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成分(一般名) ボセンタン
製品例 トラクリア錠62.5mg、トラクリア小児用分散錠32mg、ボセンタン成人用DS6.25%「モチダ」 ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 他の循環器官用薬/エンドセリン受容体拮抗薬/エンドセリン受容体拮抗薬

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概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用

概説 血管を広げ血流をよくするお薬です。肺高血圧症や強皮症の治療に用います。
作用

【働き-1】

肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、心臓から肺に血液を送る肺動脈が狭くなり、肺動脈の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血流悪化から、息切れ、呼吸困難、疲労、運動能力低下などがあらわれ、日常生活にも支障がでてきます。進行すると心不全を引き起こし、予後も好ましくありません。

このお薬は、そのような症状を改善する肺動脈性肺高血圧症治療薬です。血管収縮をもたらす体内物質エンドセリンに対抗することで、血管の収縮を抑制し肺動脈圧を低下させます。肺の血流が改善すると、息切れや呼吸困難がやわらぎ、運動耐容能の向上にもつながるのです。また、病気の進行を遅らせ、より長生きできる可能性があります。

【働き-2】

膠原病のひとつ全身性強皮症(SSc)では、皮膚線維化や血流障害により指先に皮膚潰瘍ができやすいです。細菌感染により拡大し、関節炎や骨髄炎を引き起こすこともあります。このお薬は、そのような全身性強皮症における皮膚潰瘍にも有効です。ただし、発症を抑制するもので、できている潰瘍を治す効果は認められていません。

【薬理】

エンドセリンは、強力な血管収縮物質です。病的な血管では、エンドセリンが増加し過度な血管収縮をもたらします。エンドセリンが結合する受容体には、エンドセリンA受容体とエンドセリンB受容体の2つのタイプがあります。

この薬は、A、B両方への結合を阻害することにより、血管の収縮をおさえ肺動脈圧を低下させます。さらに、血管平滑筋の増殖・肥大化を防いだり、強皮症の線維芽細胞からのコラーゲン産生を抑制する作用もします。

【臨床試験-1】

この薬の肺動脈性肺高血圧症に対する効果をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験が行われています。参加したのは重い肺動脈性肺高血圧症(III、IV)の患者さんで、この薬を飲む人とプラセボを飲む人に分かれてもらいます。有効性を評価するための主要評価項目は服薬4カ月後の6分間歩行距離の平均変化量です。

その結果、この薬を飲んでいた人達の4カ月後の6分間歩行距離の平均変化量は+27m(326→353m)、プラセボの人達では-8mでした。プラセボでは減少したのに対し、この薬では明らかに増加し運動耐容能が向上できたわけです。6分間歩行距離は運動耐容能の指標ですが、重症度や将来的な生命予後とも相関があるのではと推察されています。

【臨床試験-2】

全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制効果を検証する試験もおこなわれています。参加したのは全身性強皮症で手指潰瘍のある患者さん190人です。そして、この薬を飲む人と、プラセボ(にせ薬)を飲む人に分かれ、半年間に新たに発現する潰瘍数を調べます。その結果、この薬を飲んでいた人達の新規発現数は平均1.9個(中央値:1.0)、プラセボの人達で2.7個(中央値:1.4)でした。この薬の人達のほうが明らかに少なく、この薬の有効性が確かめられたわけです。
特徴
  • 国内初のエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)です。この系統は、中等度からやや重い肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスU〜V)に対して最も推奨度の高い治療薬として位置付けられます。なお、同系の薬剤としてアンブリセンタン(ヴォリブリス)とマシテンタン(オプスミット)が販売されています。
  • おもに原発性または膠原病にともなう肺高血圧症に用いられています。小児用の分散錠は、特発性または遺伝性肺動脈性肺高血圧症のほか、先天性心疾患にともなう肺動脈性肺高血圧にも適用します。
  • エンドセリン受容体拮抗薬のうち、エンドセリンA受容体とB受容体の両方を阻害するデュアルエンドセリン受容体拮抗薬になります。特徴の一つとしてあげられるのは、選択的エンドセリンA受容体拮抗薬のアンブリセンタンにみられる浮腫や肺水腫の副作用が少ない点です。一方で、肝機能障害を起こしやすく、中等度以上の肝障害がある場合は使用できません。
  • 全身性強皮症における手指潰瘍にかかわる効能・効果が2015年に追加承認されました。強皮症に合併する肺高血圧症の治療に使用していたところ、肺症状だけでなく手指潰瘍の改善が認められたのが開発のきっかけです。
注意
【診察で】
  • 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
  • 服用中の薬を医師に教えてください。
  • 妊娠中もしくはその可能性のある人、授乳中の人は医師に伝えてださい。また、妊娠可能な女性は避妊の重要性について医師から十分説明を受けてください。

【注意する人】

肝臓の悪い人は使用できないことがあります。事前に肝機能検査をおこない、治療の適否を判断しなければなりません。妊娠中は禁止です。

  • 適さないケース..中程度から重い肝臓病のある人、妊娠中。
  • 注意が必要なケース..肝機能値の悪い人、肝臓病、低血圧、フェニルケトン尿症(小児用分散錠)、高齢の人、など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】

いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。

  • 免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)とタクロリムス(プログラフ)との併用は禁止されています。併用により、この薬の血中濃度が上昇し、重い副作用を起こすおそれがあります。
  • 血糖降下薬のグリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)も禁止です。肝臓の副作用がでやすくなるためです。
  • 血栓の薬のワルファリン(ワーファリン)の効果を減弱させるおそれがあります。併用に際しては、ワルファリンの用量を慎重に調整する必要があります。ほかにも、抗真菌薬のフルコナゾール(ジフルカン)、スタチン系コレステロール低下薬(メバロチン等)、結核の薬のリファンピシン(リファジン)、高血圧の薬のカルシウム拮抗薬(ノルバスク、アダラート等)、経口避妊薬、EDや肺高血圧症に用いるPDE5阻害薬(バイアグラ、レバチオ、レビトラ、シアリス、アドシルカ、ザルティア等)など 注意を要する薬がたくさんあります。
  • グレープフルーツジュースは飲まないでください。この薬の血中濃度が上昇し、副作用がでるかもしれません。
  • セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品はとらないでください。この薬の作用を弱めるおそれがあります。

【使用にあたり】
  • 病状や体重、また治療方針によって飲み方が違います。決められた飲み方を守りましょう。
  • 一般的には、はじめの4週間は1日2回朝夕食後に1回1錠を飲みます。副作用の問題がなければ、その後1回2錠に増量します。肝機能値が悪化する場合は、いったん減量して様子をみることがあります。
  • 乳幼児には小児用分散錠を用います。飲みやすい味で、体重毎に用量調節できる4分割可能な製剤です。スプーンなどに少量の水(錠剤を覆う程度の量)を入れ、これに決められた量の薬剤を加えて分散してから服用し、さらに使用したスプーンに再度少量の水を加えて飲用してください。可能であれば、服用後にコップ一杯ほどの水を飲むようにしましょう。水以外で溶かして飲んではいけません。

【検査】

副作用をチェックするため、定期的に検査を受ける必要があります。とくに重要なのが血液検査と肝機能検査です。貧血の有無、ヘモグロビン量、肝酵素値、ビリルビン値などに異常がないか調べます。女性では、必要に応じて妊娠検査をおこないます。

  • 妊娠可能な女性は、服薬に先立ち妊娠検査を実施します。治療開始後も、1カ月に1回妊娠検査ををおこない、妊娠していないことを確認するようにします。
  • 信頼できる避妊法で妊娠を避けなければなりません。避妊薬を飲んでいても、コンドームを併用したほうがより確実です。期間は服用中と中止後1カ月間です。もし、妊娠した場合もしくはその疑いがある場合には、直ちに医師に連絡したてください。

【食生活】

タバコは病状を悪化させますし、この薬の作用を弱めるかもしれません。医師と相談のうえ、できるだけ禁煙してください。

【備考】

肺動脈性肺高血圧の発現機序としてエンドセリン(ET)経路、プロスタサイクリン(PGI2)経路、一酸化窒素(NO)経路の3つが重要な役割をしています。この3経路に対する薬剤として、それぞれエンドセリン受容体拮抗薬(この薬)、プロスタサイクリン薬(PGI2誘導体)、PDE5阻害薬とsGC刺激薬が開発されています。病態や重症度から適切な薬剤を選び、単薬治療で効果不十分な場合は異なる系統を組み合わせる併用療法をおこないます。
効能
【錠62.5mg、成人用DS】
  • 肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスII、III及びIV)
  • 全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制(ただし手指潰瘍を現在有している、または手指潰瘍の既往歴のある場合に限る)(トラクリアのみ適応)

【小児用分散錠32mg】

肺動脈性肺高血圧症
用法

【錠62.5mg】

通常、成人は、服用開始から4週間は、ボセンタンとして1回62.5mgを1日2回朝夕食後に経口服用する。服用5週目から、ボセンタンとして1回125mgを1日2回朝夕食後に経口服用する。なお、用量は患者の症状、忍容性などに応じ適宜増減するが、最大1日250mgまでとする。

【成人用DS6.25%】

用時懸濁し、通常、成人は、服用開始から4週間は、ボセンタンとして1回62.5mg(ドライシロップとして1g)を1日2回朝夕食後に経口服用する。服用5週目から、ボセンタンとして1回125mg(ドライシロップとして2g)を1日2回朝夕食後に経口服用する。なお、用量は患者の症状、忍容性などに応じ適宜増減するが、最大1日250mg(ドライシロップとして4g)までとする。

【小児用分散錠32mg】

通常、乳児、幼児又は小児は、ボセンタンとして1回2mg/kgを1日2回朝夕、用時、少量の水に分散させ経口服用する。ただし、最大服用量は1回120mg、1日240mgとする。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 頭痛が3人に1人くらいの割合で起こります。ほかには、けん怠感や筋肉痛、めまいの頻度が高いほうです。また、検査で肝機能値の異常や、貧血(ヘモグロビン減少)がみつかることも多いです。

肝機能値が悪化する場合、重い肝障害へ移行しないように、いったん減量ないし休止して様子をみます。肝障害の臨床症状として、食欲不振や吐き気、発熱、皮膚や白目が黄色くなる、疲労などがあげられますので注意してください。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  • 重い貧血..疲れやすい、息切れ、動悸、頻脈、めまい、顔色が悪い。
  • 血小板減少..鼻血、歯肉出血、血尿、皮下出血(血豆・青あざ)、血が止まりにくい。
  • 心不全..疲れやすい、息苦しい、息切れ、むくみ、急な体重増加、痰、ゼィゼィ、咳、頻脈。

【その他】
  • 頭痛、筋肉痛、けん怠感、むくみ
  • めまい、ほてり、潮紅、動悸、低血圧
  • 肝機能異常、貧血、ヘモグロビン減少

概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
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おくすり110番

注意! すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う、「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。