概説 |
気管支を広げるお薬です。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 気道の流れが悪くなる病気として、「気管支喘息」と「慢性閉塞性肺疾患」がよく知られています。喘息では気管支が炎症で過敏になり、けいれんして細くなるとゼーゼー・ヒューヒュー呼吸が苦しくなります。慢性閉塞性肺疾患いわゆるCOPDには従来の慢性気管支炎と肺気腫が含まれます。慢性的な気道閉塞障害により咳や痰が多くなり、体動時に呼吸が苦しくなるのが特徴的です。
この吸入薬の有効成分は気管支拡張薬です。吸入による直接作用で気管支を広げ、気道の通気をよくして呼吸を楽にします。同系としては速効・短時間型です。吸入後すみやかに効果を発揮するので、喘息発作時または急な呼吸困難時に頓用するのが一般的です。COPDにおいては、運動前のアシストユースとして用いることもあります。

- 【薬理】

- 気管支平滑筋にある交感神経の「β2受容体」を刺激して気管支を広げます。このとき拡張するのは気管支の細い部分です。β2選択性が高いため、心臓など循環器系への悪影響は少ないほうです。作用時間は短めで、8〜10時間になります。
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特徴 |
- 気管支拡張薬のプロカテロールを有効成分とする吸入剤です。喘息やCOPDをはじめとする気道閉塞性障害の治療に古くから用いられています。
- 作用機序からβ刺激薬と呼ばれています。なかでもプロカテロールはβ2選択性が高い第三世代のβ2刺激薬になります。気管支に選択的に作用するため、旧来のβ刺激薬に比べ副作用が軽減されています。
- 作用時間からは、短時間作用型(SABA)に分類されます。頓用薬として喘息発作または呼吸困難時に吸入するのが一般的です。長期の維持管理(定期吸入)には向きません。
- さまざまな製剤が販売されています。従来からのエアゾール(噴霧)製剤にくわえ、ドライパウダー(粉末)吸入式のメプチンスイングヘラーも発売されました。症状や年齢、呼吸機能、利便性などを考慮のうえ、治療目的によって使い分けられます。
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注意 |
 【診察で】
- 高血圧や心臓病など、持病のある人は医師に伝えておいてください。
- 正しい吸入方法の説明を受けておきましょう。
 【注意する人】
- 交感神経を興奮させる作用があるので、病気によってはその症状を悪化させます。高血圧や心臓病、甲状腺機能亢進症、糖尿病のある人は慎重に使用します。
- 子供に携帯させる場合は、吸入回数、使用間隔などをよく説明し、過量にならないよう十分指導する必要があります。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- アドレナリン(ボスミン)や、イソプレナリン(イソメニール、プロタノール)などカテコールアミン製剤との併用により動悸や不整脈の副作用がでやすくなります。
- テオフィリン(テオドール)、ステロイド薬、利尿薬などとの併用により、血清カリウム値が低下し不整脈が出現するおそれがあります。定期的に検査をするなど、慎重に併用する必要があります。
- β遮断薬はこの薬の作用を弱めます。Β遮断薬は高血圧や不整脈に用いるほか、点眼薬として緑内障の治療にも使いますから注意してください(基本的に喘息のある人にはβ遮断薬を用いません)。ほかにも注意が必要な薬がいろいろあります。使用中の薬を必ず医師に報告しておきましょう。
 【使用にあたり】
- 携帯用のハンドネブライザーは、発作時または症状悪化時に吸入します。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の場合、運動前のアシストユースとしても使われます。
- 用法・用量は指示どおりにしてください。年齢や症状、また製剤により吸入方法、吸入量が違います。詳しい使用方法や吸入方法は説明書にならってください。
- エアゾール式の携帯噴霧器は直前によく振ってください。そして、息をはいたあと、噴霧と吸入のタイミングを合わせてゆっくり深く吸い込み、数秒間息をとめます。 うまく吸入できない場合は、スペーサー(吸入用補助器)がおすすめです。スペーサーについては医師または薬剤師と相談してみてください。
- ドライパウダー吸入式のメプチンスイングヘラーは、青色のボタンを押すことで、1回分の薬剤かセットされます。吸入のポイントは、はやく深く息を吸い込むことです。能動的吸入なので、エアゾール式のように、噴霧操作とタイミングをとる必要はありません。100回分ですから、カウンターが‘0’になったらおしまいです。詳しくは、使用説明書を読んでください。
- 吸入液はネブライザーを用いて吸入します。通常、病院で処置用として用いることが多いですが、外来で処方された場合は指示された手順で吸入してください。ユニット製剤(0.3mL・0.5mL)は、使用直前に開封し、1回で使い切るようにしましょう。
- 吸入後、うがいをし口をすすぎましょう。丁寧なうがいにより全身性の副作用をある程度予防できます。上を向くガラガラうがいと、グチュグチュする含みうがいを10秒ほど2回以上おこなうと効果的です。
- 決められた範囲内で正しく吸入しましょう。最大量を使用しても発作が止まらない場合は、それ以上使わないで すぐに受診してください。過剰に使用すると、不整脈などの副作用がでやすくなり危険です。

- 【検査】

- とくに高血圧や心臓病のある人は、定期的に血圧測定や心電図検査をおこない、副作用がでていないかチェックします。また、必要であれば血液検査をおこない、カリウム値などに異常がないか調べます。
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効能 |
下記疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解
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用法 |

- 【携帯用(10μg)】

- 塩酸プロカテロールとして、通常成人1回20μg(2吸入)、小児1回10μg(1吸入)を吸入する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
- 注意:成人1回2吸入、小児1回1吸入の用法・用量を守り、1日4回(原則として成人8吸入、小児4吸入)までとすること。

- 【携帯用(5μg)】

- 塩酸プロカテロールとして、通常成人1回20μg(4吸入)、小児1回10μg(2吸入)を吸入する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
- 注意:成人1回4吸入、小児1回2吸入の用法・用量を守り、1日4回(原則として成人16吸入、小児8吸入)までとすること。

- 【吸入液】

- 塩酸プロカテロールとして、通常成人1回30〜50μg(0.3〜0.5mL)、小児1回10〜30μg(0.1〜0.3mL)を深呼吸しながらネブライザーを用いて吸入する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
手の震えと動悸がときどきみられます。吸入量が多いと出やすい副作用です。吸入後のうがいである程度予防できますが、ひどければ早めに受診し医師とよく相談してください。
他の喘息治療薬といっしょに使用していると、血液中のカリウム分が減少してくることがあります。このような状態で 発作時に過度に吸入すると、重い不整脈や心停止を引き起こすおそれがあります。決められた用量を守ることが大切です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 低カリウム血症..だるい、筋力低下(力が入らない)、便秘、動悸、脈の乱れ。
 【その他】
- 動悸(ドキドキ感)、頻脈、血圧変動
- 指や手のふるえ
- 頭痛、吐き気、めまい感
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