概説 |
気道の炎症をおさえる吸入薬です。喘息の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 喘息は「気道の慢性炎症にもとづく病気」と考えられるようになりました。気管や気管支が炎症により過敏になり、少しの刺激でけいれん収縮し気道が狭くなります。そして、ゼーゼー・ヒューヒュー呼吸が苦しくなるのです。
この吸入薬の主成分は、ステロイドの一種です。ステロイドには強い抗炎症作用があります。気道の炎症がおさまると、過敏性が低下し発作が起こりにくくなります。ふだんからステロイド吸入薬により気道の炎症をしずめておくことが、発作を予防する意味で非常に重要なわけです。

- 【薬理】

- ステロイドには組織の反応性を低下させる作用があります。気道における抗炎症作用は、炎症起因物質のサイトカイン、マスト細胞、好酸球などを減少させることによります。そのほか、血管透過性抑制作用や粘液分泌抑制作用もあります。
|
特徴 |
- ステロイド(副腎皮質ホルモン)のブデソニドを有効成分とする吸入薬です。ステロイド吸入療法は、喘息の治療に第一選択されます。ブデソニドは局所作用型で、従来品のベクロメタゾンの約2倍の抗炎症作用を示し、しかも全身性の副作用がでにくいのが特徴です。
- ドライパウダー吸入式のパルミコートタービュヘイラーと、水性懸濁液のパルミコート吸入液の2種類の製剤があります。前者はハンドタイプの携帯可能な吸入器、後者はアンプル入りの液剤でネブライザーを用いて吸入します。
- タービュヘイラーの採用により薬剤肺到達率が向上し、従来の加圧式定量噴霧吸入器の2倍以上の到達率を示します。100回もしくは200回分の薬剤が充填されているので、薬剤の詰め替えの必要がありません。
- パルミコート吸入液は、1回使用量がポリエチレン製アンプルに充填されています。これを電動式ネブライザーに注入して吸入します。自然な呼吸で薬剤の吸入ができるので、吸気力の弱い乳幼児に有用な製剤です。
|
注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 正しい使い方と吸入方法の説明を受けておきましょう。
 【注意する人】
- 細菌や真菌による重い感染症のある人は、慎重に用いる必要があります。とくに結核性疾患がある場合は原則禁止です。
- 感染症の併発により、喘息症状が悪化することがあります。そのような場合は、ステロイド療法の強化とともに感染症の治療を平行しておこないます。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)との併用により、この薬の血中濃度が上昇する可能性があります。
 【使用にあたり】
- 予防薬として毎日規則的に吸入する必要があります。説明書をよく読み、指示通りに使用してください。正しく吸入しないと、よい効果が発揮されません。ドライパウダー式のタービュヘイラーは、ふつう1日2回吸入します。吸入力の弱い人は、吸い残しに注意しましょう。
- アンプル入りの吸入液は、ジェット式ネブライザーを用いて吸入します。こちらは1回使い捨てタイプのアンプルになります。通常、全量を注入しますが、もし液が残ったとしても再使用しないで破棄してください。
- 吸入後、うがいをし口をすすぎましょう。嗄声や口内炎を予防するうえで大切なことです。うがいは、十分水を含み、上を向いてのガラガラうがいと、グチュグチュする含みうがいを10秒ほど2回以上おこなうと効果的です。上向きうがいができなければ、グチュグチュゆすいだあと、水を飲むだけでも違います。食前に吸入しすぐにうがいをし、そのあとに食事をし歯磨きをすればほぼ完璧です。外出先で どうしてもうがいができない場合は、テイッシュにつばを吐き出すだけでもよいでしょう。
- 起きている発作を止める効果はほとんどありません。発作時には、気管支拡張作用をもつ速効性の吸入薬を使用してください。
- フェイスマスクを使用する場合、口のまわりに薬剤が付着して残る可能性があります。吸入後、水で顔を洗ってきれいにしておきましょう。
- タービュヘイラー使用後は必ずキャップ(カバー)を閉めて保管してください。また、マウスピースの外側を週に1〜2回乾燥した布で清拭しておきましょう(水洗いはしないこと)。
- 発作がおさまらない場合や、たびたび起こる場合はすみやかに受診してください。
- 炎症がひき気道過敏性が改善されるまでに3〜6ヵ月かかります。よくなったからと自分だけの判断でやめてはいけません。急に中止をすると、反動で症状が悪化します。減量・中止をする場合は、医師の判断で徐々に減量するようにします。
- しばらく続けても効果不十分ならば段階的に増量します。逆に、炎症がひき症状が安定したなら、治療上の必要最少量となるよう減量を考慮することもあります。漫然と長期大量使用を続けることは好ましくありません(全身性の副作用がでやすくなります)。そのときどきの症状により、きめ細かな指導を受けるようにしてください。

- 【検査】

- 長期間に大量を使用している場合は、定期的に検査をおこなう必要があります。
|
効能 |
気管支喘息 |
用法 |
 【パルミコート タービュヘイラー】- <成人>

- 通常、成人は、ブデソニドとして1回100〜400μgを1日2回吸入する。なお、症状に応じて増減するが、1日の最高量は1600μgまでとする(パルミコート100タービュヘイラー:1回吸入量100μg、パルミコート200タービュヘイラー:1回吸入量200μg)。
- <小児>

- 通常、小児は、ブデソニドとして1回100〜200μgを1日2回吸入する。なお、症状に応じて増減するが、1日の最高量は800μgまでとする。また、良好に症状がコントロールされている場合は100μg1日1回まで減量できる。
※症状の緩解がみられた場合は、治療上必要最小限の用量を投与すること。

- 【パルミコート吸入液】

- 通常、成人はブデソニドとして0.5mgを1日2回または1mgを1日1回、ネブライザーを用いて吸入する。なお、症状により適宜増減するが、1日の最高量は2mgまでとする。
通常、小児はブデソニドとして0.25mgを1日2回または0.5mgを1日1回、ネブライザーを用いて吸入する。なお、症状により適宜増減するが、1日の最高量は1mgまでとする。
※症状の緩解がみられた場合は、治療上必要最小限の用量を投与すること。
※本剤を吸入する際には、ジェット式ネブライザーを使用すること。なお、ネブライザーは機種により使用法・性能が異なるため、患者に対してその使用法をよく指導し、習熟させること。なお、必要に応じて、患者の保護者またはそれに代わり得る適切な者にもその使用法をよく指導し、習熟させること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
声がかれたり、まれに口内炎や口腔内カンジダができます。もし、口に白いものができたら、医師に伝えてください。これらは、吸入後にうがいや口すすぎをすることで、たいてい予防できます。
局所に作用するので、ステロイドの飲み薬にみられる重い副作用はまずありません。ただ、長期大量使用時は、副腎皮質機能抑制、子供の成長遅延、骨粗鬆症、白内障、緑内障・・など全身性の副作用がまったくないとも言えません。念のため、それらの検査を定期的に受けるようにすれば、より安心と思います。
- のどの刺激感、痛み、声がかれる、味覚異常。
- 口腔・呼吸器カンジダ症..のどや口の刺激痛、口のなかに白いものができる。
|