腎皮質機能抑制を意味しますが、多くの場合 その程度は軽く、実害がでるほどではありません。
- 頭痛、不眠、めまい
- 痔、胃潰瘍、むくみ、高血圧
- ざ瘡(にきび、吹き出物)
- 血中コルチゾール減少、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)減少、肝機能値異常
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