概説 |
血液中のリンを減らすお薬です。腎臓病でリンが増えているときに用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 腎臓の働きが落ちると、リンの排泄が十分にできず、血液中にリンが溜まってきます。高リン血症です。このような状態が長く続くと、骨がもろくなったり、リン酸カルシウムが血管壁に沈着し動脈硬化を引き起こしたりします。心筋梗塞など心血管系合併症をふくめ、体のあちこちに悪い影響がでてくるのです。
このお薬は高リン血症治療薬です。消化管内で食物に含まれるリンと結合し、リンの体内吸収を抑制します。そして、体内のリンが減少し、高リン血症が改善されるのです。リンとカルシウムの血清濃度を正常に保つことは、骨の病変を防ぎ、また動脈硬化をおさえて重い心血管系合併症を防ぐことにつながります。

- 【薬理】

- 服用後、消化管で速やかに多核性の酸化水酸化鉄(V)を遊離します。この物質の水酸基および水和水とリン酸イオンが配位子交換することによりリンが吸着され、容易に解離しない鉄・リン複合体が形成されます。複合体は難溶性でリンをくっつけて体外へ排泄されるので、結果として消化管からのリン吸収が抑制され、血清リン濃度が低下するのです。

- 【臨床試験】

- この薬の有効性と安全性について、既存のポリマー性リン吸着薬セベラマー(フォスブロック、レナジェル)と比較する臨床試験が行われています。参加したのは高リン血症がある血液透析中の慢性腎不全の患者さん192人です。このうち100人はこの薬を、別の92人はセベラマーを使用することとし、服用量はあらかじめ決められた用量調節基準に従います。効果判定の主要評価項目は、服用期間3ヶ月後の血清リン濃度(mg/dL)です。
その結果、この薬を飲んでいた人達の血清リン濃度は平均で5.0(7.8→5.0)に低下、セベラマーの人達は5.3(7.6→5.3)まで低下しました。両剤の血清リン濃度に明らかな差はなく、汎用薬のセベラマーに劣らない同等の治療効果が確認できたわけです。副作用で多かったのは、この薬で下痢、セベラマーで便秘でしたが、ほとんどが軽度で重篤なものはなく 安全性についても問題ないことがわかりました。
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特徴 |
- 鉄分を含有するリン吸着薬です。Ca非含有、非ポリマー性リン吸着薬になります。血清カルシウム値が高く、炭酸カルシウム製剤が使いにくい場合に有用です。1回1錠ないし2錠で済むので、他の薬剤に比べ服薬負担も少ないです。
- カルシウムを含有しないため、高カルシウム血症や血管石灰化の発現リスクが低く、またポリマー性リン吸着薬にみられる便秘や腸管穿孔など重篤な胃腸障害の心配もありません。一方で下痢を起こしやすく、また長期服用時は鉄過剰症に注意が必要です。
- チュアブル錠と顆粒剤があります。チュアブル錠は噛み砕いて水なしで飲めるため、水分摂取制限が必要な人に適します。顆粒剤は義歯に挟まりにくいマイクロタブレットから成る製剤です。噛まずに服用できるので、咀嚼機能低下により噛み砕きが困難な人に向きます。
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注意 |
 【診察で】
- 胃潰瘍や肝炎など持病のある人は、医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 胃潰瘍や大腸炎など胃腸の病気、慢性肝炎、鉄過剰症のある人は慎重に用いるようにします。
- 注意が必要なケース..消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、C型慢性肝炎、ヘモクロマトーシスなどの鉄過剰またはその疑いのある人、発作性夜間血色素尿症のある人、貧血の治療で鉄剤を服用している人など。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 他の薬と結合して、その薬の吸収を阻害する性質があります。たとえば、甲状腺ホルモン薬、抗菌薬、抗パーキンソン薬などに注意が必要です。併用するさいは服用間隔をあけるなど配慮が必要かもしれません。別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師と相談してください。
- 飲み合わせに注意..レボチロキシン(チラーヂン)、テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシン等)、セフェム系抗生物質のセフジニル(セフゾン)、抗パーキンソン薬(イーシー・ドパール、マドパー、ネオドパゾール、メネシット、ネオドパストン等)、エルトロンボパグ オラミン(レボレード)、鉄剤(フェロミア、スローフィー等)など。
 【使用にあたり】
- 1日3回食事の直前に飲みます。食物からのリン吸収をおさえるため、食事と間隔をあけずに飲むことが大事です。時間があくと効果が減弱してしまいます。
- 開始用量は、通常、1回1錠または1包(250mg)からです。以後、血清リン濃度に応じ適宜増減しますが、増量する場合は1週間以上の間隔をあける必要があります。
- チュアブル錠は噛み砕いて飲んでください。水なしで飲んでかまいません。口の中が茶褐色になっても一時的です。顆粒剤は噛まずに水で飲んでください。
- 薬の鉄分により、便が黒っぽくなることがあります。
- 飲み忘れた場合、食事中ならすぐに飲んでください。時間があいてしまった場合は、その回は抜かし、次から通常通りに服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。

- 【検査】

- 定期的に決められた検査を受け、効果や副作用をチェックしましょう。リンやカルシウム、副甲状腺ホルモン(PTH)の管理目標値を維持することが大事です。また、フェリチンやヘモグロビンを測定し、鉄過剰になっていないか調べます。

- 【食生活】

- この薬を飲んでいても、リン摂取量の制限が必要なことがあります。医師から指示される食事療法をきちんと守りましょう。
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効能 |
透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善 |
用法 |
通常、成人は、鉄として1回250mgを開始用量とし、1日3回食直前に経口服用する。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日3000mgとする。
- [注意1]本剤投与開始時又は用量変更時には,1〜2週間後に血清リン濃度の確認を行うことが望ましい。
- [注意2]増量を行う場合は,増量幅を鉄として1日あたりの用量で750mgまでとし,1週間以上の間隔をあけて行うこと。
- [注意3]チュアブル錠は口中で噛み砕いて服用すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
いちばん多いのは下痢です。重症化することはないと思いますが、下痢が続くようでしたら 医師と相談してください。長期服用時は鉄過剰症に念のため注意が必要です。
- 下痢、便秘、吐き気、腹部不快感、腹痛
- 血清フェリチン増加、血中鉄増加、ヘモグロビン増加
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