概説 |
抗がん薬による吐き気や嘔吐をおさえるお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 抗がん薬の治療にともない、強い吐き気や嘔吐を生じることがあります。この悪心・嘔吐の副作用は、精神的に負担になるばかりか、低栄養から全身状態の悪化をまねくおそれがあり、治療の継続を困難にする大きな要因です。
このお薬は、そのような抗がん薬による悪心・嘔吐をおさえ、心身の苦痛をやわらげます。シスプラチン注射液(ブリプラチン注、ランダ注)など嘔吐の副作用が強い抗がん薬使用時に予防的に用いることになります。抗がん薬投与後すぐに発現する急性嘔吐と、24時間以降に発生する遅発性嘔吐の両方に有効です。

- 【薬理】

- 中枢性(脳内)の嘔吐反応にかかわるNK1(ニューロキニン1)受容体に選択的に結合することで、嘔吐反応を抑制します。このような作用から、「選択的NK1受容体拮抗型制吐薬」と呼ばれています。
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特徴 |
- 世界初の選択的NK1受容体拮抗型制吐薬です。急性嘔吐に広く用いられている5-HT3受容体拮抗薬とは効き方が違います。急性期だけでなく、24時間以降に起こる遅発性嘔吐にも有効です。
- 作用機序が異なる他の制吐薬と併用することにより、優れた制吐効果を発揮します。急性期には5-HT3受容体拮抗薬と、急性期と遅発期にはデキサメタゾン(デカドロン)などステロイド薬と併用するのが一般的です。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 重い肝臓病のある人は、血中濃度の上昇に留意するなど慎重に用いるようにします。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
- 抗精神病薬のピモジド(オーラップ)とは飲めません。併用により、ピモジドの血中濃度が上昇し、重い副作用をまねくおそれがあるためです。
- マクロライド系抗生物質のエリスロマイシン(エリスロシン)やクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、アゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)は、この薬の血中濃度を上昇させるおそれがあります。
- 抗結核薬のリファンピシン(リファジン)や抗けいれん薬のフェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)など ある種の薬と併用すると、この薬の作用が弱まるかもしれません。
- ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)との併用により、デキサメタゾンの効果が増強する可能性があります。そのため、併用にさいしてはデキサメタゾンを減量するなどその用量に配慮が必要です。
- 抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)を服用している場合は、適時、血液凝固状態の検査をおこなわなければなりません。
- 避妊薬の効果を減弱させるおそれがあります。この薬を服用中および服用終了後1ヵ月間は、代りの避妊法または補助的避妊法を用いる必要があります。
 【使用にあたり】
- 通常、1日目は125mgのカプセルを、2日目以降は80mgのカプセルを1日1回1カプセル飲みます。
- 飲む時間は、1日目は抗がん薬の注射の前です。予防的に1時間〜1時間30分前に飲むことになります。2日目以降は午前中にしてください。食事の影響を受けないので食事と関係なく飲めます。
- 抗がん薬投与後すぐに発現する急性嘔吐に対しては、5-HT3受容体拮抗薬またはステロイド薬と併用するのが一般的です。24時間以降に発現する遅発性嘔吐にはステロイド薬と併用します。
- 即時型の急性嘔吐は、抗がん薬投与1〜2時間後に発現することが多いです。遅発性嘔吐は2〜4日後です。この薬を飲んでいたにもかかわらず、吐き気や嘔吐を起こすようでしたら、医師にその状況を伝えよく相談してみてください。

- 【備考】

- 抗がん薬による嘔吐には、この薬のほか5-HT3受容体拮抗薬やステロイド薬が有用です。即時型の急性嘔吐に対しては、この薬と5-HT3受容体拮抗薬あるいはステロイド薬を、2〜4日後に生じる遅発性嘔吐にはステロイド薬やオランザピン(ジプレキサ)と併用します。さらに、心理的な要因がみられるときには安定薬も使います。抗がん薬による治療を円滑におこなうためにも、悪心・嘔吐を防ぐ十分な対策をとることが重要なのです。
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効能 |
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む) |
用法 |

- 【用法】

- 他の制吐剤との併用において、通常、成人及び12歳以上の小児はアプレピタントとして抗悪性腫瘍剤服用1日目は125mgを、2日目以降は80mgを1日1回、経口服用する。
 【注意】
- がん化学療法の各コースにおいて、本剤の服用期間は3日間を目安とすること。また、成人では5日間を超えて、12歳以上の小児では3日間を超えて本剤を服用した際の有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤は、原則としてコルチコステロイド及び5-HT3受容体拮抗型制吐剤と併用して使用すること。
- 本剤は、抗悪性腫瘍剤の服用1時間〜1時間30分前に服用し、2日目以降は午前中に服用すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用は少ないほうです。人によっては、便秘や頭痛、しゃっくりを起こすことがあります。重い副作用はまずありません。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔や喉の腫れ、ゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)..発疹・発赤、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、水ぶくれ、皮がむける、強い痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 穿孔性十二指腸潰瘍..激しい腹痛、吐く、下血(血液便、黒いタール状の便)、吐血(コーヒー色のものを吐く)。
 【その他】
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