概説 |
中性脂肪のトリグリセライドを減らすお薬です。高脂血症の治療に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 高脂血症は脂質異常症ともいいます。血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が多すぎたり、善玉コレステロールが少なすぎる状態です。自覚症状がなくても、長いあいだに動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、あるいは脳卒中の原因になりかねません。
このお薬は高脂血症治療薬です。中性脂肪のトリグリセライドを減らす一方、いわゆる善玉のHDLコレステロール値はむしろ上昇します。とくにトリグリセライド低下作用が強いため、トリグリセライド値が高い高脂血症に向きます。トリグリセライドの減少は、心筋梗塞など心血管系の病気の予防になると考えられるのです。

- 【薬理】

- 肝臓の細胞のPPARαという核内受容体に結合し、脂質代謝にかかわる遺伝子の発現を調節します。その結果として、脂質代謝が改善し、トリグリセライド減少とHDLコレステロール増加をもたらすのです。このような作用機序から、広く、PPARα作動薬とかPPARα刺激薬(PPARαアゴニスト)と呼ばれます。なかでも この薬は、PPARαに対する選択性が高く、非常に低用量で活性化させ、また調節的に作用することから、選択的PPARαモジュレーターとされます。
- ※PPARα(Peroxisome Proliferator-activated receptor-α):ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α

- 【臨床試験-1】

- 高トリグリセライド血症に対する有効性と安全性を、既存の類似薬フェノフィブラート(リピディル、トライコア)と比較する試験が行われています。参加したのはトリグリセライド高値かつHDLコレステロール低値を示す脂質異常症の患者さん223人です。3つのグループに分かれ、第1のグループはこの薬を低用量(0.2mg/日)服用、第2のグループは高用量(0.4mg/日)を、第3のグループはフェノフィブラートを通常量(106.6mg/日)服用します。そして、半年間、1カ月毎のトリグリセライド値の低下率を比較するのです。また、善玉HDLコレステロールや悪玉LDLコレステロールなど他の脂質パラメータ値についても副次的に調べます。
その結果、この薬を低用量飲んだ人達のトリグリセライドは平均で約46%(242→137mg/dL)低下、高用量の人達も46%(233→134mg/dL)低下、フェノフィブラートの人達は40%(236→133mg/dL)低下しました。この薬のトリグリセライド低下作用は、低用量、高用量ともにフェノフィブラートの通常量に劣ることなく同程度あることが示されたわけです。その他の脂質の推移も、フェノフィブラートとほぼ同様で、善玉HDLコレステロール増加作用も認められました。なお、別におこなわれた1回目の試験で悪玉LDLコレステロールの増加が想定以上だったため、その検証のためにこちらの試験が追加実施されました。この経緯をふまえ、LDLコレステロールを含めた脂質値の変動に十分留意する必要があるとされました。

- 【臨床試験-2】

- 参考までですが、同類薬のフェノフィブラートによる約1万人の2型糖尿病の患者さんを対象とした大規模臨床試験が海外でおこなわれています(FIELD試験)。糖尿病のある人に限っては、トリグリセライド値を十分下げることにより、心筋梗塞など心臓病の発症率をおおよそ10%減少させることが示されました。また、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症の抑制効果も認められました。
そのほか、トリグリセライド値の高い糖尿病の患者さん418人を対象とした3年間におよぶ試験もおこなわれています(DAIS)。冠状動脈疾患の進行度が、プラセボ(にせ薬)群と比べ平均25%抑制されることが示されました(冠状動脈の平均直径で評価)。
ただし、フィブラート系薬剤による高脂血症を主対象とする質の高い予後検証試験はほとんどありません。糖尿病がある場合は別として、トリグリセライドを低下させることで本当に心血管系の病気を予防できるのか現時点で明確とはいえないのです。とくに心筋梗塞の少ない日本人の長期予後に関しては検証不十分です(PROMINENT試験に参加予定)。
|
特徴 |
- 新しいタイプのフィブラート系高脂血症治療薬です。薬理作用からは、PPARα作動薬(PPARαアゴニスト)に分類されます。核内受容体のPPARαに結合後、おもに肝臓の脂質代謝にかかわる遺伝子群の発現を調節して脂質代謝を改善します。
- 中性脂肪のトリグリセライド低下作用が強力です。一方で、HDLコレステロールなど ある種のコレステロールを増やす作用もします。このような特性から、トリグリセライド値が高く、コレステロールは正常範囲の高脂血症に好んで用いられます。コレステロール値が高いタイプには、別系統のスタチン薬を優先しなければなりません。
- 安全性が高く、使いやすい新世代フィブラート系薬剤「選択的PPARαモジュレーター」として開発されました。同系として心配される横紋筋融解症や肝障害の副作用が少ないと推察されますが、注意が必要なことに変わりありません。
- 他のフィブラート薬の主代謝経路が腎排泄なのに対し、この薬は肝代謝が主となります。スタチン薬併用時の横紋筋融解症発現リスク低減の可能性があるものの、注意喚起は同様です。腎機能に異常がある場合、原則、スタチン薬との併用は避けることとされます。
|
注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中または妊娠している可能性のある人は申し出てください。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 肝臓や腎臓の悪い人は副作用がでやすいです。減量を考慮し、病状によっては使用を控えることがあります。
- 適さないケース..重い肝臓病、胆石がある人、妊娠中。
- 注意が必要なケース..肝臓病、腎臓病、胆石の既往歴のある人、高齢の人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- スタチン系のコレステロール低下薬といっしょに飲むと「横紋筋融解症」という筋肉の副作用がでやすくなります。とくに腎臓病のある人は、治療上やむを得ない場合に限り併用し、併用の際は少量より開始するとともに、定期的に腎機能検査を実施するなどします。スタチン薬には、プラバスタチン(メバロチン)、シンバスタチン(リポバス)、フルバスタチン(ローコール)、アトルバスタチン(リピトール)、ピタバスタチン(リバロ)、ロスバスタチン(クレストール)などがあります。
- 陰イオン交換樹脂のコレステロール低下薬(クエストラン、コレバイン)と併用する場合は、できるだけ服用間隔をあけてください。同時に飲むと、この薬が陰イオン交換樹脂に吸着され吸収が悪くなります。
- 免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)と結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)とは併用できません。この薬(ペマフィブラート)の血中濃度が上昇するおそれがあるためです。禁止ではありませんが、同様の理由で注意が必要なのが、抗血栓薬のクロピドグレル(プラビックス)、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、抗ウイルス薬のリトナビル(ノービア、カレトラ、ヴィキラックス)、抗真菌薬のフルコナゾール(ジフルカン)などです。併用する場合には必要に応じてこの薬の減量を考慮します。
- 逆に、この薬の血中濃度を低下させ効果を減弱させる薬もあります。抗けいれん薬のフェノバルビタール(フェノバール)やフェニトイン(アレビアチン、ヒダンチール)、カルバマゼピン(テグレトール)などです。
 【使用にあたり】
- 飲み方は症状や体質、また製剤で違います。普通錠は、通常 1日2回朝夕に1回1錠です。徐放性のXR錠は1日1回になります。食前か食後かは問いません。指示どおりにしてください。
- 症状によっては増量します。一方、肝臓や腎臓の働きが悪い場合は、減量したり、服用回数を減らすことがあります。
- 飲み忘れたら、気づいたときに飲んでください。ただし、次の服用時間が近ければ、1回分抜かし、次の時間に1回分飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。

- 【検査】

- 定期的に決められた検査を受け、効果や副作用をチェックしましょう。中性脂肪のトリグリセライド値のほか、LDLコレステロール値が上がり過ぎていないか調べます。肝臓や腎臓の検査も大事です。
 【食生活】
- 食事療法、運動療法、適切な体重の維持、禁煙なども大切。これらをきちんとおこなえば、薬を飲まなくて済むことが多いものです。薬を飲みはじめても、不摂生をしては意味がありません。
- 健康食品やハーブティーとして販売されているセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)の飲食はしないでください。飲み合わせにより、この薬の効果が減弱するおそれがあるためてす。
 【備考】
- コレステロールは、臨床的意義により大きく2つのタイプに分かれます。一つは悪玉とされるLDLコレステロール、もう一つは善玉のHDLコレステロールです。LDLは肝臓からコレステロールを全身の組織に運ぶ役目をしているのですが、多すぎると血管内壁に入り込み動脈硬化を進めます。一方、善玉とされるHDLは、全身の組織から余分なコレステロールを回収し肝臓に戻します。このHDLコレステロールが少なすぎるのも良くないので、脂質異常症(高脂血症)のひとつの判定基準になります。高コレステロール血症にいちばん効くのはスタチン薬です。
- 中性脂肪のトリグリセリドも脂質異常症の主要な判定基準です。中性脂肪はエネルギー源として蓄えられますが、多すぎてはいけません。独立した危険因子とされ、動脈硬化を進め心血管疾患のリスクを高めるのです。高トリグリセリド血症の治療には、フィブラート系薬剤(この薬)を中心に、EPA製剤やニコチン酸誘導体が用いられます。
- 薬を飲む必要があるかは、単にコレステロールや中性脂肪の値だけでは判断できません。喫煙、肥満、年齢、高血圧、糖尿などがあり、心筋梗塞を起こす危険性の高い人は、より低い値でも服薬をすすめられるものです。逆に、コレステロール値が多少高いだけで、その他のリスク要因が少ないのであれば、必ずしも薬物治療を必要としません。とくに、もともと心筋梗塞の少ない日本人女性での有用性については議論のあるところです。
- コレステロールは体に必要なものです。免疫細胞やホルモンを作るのにも欠かせません。やみくもにコレステロール値を下げればよいというものではありません。
|
効能 |
高脂血症(家族性を含む) |
用法 |

- 【普通錠】

- 通常、成人はペマフィブラートとして1回0.1mgを1日2回朝夕に経口服用する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減するが、最大用量は1回0.2mgを1日2回までとする。

- 【徐放性XR錠】

- 通常、成人はペマフィブラートとして1回0.2mgを1日1回経口服用する。ただし、トリグリセライド高値の程度により、1回0.4mgを1日1回まで増量できる。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
注意したいのは、筋肉の障害「横紋筋融解症」です。まれな副作用ですが、腎臓の悪い人、高齢の人、またコレステロール低下薬のスタチン薬との併用のさいは注意が必要です。足のふくらはぎなどに筋肉痛があらわれたら、すぐに受診してください。そのほか、胆石症、肝機能値の異常、糖尿病などが報告されています。気になる症状があれば医師と相談してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 横紋筋融解症..手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 胆石..右上腹部から右背部にさしこむような痛み、発熱。
- 糖尿病..のどが渇く、水をがぶ飲み、多尿、体重変動。
- 肝機能値の異常..AST、ALT等の肝機能値が上昇(まれに肝障害にいたることがあるので要注意)。
|