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成分(一般名) リオシグアト
製品例 アデムパス錠0.5mg~1.0mg~2.5mg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 他の循環器官用薬/その他/可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 肺高血圧症のお薬です。慢性血栓塞栓性肺高血圧症や肺動脈性肺高血圧症の治療に用います。
作用

【働き】

肺高血圧症(PH)は、肺動脈の血圧が高くなる病気の総称です。このうち、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)と肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、血栓の付着または血管内皮の形態変化や血管拡張障害などにより肺動脈が狭くなるために起こります。肺動脈の血流悪化から、息切れ、呼吸困難、疲労、運動能力低下などがあらわれ、日常生活にも支障がでてきます。進行すると心不全を引き起こし、予後も好ましくありません。

このお薬は、そのような症状を改善する肺高血圧症治療薬です。血管拡張にかかわる可溶性グアニル酸シクラーゼという酵素の働きを高めることで、血管を広げ肺動脈圧を低下させます。肺の血流が改善すると、息切れや呼吸困難がやわらぎ、運動耐容能の向上にもつながるのです。また、病気の進行を遅らせ、より長生きできる可能性があります。適応となるのは、外科的治療(血栓摘除術、経管的肺動脈拡張術)が不適当または外科的治療後に再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または肺動脈性肺高血圧症です。

【薬理】

可溶性グアニル酸シクラーゼ‘sGC’は心肺系血管内皮細胞に存在する酵素の一種です。この酵素に一酸化窒素‘NO’が結合すると、血管拡張を担う環状グアノシン一リン酸(サイクリックGMP)‘cGMP’の合成が促進されます。肺高血圧症では血管内皮の機能不全により、このNO-sGC-cGMP経路が十分働かず血管拡張障害を生じます。

この薬は、NO-sGC結合を安定化し内因性NOに対するsGCの反応性を高めるとともに、sGCを直接刺激することにより、cGMPの産生を向上させます。結果として、NO-sGC-cGMP経路が回復し、血管が広がりやすくなるのです。このような作用機序から可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼ばれています。

【臨床試験】

この薬の有効性をプラセボ(にせ薬)と比較する国際共同試験が行われています。参加したのは、外科的治療(血栓摘除術、経管的肺動脈拡張術)が不適当または外科的治療後に再発した患者さんで、大部分はWHO機能分類2または3の中等度からやや重い慢性血栓塞栓性肺高血圧症の患者さんです。このうち173人はこの薬を、別の88人はプラセボを服用します。

有効性を評価するための主要評価項目は、服薬4カ月後の6分間歩行距離の平均変化量です。6分間歩行距離は運動耐容能を検査するために行なわれますが、将来的な生命予後とも相関があるのではと推察されています。ちなみに、服用前の6分間歩行距離は、この薬の人達で平均342m、プラセボの人達で平均356mでした。

その結果、この薬を飲んでいた人達の4カ月後の6分間歩行距離の平均変化量は+39m(342→381m)、プラセボの人達は-6m(356→350m)でした。この薬により6分間歩行距離が明らかに増加し、運動耐容能が向上できたわけです。さらに、副次的評価項目として肺血管抵抗、WHO機能分類クラスの改善効果も認められています。また、肺動脈性肺高血圧症の患者さんを対照とした別の臨床試験でも、同様の結果が得られています。
特徴
  • 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬という新しい作用の肺高血圧症治療薬です。既存のPDE5阻害薬と同様に一酸化窒素経路(NO-sGC-cGMP)に作用しますが、PDE5阻害薬がcGMPの分解を抑制するのに対し、こちらはcGMPの産生を促進します。
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症を適応症とする初の治療薬です。慢性血栓塞栓性肺高血圧症で手術ができない場合や、術後再発例に第一選択されます。
  • 肺動脈性肺高血圧症に対する効能を追加取得しています。この場合、エンドセリン受容体拮抗薬やPDE5阻害薬と同様に中等度からやや重い症状(WHO機能分類クラスU〜V)に推奨されます。単剤で効果不十分な場合は、作用機序が異なる別系統の薬剤(ERA、PGI2誘導体)と併用可能です。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、授乳中の人は医師に伝えてださい。また、妊娠可能な女性は避妊の重要性について医師から十分説明を受けてください。

【注意する人】

肝臓や腎臓が悪いと血中濃度が上昇しやすいです。病状によっては使用できません。間質性肺炎をともなう場合は、副作用の発現に注意するなど慎重に用います。妊娠中は禁止です。

  • 適さないケース..重い肝臓病、重い腎臓病、妊娠中。
  • 注意が必要なケース..肝臓病、腎臓病、低血圧、抗凝固療法中、肺静脈閉塞性疾患のある人、間質性肺病変をともなう人、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすいです。飲み合わせによっては、この薬の作用が増強し、副作用が強まります。たとえば、同様の作用をもつPDE5阻害薬とは併用できません。併用により血圧が下がり過ぎてしまうおそれがあるのです。PDE5阻害薬は肺高血圧症のほか、勃起不全や排尿障害にも用いられますから気を付けてください。

狭心症や心不全の治療に使う硝酸薬、いわゆる‘ニトロ’と呼ばれる薬も禁止です。硝酸薬には飲み薬のほか、貼り薬(テープ)や口内スプレー、注射剤などさまざまな製剤がありますので注意が必要です。類似薬のベルイシグアトも禁止されます。そのほか、抗真菌薬のイトラコナゾールやボリコナゾール、エイズの治療に用いるプロテアーゼ阻害薬なども併用できません。

逆に、この薬の血中濃度が低下し作用が減弱しやすい飲み合わせがあります。胃炎などの治療に用いる制酸薬、抗けいれん薬のフェニトインやカルバマゼピン、フェノバルビタール、健康食品のセイヨウオトギリソウなどです。禁止ではありませんが、制酸薬と併用する場合はできるだけ間隔をあけてください。以下は一例です。ほかにも注意が必要な薬がありますから、使用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。

  • 飲み合わせの悪い薬..PDE5阻害薬(バイアグラ、レバチオ、シアリス、アドシルカ、ザルティア、レビトラ)、ニトログリセリン(ニトロペン、その他)、硝酸イソソルビド(ニトロール、その他)、ニコランジル(シグマート)、ニプラジロール(ハイパジールコーワ)、ベルイシグアト(ベリキューボ)、イトラコナゾール(イトリゾール)、ボリコナゾール(ブイフェンド)、プロテアーゼ阻害薬(ノービア、カレトラ、クリキシバン、レイアタッツ、インビラーゼ、ヴィキラックス等)。
  • 飲み合わせに注意..エリスロマイシン(エリスロシン)、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、エルロチニブ(タルセバ)、ゲフィチニブ(イレッサ)、シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、制酸薬(マーロックス)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)など。

【使用にあたり】
  • 飲む量は病状で違います。医師から決められた用法・用量を守ってください。通常、少量で開始し効果や副作用をみながら徐々に増量、1〜2カ月かけて維持量を決定します。
  • 服用回数は通常1日3回です。食事とかかわりなく、約6〜8時間間隔とすることが望ましいです。もし飲み忘れた場合は、次の服用時間までに6時間以上あれば直ちに1回分を飲んでください。6時間未満なら1回分をとばし次の服用時間に1回分を飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。

【検査】

血圧測定を頻回におこない、適正な範囲にあるか確認します。女性は必要に応じて妊娠検査をおこないます。

【妊娠・授乳】

妊娠可能な女性は、信頼できる避妊法で妊娠を避けなければなりません。避妊薬を飲んでいても、コンドームを併用したほうがより確実です。もし、妊娠した場合もしくは疑いがある場合には、直ちに医師に連絡したてください。

【食生活】
  • めまいを起こしやすいです。車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作、高所作業の際は十分注意してください。
  • 喫煙により、この薬の作用が低下することがあります。医師と相談のうえ、できるだけ禁煙してください。
  • セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品やハーブティーは控えでください。セイヨウオトギリソウがこの薬の作用を弱めるからです。

【備考】

肺動脈性肺高血圧の発現機序としてエンドセリン(ET)経路、プロスタサイクリン(PGI2)経路、一酸化窒素(NO)経路の3つが重要な役割をしています。この3経路に対する薬剤として、それぞれエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、プロスタサイクリン薬(PGI2誘導体)、PDE5阻害薬とsGC刺激薬(この薬)が開発されています。病態や重症度から適切な薬剤を選び、単薬治療で効果不十分な場合は異なる系統を組み合わせる併用療法をおこないます。
効能
  • 外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症
  • 肺動脈性肺高血圧症
用法

【用量調節期】

通常、成人はリオシグアトとして1回1.0mg1日3回経口服用から開始する。2週間継続して収縮期血圧が95mmHg以上で低血圧症状を示さない場合には、2週間間隔で1回用量を0.5mgずつ増量するが、最高用量は1回2.5mg1日3回までとする。収縮期血圧が95mmHg未満でも低血圧症状を示さない場合は、現行の用量を維持するが、低血圧症状を示す場合には、1回用量を0.5mgずつ減量する。

【用量維持期】

用量調節期に決定した用量を維持する。用量維持期においても、最高用量は1回2.5mg1日3回までとし、低血圧症状を示すなど、忍容性がない場合には、1回用量を0.5mgずつ減量する。

  • [注意1]患者の状態に応じて1回1.0mg1日3回より低用量からの開始も考慮すること。
  • [注意2]投与間隔は約6〜8時間間隔とすることが望ましい。ただし、1回の服用を忘れた場合には、次回の服用時刻に1回用量を服用させる。
  • [注意3]3日間以上投与が中断した場合、再開時には、開始時の用量を考慮し、「用法・用量」に従い用量調節を行う。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 比較的多いのは、頭痛、めまい、ほてり、鼻づまり、消化不良、吐き気、下痢などです。これらは、血管拡張作用や平滑筋弛緩作用によるものが多く、ある程度はしかたありません。めまいがひどく、気が遠くなるようなら医師と相談してください。血圧が下がり過ぎていれば減量が必要です。

重大な副作用として喀血または肺出血が報告されています。とくにワルファリン(ワーファリン)などによる抗凝固薬療法をおこなっている場合は要注意です。頻度はまれですが、痰に血が混じったり、血を吐くようなことがあれば、飲むのをやめて直ちに受診してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 喀血、肺出血..痰に血が混じる、血を吐く。

【その他】
  • 頭痛、めまい、ほてり、潮紅、鼻づまり
  • 低血圧、動悸、失神
  • 消化不良、もたれ、吐き気、嘔吐、下痢、便秘
  • 手足・顔のむくみ、貧血

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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。