概説 |
血液中のコレステロールを減らすお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 高コレステロール血症は、血液中のコレステロールが多すぎる状態です。自覚症状がなくても、長い間に動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、あるいは脳卒中の原因になりかねません。
このお薬は、コレステロール低下薬です。小腸におけるコレステロールの吸収をおさえる作用があります。血液中のコレステロールを低下させていれば、将来起こるかもしれない心筋梗塞など心血管系疾患の危険性を少なくすることができます。

- 【薬理】

- コレステロール吸収を担う小腸コレステロールトランスポーター(NPC1L1)に結合することで、胆汁性および食事性コレステロールの吸収を選択的に阻害します。結果的に、肝臓のコレステロール含量が低下し、血中コレステロールの低下につながるのです。いわゆる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が減る一方、善玉コレステロール(HDLコレステロール)はむしろ増加します。

- 【臨床試験-1】

- 単独治療でLDLコレステロールが約18%低下させることが示されています。また、スタチン系コレステロール低下薬で効果不十分な症例に併用することで、LDLコレステロールをさらに約25%低下させる結果が得られています。ただし、単独治療により実際に心筋梗塞を予防できるかなど、長期余後の改善効果については、まだ十分検証されていません。

- 【臨床試験-2】

- 参考までですが、この薬とスタチン薬を併用した場合の予後を検証する長期大規模試験(IMPROVE-IT)がおこなわれています。併用するスタチン薬は、それほど強くない標準的スタチンのシンバスタチン(リポバス)です。参加したのは日本を含む39カ国1147施設の約18000人。対象となった患者さんは、年齢50歳以上、重い急性冠症候群(狭心症や心筋梗塞)により入院後10日以内です。
くじ引きで半々に分かれ、9000人はこの薬とシンバスタチンを併用、別の9000人はシンバスタチンだけ服用します。そして、心血管に関連した再発率‘心血管イベント発生率’を比較するのです。具体的なイベントとして、心臓血管死、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、再血行再建、非致死的脳梗塞などが含まれます。
その結果、7年間のイベント発生率は、この薬とシンバスタチンを併用した人達で32.7%、シンバスタチンだけの人達で34.7%でした。2%差と大きな差はでませんでしたが、参加人数が多いため、統計学的な有意差が得られました。小差とはいえ、重い急性冠症候群においては、スタチン単独治療より、この薬とスタチン薬を併用したほうが心血管イベントをより抑制できる可能性があるわけです。
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特徴 |
- 「小腸コレステロールトランスポーター阻害薬」と呼ばれる新しいタイプのコレステロール低下薬です。主にコレステロール値を下げますが、中性脂肪(トリグリセリド)の低下作用も持ち合わせています。海外でも広く使用されています。
- 腸肝循環して小腸局所で長時間作用するため、1日1回の服用で効果が持続します。陰イオン交換樹脂製剤に比べ、錠剤も小さく飲みやすいです。
- 胆汁酸の排出には影響を与えないので、脂溶性ビタミンや併用薬の吸収を阻害しません。また、CYP(薬物代謝酵素)と関係なく、グルクロン酸抱合で代謝されるため、薬物間相互作用が少ないです。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 肝臓病のある人は慎重に用いなければなりません。肝臓の働きが悪いと、この薬の代謝が遅れ、血中濃度が上昇するおそれがあります。また、重い肝臓病のある人は、スタチン系コレステロール低下薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)との併用を避ける必要があります。
- 適さないケース..重い肝臓病(スタチン系薬剤と併用する場合)。
- 注意が必要なケース..肝臓病、糖尿病のある人。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 相互作用は少ないほうですが、免疫抑制薬のシクロスポリン(ネオーラル)や、抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)の血中濃度に影響する可能性があります。
- コレスチミド(コレバイン)やコレスチラミン(クエストラン)に代表されるイオン交換樹脂製剤と併用する場合は、服用間隔を十分あける必要があります。また、ベザフィブラート(ベザトール)などフィブラート系高脂血症治療薬との併用はすすめられていません。

- 【使用にあたり】

- ふつう、1日1回1錠服用します。長期に飲み続けることが多いです。

- 【食生活】

- 食事療法や運動療法、適切な体重の維持、禁煙なども大切です。これらをきちんとおこなえば、薬を飲まなくて済むことが多いものです。薬を飲みはじめても、不摂生をしては意味がありません。
 【備考】
- コレステロールは、臨床的意義により大きく2つのタイプに分類されます。一つは悪玉とされるLDLコレステロール、もう一つは善玉のHDLコレステロールです。LDLは肝臓からコレステロールを全身の組織に運ぶ役目をしているのですが、多すぎると血管内壁に入り込み動脈硬化をすすめます。一方、善玉とされるHDLは、全身の組織から余分なコレステロールを回収し肝臓に戻します。このHDLコレステロールが少なすぎるのも良くないので、脂質異常症(高脂血症)のひとつの判定基準になります。
- 中性脂肪(トリグリセリド)も脂質異常症の主要な判定基準です。中性脂肪はエネルギー源として体に蓄えられるのですが、必要以上に多いと動脈硬化をすすめる危険因子となってしまいます。
- 薬を飲む必要があるかは、単にコレステロールや中性脂肪の値だけでは判断できません。喫煙、肥満、年齢、高血圧、糖尿などがあり、心筋梗塞を起こす危険性の高い人は、より低い値でも服薬をすすめられるものです。逆に、コレステロール値が多少高いだけで、その他のリスク要因が少ないのであれば、必ずしも薬物治療を必要としません。とくに、もともと心筋梗塞の少ない日本人女性での有用性については議論のあるところです。
- コレステロールは体に必要なものです。免疫細胞やホルモンを作るのにも欠かせません。やみくもにコレステロール値を下げればよいというものではありません。
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効能 |
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症 |
用法 |
通常、成人はエゼチミブとして1回10mgを1日1回食後経口服用する。なお、年齢、症状により適宜減量する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用は少ないほうです。人によっては、便秘、または下痢、腹痛や吐き気などの胃腸症状が現れますが、重症化することはまずないでしょう。
因果関係ははっきりしませんが、筋肉が障害を受ける「横紋筋融解症」の報告があるようです。とくに、スタチン系やフィブラート系など他の高脂血症治療薬と併用する場合に注意してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い過敏症..発疹、じんま疹、全身発赤、顔や口・喉や舌の腫れ、咳き込む、ゼーゼー息苦しい。
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
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