概説 |
便通をつけるお薬です。便秘症や便秘型の過敏性腸症候群の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き-1】

- 便秘は、十分量かつスムーズな排便ができず、排出すべき便が大腸内に留まっている状態です。排便回数の減少、便の硬さ、排便困難感、残便感などにより診断され、主な症状として腹痛や膨満感などを伴います。便秘は発症経過や病状の期間から急性(一過性)便秘と慢性便秘に分かれ、さらに腸管通過に影響する器質的病変の有無により機能性便秘と器質性便秘に大別されます。
このお薬は便秘薬です。腸管に直接作用し、腸内の水分量を増やしたり、腸の運動を活発にして便通をつけます。さらに、大腸の痛覚過敏を抑制することにより、腹痛や腹部不快感を改善します。機能性の慢性便秘症に広く用いられるほか、別の病気からくる症候性便秘や薬剤性便秘にも使えます。ただし、腫瘍などによる器質性便秘には向きません。

- 【働き-2】

- 過敏性腸症候群は、腸に器質的な異常がないのに、頻繁に腹痛や排便異常を起こす機能性の病気です。症状は人それぞれですが、大きく 下痢型、便秘型、両方を繰り返す混合型の3つのタイプに分かれます。
このお薬が有効なのは、便秘型の過敏性腸症候群に対してです。腸管に直接作用し、腸内の水分量を増やしたり、腸の運動を活発にして便通をつけます。さらに、大腸の痛覚過敏を抑制することにより、腹痛や腹部不快感を改善します。

- 【薬理】

- 腸粘膜上皮細胞に存在するグアニル酸シクラーゼC受容体を刺激し、細胞内のサイクリックGMPの濃度を増加させることにより、腸内への水分分泌を促進し、また腸の蠕動を活発にします。さらにストレスや大腸炎によって引き起こされる大腸痛覚過敏を改善する作用もあります。このような大腸機能促進作用と痛覚過敏改善作用が、便秘型過敏性腸症候群における排便異常や腹痛・腹部不快感を改善するものと考えられます。

- 【臨床試験-1】

- 慢性便秘症に対する効果をプラセボ(にせ薬)と比較する試験が行われています。参加したのは、自発排便回数が週3回未満の慢性便秘症の患者さん179人。このうち91人はこの薬を、残りの88人はプラセボを服用し、服薬第1週の自発排便回数がどれだけ増えるか調べます。
その結果、排便回数の変化量は、この薬を飲んだ人達で週あたり平均4.0回増加(1.7→5.7回/週)、プラセボの人達で1.5回増加(1.7→3.2回/週)しました。この薬のほうが、プラセボよりも週2.5回ほど排便回数が増えたわけです。安全性については、下痢がプラセボより多くみられましたが、いずれも軽度から中等度で、減量や休薬により回復しました。

- 【臨床試験-2】

- 次は、便秘型過敏性腸症候群の患者さん500人を対象とした試験です。この薬を飲む人と、プラセボを飲む人に半々に分かれ、3カ月(12週)治療を続けます。もちろん、どちらを飲むかはクジ引きで決め、本物かプラセボか患者さんにも医師にも知らせません(プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験)。
効果の判定は患者日記にもとづきます。具体的には、治療前と比べ「1=非常に良くなった、2=良くなった、3=少し良くなった、4=変わらない、5=少し悪くなった、6=悪くなった、7=非常に悪くなった」の7段階で1週間毎に評価し12週間にわたり記入してもらいます。そして、治療期12週のうち評価1(非常に良くなった)または2(良くなった)の週が6週以上の場合を有効(全般改善効果あり)とするのです。
その結果、この薬を飲んだ人達の有効率は33.7%(84/249人)、プラセボの人達で17.5%(44/251人)でした。また、別の評価として、残便感がない自然排便の頻度が週平均3回以上の週が6週以上におよぶ人の割合は、この薬の人達で34.9%(87/249人)、プラセボの人達で19.1%(48/251人)でした。いずれの評価でも、プラセボに比べ明らかに有効率が高く、プラセボに対する優越性が検証されたわけです。
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特徴 |
- 作用機序からは、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬に分類されます。腸管粘膜に直接作用し、体内には吸収されませんので、安全性が高く、副作用の心配もそれほどありません。長期使用時の減弱もみられず、耐性や習慣性の問題もないようです。
- 慢性便秘症と便秘型過敏性腸症候群に対する効能が認められています。便秘型過敏性腸症候群を適応症とするのは、この薬だけです。
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注意 |

- 【診察で】

- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
 【注意する人】
- 下痢型の過敏性腸症候群には用いません。
- 腫瘍やヘルニアなどで機械的(器質的)な消化管閉塞(腸閉塞)がある場合は使用できません。
 【使用にあたり】
- 指示された飲み方を守ってください。通常、1日1回、食前に2錠(0.5mg)飲みます。症状によっては1錠(0.25mg)に減量することがあります。
- 飲む時間は、排便のタイミングや生活リズムを考慮し、朝食前、昼食前または夕食前のいずれかにします。
- 飲み忘れた場合は、その日は飲まないでください。翌日からいつもどおりに服用しましょう。2回分を一度に飲んではいけません。
- かえって腹痛が悪化したり、下痢になってしまう場合は、早めに受診し医師と相談してください。
- 服用1〜2カ月を目安に、治療を続けるか終了するかを医師が決めます。漫然と続けるのは好ましくありませんが、自分だけの判断でやめてはいけません。
 【妊娠・授乳】
- 危険性が高いわけではありませんが、妊娠中における安全性はまだ確立されていません。このため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限り使用されることになります。
- 乳汁中は勧められません。使用する場合は、授乳を避ける必要があります。

- 【食生活】

- 便秘症では、薬にだけ頼るのではなく、食生活を見直し、規則正しい排便習慣をつけることが大切。便秘薬は、どうしても便通のないときにワンポイントで使用したり、排便のリズムをとり戻すために一定期間だけ使用するのが原則です。
- 排便習慣..朝食後、便意がなくても必ずトイレへ。朝おきたときに、冷たい水や牛乳を飲んでおくとよい。
- 運動..とくに腹筋を使う運動、からだの反り・ねじりなど腹部の体操が効果的。
- 食物繊維と乳酸菌食品..野菜、果物、海藻、きのこ、豆、ヨーグルト、乳酸菌飲料などを積極的にとる。
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効能 |
- 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
- 便秘型過敏性腸症候群
[注意]治療の基本である食事指導及び生活指導を行った上で、症状の改善が得られない患者に対して、本剤の適用を考慮すること。
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用法 |
通常、成人はリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口服用する。なお、症状により0.25mgに減量する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
比較的多いのは下痢と腹痛です。ひどい下痢が起きたら、飲むをやめて医師と相談してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重度の下痢..水のような便、頻回な下痢、下痢が数日続く、嘔吐をともなう下痢。

- 【その他】

- 下痢、腹痛
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